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本記事は2008年3月8日に日経新聞夕刊に掲載されたものを修正加筆したものです チョモランマ山頂の標高8848㍍では20歳の青年でも90歳の体力になるという。この値は、人間の有酸素能力が標高と共に低下する値を体力年齢に置き換えたときに算出された推定体力年齢である。(鹿屋体育大学・登山運動生理学・山本正義) この考えを当てはめると、2003年に三浦雄一郎が70歳でチョモランマ山頂に立った時の推定体力年齢は143歳。この推定体力年齢は122歳の世界最高齢で生涯を全うしたフラン
本記事は2008年2月16日に日経新聞夕刊に掲載されたものを修正加筆したものです。 凍てつくような空気が酸素マスクとゴーグルの間の頬を刺す。ピッケルをつく動作とステップをリズムよく動かしながら、なるべく効率よく登ろうとするが足元の雪は新しくもろい。表面はクラスト状になっていて慎重に足を出さなければ容易に踏み抜いてしまう。 視界はゴーグル越しに自分のヘッドライトが放つ光の輪の範囲だけ。上を見上げると雪の壁は星空まで続いているようだ。ここはチョモランマ…ではなく札幌のテイネハイ
本記事は2008年2月9日に日経新聞夕刊に掲載されたものを修正加筆したものです。 僕が2003年にエベレストの山頂から下山する途中、標高8600㍍の地点で酸素が無くなった。その時にバランスを崩して2~3歩足に力を入れたが、たったそれだけの動きをするだけで過激な運動をしたように感じてその場に座り込んでしまった。 人間は酸素の供給するエネルギー分しか動けないことを実感する。エベレストの頂上付近では1歩足を前に出すのに20回程呼吸をする。それがこの地点で酸素が許してくれる動きだ
本記事は2008年2月2日に日経新聞夕刊に掲載されたものを修正加筆したものです。 最近、高所トレッキングを楽しむ中高年が増えてきている。これは2003年に三浦雄一郎がエベレストに登ったこと、そして中高年の登山人気が高まって、これまで一部の登山家だけが目指すようなマニアックな高所登山が増えてきた。しかし同時に事故も増えた。昨年の遠征時に出会った在ネパール日本大使館付の医師によると、6000㍍以上のトレッキングピークへ出かける登山者の中で日本人の事故が一番多いとのことだ。この背
本記事は2008年1月5日日経新聞夕刊に掲載されたものに修正加筆したものです。 今年(2008年)はチョモランマの年だ。 5年前から、父、三浦雄一郎と2008年にチョモランマ(8,848m)に登ろうと計画を立てていた。父は現在75歳、今回登頂すると前回70歳で登った最高齢登頂記録を抜くことになる。これまでそのために僕たちは4度のヒマラヤ遠征を重ねた。つい2ヶ月前にもチョモランマのベースキャンプ(BC)から帰ってきたばかりである。