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インドネシア最新法令UPDATE Vol.2:建設業法施行規則(前編)ー 外資建設会社・外国建設駐在員事務所の法令違反につき最大で契約金額全体の20%の罰金

2020年4月23日に建設業法の施行規則を定める政府規則2020年22号(「本新規則」)が制定されました。本新規則には、外資建設会社や外国駐在員事務所による一定の法令違反につき、最大で契約金額全体の20%の罰金が課され得る旨を明確化する等、重要と思われる内容が含まれています。

インドネシアの建設業について規律する法律は2017年に制定された建設業法(法律2017年2号)です。もっとも、建設業実務においては直近の外資建設会社に関する朝令暮改的な法改正や、電力関係業法とのすみ分け等に関して実務上の混乱・不明確な点がみられ、建設業法の施行規則による明確化が待たれていました。本新規則は、この「建設業法の施行規則」にあたります。

本稿では前編と後編とに分けて、①本新規則による外資建設会社や外国駐在員事務所に対する罰則の明確化(これに関連して、外資建設会社に対する直近の規制動向)と、②建設業法と電力関係業法のすみ分け(建設業ライセンスにより電力関係工事も実施可能か)について説明します。

罰則の明確化(外資建設会社・外国駐在員事務所による違反につき、最大で契約金額全体の20%の罰金

本新規則により、外資による一定の法令違反につき、最大で契約金額全体の20%の罰金が課される旨が明記されました。(*1)このため外資企業としては、よりいっそうの法令順守が求められるところですが、外資建設会社に関する規制は直近の朝令暮改的な法改正により不明確な状況となっています。以下では、本新規則によって定められた罰則の内容を説明するとともに、外資建設会社に対する直近の規制状況につき説明します。

*1 法令違反の場合の罰則については、1999年の旧建設業法(2017年の新建設業法により廃止済み)43条2項において、以下のように定められていました。

• 技術基準を満たさずに建設プランニングを行い建設業務や建物に瑕疵を生じさせた場合には、5年以下の懲役又は契約金額の10%以下の罰金が課され得る
• 技術基準を満たさずに建設施工を行い建設業務や建物に瑕疵を生じさせた場合には、5年以下の懲役又は契約金額の5%の罰金が課され得る
• 建設監督を行う者が、故意に技術基準違反を行う業者に建設業務を実施させ、これにより建設業務や建物に瑕疵を生じさせた場合には、5年以下の懲役又は契約金額の10%の罰金が課され得る

本新規則における罰則と比較すると、①旧建設業法においては個々の工事における技術基準違反を問題にしており、罰金も個々の契約額を基準にしていると考えられるのに対して、本新規則では工事主体のライセンス等の法令違反を問題とし、罰金も契約金額全体を基準としていると考えられること、②旧建設業法においては制裁が刑事罰であるのに対して、本新規則においては、行政制裁であるように思われるという点に相違があるように思われます。

1. 本新規則により定められた罰則の内容

本新規則においてはさまざまな罰則が設けられていますが、特に外資に着目した罰則として、以下のものが規定されています。

● 外資建設会社がビジネスライセンスを有しない場合

外資建設会社がビジネスライセンスを有しない場合には、公共事業大臣は書面による警告及び契約金額全体の10%の罰金を課すことができるとされています(本新規則154条)。「ビジネスライセンスを有しない場合」には、ビジネスライセンスを全く有しない場合だけでなく、適切なビジネスライセンスを有しない場合(取得しているビジネスライセンスが不適切である場合)も含まれると解釈される余地があり得るように思われます。例えば、ビジネスライセンス上実施可能な工事以外の工事を行っている場合には、上記罰則の対象となり得る余地があるように思われます。

このため、現地法人を通じて建設業を行っている企業においては、現地法人の活動がビジネスライセンス上許容されている活動の範囲に収まっているか(現地法人が行っている活動につき適切なビジネスライセンスを有しているか)を再度確認することが望まれます。

● 外資建設会社及び外国建設駐在員事務所が事業体証明(SBU:Sertifikat Badan Usaha)を有しない場合

外資現地法人及び外国建設駐在員事務所が事業体証明を有しない場合には、公共事業大臣は業務停止に加え、外資建設会社の場合には契約金額全体の10%、外国建設駐在員事務所の場合には契約金額全体の20%の罰金を課すことができるとされています(本新規則156条)。現地法人及び外国建設駐在員事務所が、その事業活動に適した事業体証明を有しているかについて、再度確認することが望まれます。

● 外国法人が外国建設駐在員事務所やインドネシア建設会社との合弁会社を組成しなかった場合

外国法人が外国建設駐在員事務所やインドネシア建設会社との合弁会社を組成しなかった場合には、公共事業大臣は書面による警告に加え、契約金額全体の20%の罰金を課すことができるとされています(本新規則158条)。

上記が想定している直接的な場面は、外国の建設会社が外資建設会社や外国駐在員事務所を設立せず、インドネシアで建設業を行った場面を想定しているように思われます。もっとも、上記の適用対象として、インドネシア企業と合弁企業を設立しているがインドネシア側株主の要件が法律上の要件を満たさない場合等を含む趣旨である可能性もゼロではないかと思われます。外資現地法人における「インドネシア側株主の要件」については下記2.で説明する通り、不明確な状況となっており、今後の動向を注視する必要があります。

● 外国建設駐在員事務所に関する一定の法令違反

外国建設駐在員事務所が以下の要件を満たしていない場合には、書面による警告に加え、以下の罰金が課され得るとされています(159条)。

• 本国の建設会社が大規模要件を満たしていること:契約金額全体の20%

• 外国建設駐在員事務所が外国建設駐在員事務所ライセンスを有していること:契約金額全体の20%

• 大規模要件を満たすインドネシア建設会社とジョイント・オペレーションを組成していること:契約金額の20%

• 外国建設駐在員事務所の所長としてより多くのインドネシア人を雇用していること:契約金額の10%

• インドネシア人を外国建設駐在員事務所の所長として配置していること:契約金額の10%

• 国内の材料及び技術を優先して用いていること:契約金額の10%

• 高水準、最新、効率的、環境フレンドリー、かつ現地文化に配慮した技術を有していること:契約金額の10%

• 技術移転を実施していること:契約金額の10%

インドネシアに外国建設駐在員事務所を開設している企業においては、上記要件を満たしているかを再度確認することが望まれます。

2. 外資建設会社に対する直近の規制状況

(1)公共事業大臣規則 2019 年 9 号以前の状況

公共事業建設大臣規則2016 年 30 号においては、外資建設会社のインドネシア側株主の要件に関しては、以下のように定められていました。

• 外資建設会社のインドネシア側株主としてインドネシア建設会社が株主となっている必要がある

• 株主であるインドネシア建設会社については、大規模格付(B1又はB2)を取得していることまでは要求されない

• インドネシア建設会社が株主となっていれば、それとは別にインドネシア人個人が株主となっていることも差し支えない

(2)公共事業大臣規則 2019 年 9 号による改正

2019年7月2日に制定された公共事業大臣規則2019年9号により、①外資建設会社のインドネシア側株主は、大規模格付(B1又はB2)の格付けを取得している必要があり、②外資建設会社の株主にインドネシア人個人がいることは許されない旨の改正がなされました。現状、インドネシアの外資建設会社の中には株主であるインドネシア建設会社の格付けが中規模(M1やM2)であるものや、インドネシア人個人が株主となっているものもあります。これらの外資建設会社は上記改正により事業を継続できなくなるため、実務上大きな批判が寄せられました。

(3)公共事業大臣規則 2019 年 9 号の廃止

上記のような批判を受けて、公共事業大臣規則2019年9号はこれを廃止する公共事業大臣規則2019年17号によって2019年11月18日に廃止されました。理論上は公共事業大臣規則2019年9号が廃止されたことにより、公共事業大臣規則2016 年 30 号が復活し、インドネシア側株主について①大規模格付(B1又はB2)を満足す必要はなく、②インドネシア人個人が株主となっていることも許容されるという帰結になるようにも思われますが、この点の実務運用についてはまだ固まっていない状況です。

(4)今後の動向

2019年11月19日、公共事業大臣規則2019年9号の廃止とほぼ同時に「オムニバスロー制定までの法令の空白を埋めるため」に公共事業大臣通達2019年22号が制定されています。しかし、公共事業住宅大臣通達2019年22号においても外資建設企業に関する上記論点は明確化されていません。

公共事業大臣通達2019年22号において言及されている「オムニバスロー」とは雇用促進法の通称であり、複数の法律を一括して改正することを内容とする法律です。現在、草案が国会に提出されています。公表されている草案によると、オムニバスローによって改正される法律は、投資法、会社法、環境法等多岐にわたり、建設業法も改正の対象となっています。公共事業住宅大臣通達2019年22号は、「オムニバスロー制定までの法令の空白を埋めるため」のものであるとされており、オムニバスローの制定により、現在不明確となっている外資建設会社に対する規制が明確化されることが想定されているように思われます。今後の制定状況を注視する必要があり、本マガジンにおいても続報があり次第ご報告させていただきます。

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Author

弁護士 井上 諒一(三浦法律事務所 カウンセル)
PROFILE:2014年弁護士登録(第二東京弁護士会所属)。2015~2020年3月森・濱田松本法律事務所。2017年同事務所北京オフィスに駐在。2018~2020年3月同事務所ジャカルタデスクに常駐。2020年4月から現職。英語のほか、インドネシア語と中国語が堪能。

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三浦法律事務所の公式noteです。法律ネタから弁護士インタビューまで。 HP:https://www.miura-partners.com/ 公式Twitter:https://twitter.com/miura_partners (代表弁護士:三浦亮太/第二東京弁護士会所属)

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