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インドネシア最新法令UPDATE Vol.9:オムニバスローに関するアップデート「期待値の下方修正?」

インドネシアで大きな話題を呼んでいたオムニバスローが制定されてから2か月以上が経ちました。オムニバスロー制定直後は、オムニバスローにより外資規制が大きく緩和されるという期待感が高まっていましたが、最近、当局からやや水を差すようなコメントがなされていますのでご紹介します。

投資調整庁の投資協力副長官(Deputy Chairman for Investment Cooperation)であるRiyatno氏が登壇した以下のセミナーにおいて、オムニバスローによる改正投資法や外資規制に関する政府解釈が説明されました(BKPMの組織図についてはhttps://www2.bkpm.go.id/en/about-bkpm/organizational-structureをご覧ください)。

• 11月16日:Indonesia Investment Promotion Center Sydney主催セミナー「A Dialogue With The Chairman of BKPM: Omnibus Law and IA-CEPA Impact on Investment」

• 11月24日:
Hukumonline* 主催セミナー「Digging Deeper into Business Licenses and Permits」

*インドネシアにおける大手法令紹介サービス会社

これらのセミナーにおいて、今後公表予定の投資優先リスト(Investment Priority list)において、禁止業種と政府独占業種以外についても、一部外資規制が存続する旨の見解が述べられました(なお、以前の政府によるプレスリリースでは、従前のネガティブリストにかわるリストにつき、「ポジティブリスト」という用語が用いられていましたが、セミナーでは「投資優先リスト(Investment Priority list)」という用語が使われていました)。

改正投資法では、「禁止業種と政府の独占業種を除き、全ての業種が投資のために開放されている(改正投資法12条1項)」と明記されています。旧投資法下で存在した「制限付業種」がオムニスロー改正投資法下では削除されているにも関わらず、どのような根拠で外資規制が存続するのかは必ずしも明らかではありません。インドネシア人弁護士の間では、政府は改正投資法の「解放されている」という文言を、「解放されている(ただし一部条件が付される場合がある)」と解釈している可能性があるといわれています。

いずれにせよ、今後公表される「ポジティブリスト」においても一部外資規制が維持される旨がRiyatno氏より表明されており、オムニバスローのインパクトは当初想定されていたほど大きなものにはならない可能性もあります(「ネガティブリスト」から「投資優先リスト」という名称の変更にどれだけ実質的な意味があるのかという疑問も出てきます)。

今後制定されるポジティブリストの内容が重要となり、引き続き密にフォローしていく必要があります。

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Author

弁護士 井上 諒一(三浦法律事務所 パートナー)
PROFILE:2014年弁護士登録(第二東京弁護士会所属)。2015~2020年3月森・濱田松本法律事務所。2017年同事務所北京オフィスに駐在。2018~2020年3月同事務所ジャカルタデスクに常駐。2020年4月に三浦法律事務所参画。2021年1月から現職。英語のほか、インドネシア語と中国語が堪能。主要著書に『インドネシアビジネス法実務体系』(中央経済社、2020年)など

この記事は、インドネシアの法律事務所であるARMA Lawのインプットを得て作成しています。

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