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とける氷山 温暖化映す

2013年7月20日日経新聞夕刊に掲載されたものです。

 僕たちを乗せた船はグリーンランドの北緯69度にあるイルリサット港に接岸した。イルリサットのフィヨルドには無数の氷山がある。何個かの氷山は海面からは300㍍は飛び出ていると思われるほど巨大なもので、その圧倒的な景色に、イルリサット・アイスフィヨルドがユネスコ世界遺産に登録されるのも納得できた。

 氷山の歴史はその色で分かると、氷山と地質学の専門家であり北極や南極等の極地に関する観光政策の専門家、デニス・ランダウさんは言う。青い氷山は氷河として陸地にあったとき、時を重ねている間に氷中の空気が膨大な圧力により外に押し出されてしまったことによる。これらは6000年以上の歴史があるものだ。
 イヌイットがこの土地に入ったもっとも古い考古学的証拠は4500年前にさかのぼる。僕たちが見ている青い氷山は人類が最初に目にした氷の一部でもある。
 それほど長い年月をかけて造られた氷山だが、これらが現在、世界的に注目を浴びているのは、温暖化の影響がどれくらい進んでいるかという指標になるからだ。

 温暖化は大気中の二酸化炭素が増えることにより、温室効果が高まり、地球全体の平均気温が上昇する現象だが、グリーンランドにある氷は温暖化により、加速度的に後退している。コロラド大学の研究グループがグリーンランド西部の氷河を計測したところ、1902年から2001年の100年間と2001年から2010年までの氷河の後退は、過去10年の方が大きかったというのだ。
 ウッズホール海洋研究所の名誉教授、本庄丕(すすむ)氏は、こうした二酸化炭素排出量が現時点で仮に全く無くなったとしても、温暖化の傾向は今世紀末まで続くと考えられている。

 温暖化の影響で、海水面の上昇、大規模な気象変化、それに伴う自然災害、干ばつ、洪水など、予想のできない自然災害が増える可能性がある。
 今も人類が排出する二酸化炭素の量は増え続けている。本庄名誉教授は、二酸化炭素の排出量を今後いかに抑えるか、そして来るべき温暖化の環境下で、どのように生き抜くかということが人類の最も重要な課題になるだろうと、これからの科学者が進むべき方向性を示唆した。

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