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M&P MAGAZINE #2:事務所設立5周年を迎える三浦法律事務所の現在地

2019年創業の三浦法律事務所(M&P)は、今年5年目を迎えました。30人でスタートしたM&Pも、新たな拠点の開設や、オフィスの大規模増床、新人弁護士の採用開始など、実に多くの変化がありました。その結果、今では所属弁護士が80人(2023年2月現在)にまで増えました。このように急成長しているM&Pですが、変えずに大切にしてきた価値観もあります。

5年目を迎えたM&Pの弁護士に、M&Pの過去と現在、そして未来について聞きました。

(左から)金井悠太弁護士、松澤香弁護士、大澤玄弁護士、渥美雅之弁護士

4年で所属弁護士数は約3倍に
多様な人材が集う三浦法律事務所、急成長の秘訣

──三浦法律事務所(M&P)のコアバリューを教えてください。

松澤香(以下、松澤):三浦法律事務所は2019年1月の創業以来、「新時代のプロフェッショナルファームを作る」ことを目指し、“Full Coverage & Top Quality”、“Diversity & Inclusion(D&I)”という2つのコアバリューを掲げています。

──「新時代のプロフェッショナルファーム」とはどのような組織を指すのでしょうか。

松澤:私個人の意見ですが、新時代のプロフェッショナルファームとは、絶えず変化できるinnovativeな法律事務所のことだと考えています。クライアントや社会、時代が求めることは常に変化します。それに合わせて法律事務所という組織 も変わり続ける必要があります。そのためには多様な考え方・多様な人材が集まることが必須であ り、多様性の強みを生かすことのできる組織、すなわち組織全体としてフラットでフェアな環境と、高い透明性を備えていることが重要だと考えます。

──M&Pはコアバリューの1つに「多様性」を掲げていますが、具体的にはどのように“多様”なのでしょうか。

松澤:“D&I”というと、国籍やジェンダーといった属性の話になりがちですが、コグニティブ・ダイバーシティと呼ばれる、価値観や経験が多様な人材を集めることが重要です。M&Pは創業当初から高い女性比率を維持していますが、それ以上にバックグラウンドの多様性に富んだ組織となっています。多くの弁護士が事業会社や官公庁での勤務経験を有していたり、海外留学や海外での勤務経験を持つ弁護士もいます。また、現在進行形で企業に勤めながら弁護士業も行っている兼業弁護士もM&Pには複数在籍しています。

松澤香弁護士

──M&Pは高い女性比率が注目されていますが、女性にとって働きやすい職場なのでしょうか。

大澤玄(以下、大澤):女性と一言で言っても、ライフワークバランスを重視する人もいれば、仕事に邁進したい人もいます。それはその人の考え方やその人を取り巻く環境によってさまざまですし、多様なタイプの女性がいる中で、特定の女性像を念頭に置いた「女性が働きやすい職場」では意味がないと考えています。M&Pでは、多様な生き方を選択している女性弁護士が在籍していて、それぞれにとって働きやすい環境になるよう、互いを尊重しながら働いていますので、後進にとってもロールモデルになるのではないかと思います。

──この4年間で、所属弁護士数は30名から80名にまで増加しました。規模の面以外で組織としてどのような成長を遂げたと考えますか。

松澤:コアバリューとして“D&Iに加えて“Full Coverage & Top Quality”も掲げているとおり、設立当初からすべての分野において、高い品質のリーガルサービスを提供できる専門家を揃えました。この4年間で人員が増えたことで、各分野に厚みを出すことにも成功しています。また、フルカバレッジを掲げるからには、最先端のテーマについても対応できる体制は必須です。世の中の最新動向に敏感な知的好奇心あふれる弁護士が増えたことで、新規性のあるテーマについてもタイムリーに必要な知見を収集・蓄積し、クライアントからのご相談に対応できる体制を整えています。

例えば最近ではESGに関するご相談が当事務所にも多く寄せられるため、この分野に高い関心を持つ弁護士が中心となってプラクティスグループを作り、日々情報収集や情報共有を行っています。

──ESG関連の話は、各社模索しながら対応を進めている印象を受けますが、具体的にはどのような相談があるのでしょうか。

松澤:情報開示に関わる案件や人権デューデリジェンスの進め方に関する相談、ビジネスと人権に関わる内部体制・行動規範に関する助言、CGコードに関する相談など、最近では幅広くご依頼いただくようになりました。

組織にとってESGの課題とは、中長期的に企業価値を高めることと、社会的責任を果たすことの両方を本業で達成することであり、この課題解決のためには、個々の組織単位で対応するのではなく、全ステークホルダーを巻き込んで考えることが肝要です。M&Pには、幅広い分野の専門家が揃っていますので、すべての当事者に寄り添い、課題解決のサポートを行うことが可能です。

大澤玄弁護士

──今後も組織を拡大していく方針ですか。

大澤:これまでは“Full Coverage & Top Quality”の実現をより確実なものにするための人員補強を行っていましたが、その課題も解決しつつある現在、採用は新しいフェーズに入り、今後は急激な増員は行わない方針ではあります。もっとも、組織の健全な成長のためにも、新卒・中途いずれについても適正な人数の採用は継続します。全体としてどの程度の人数を採用するかは、引き続き事務所全体として議論していくべきテーマですね。

松澤:私たちが重視している多様性の尊重や、風通しの良い組織というのは、組織の規模が大きくなると実現できなくなると思われがちです。ですが、クライアントにとって最良のリーガルサービスを提供するためには、組織のメンバーが充実感と幸福度高く業務に邁進することが重要であると考えており、フラットな組織であることや、多様性に対する考え方は非常に重要だと考えています。これまでの4年間で急激に人数が増えてもこれらの考え方を維持できたのは、組織の一人ひとりが、その重要性を深く認識し、努力した結果なのだと感じています。また、全員がこのマインドを共有して維持していくための努力を重ねられれば、今後どれだけ人数が増えたとしても、今私たちが大切にしているものは失われないと確信しています。

地方における“フルカバレッジ”の重要性と国外マーケットを見据えた新たな挑戦

──広島にはM&Pの設立初日から地方拠点としてオフィスを開設しています*。田口弁護士は広島というマーケットをどう見ていますか。

田口靖晃(以下、田口):マーケット規模は東京や大都市圏と比べれば小さいですが、取り扱う案件の難しさやクライアントから求められるクオリティの水準などに差はありません。むしろ、高いレベルのリーガルサービスを必要としている会社は多いにもかかわらず、そのニーズに応えられる企業法務系法律事務所は少ないと感じています。

──幅広い分野に対応可能であることは重要ですか。

田口:重要だと感じています。複数の専門分野に跨るような案件が地方にもたくさんあり、案件内容やクライアントの希望等に応じてベストなメンバーで対応するようにしています。実際、広島のクライアントの案件を他拠点の弁護士とチームを組んで対応することは日常的にあります。

──2021年9月に開設した名古屋オフィス*は、開設から1年が経過しました。どんな1年でしたか。

小松慶子(以下、小松):基盤固めをしてきた1年でした。おかげさまでスタートアップ企業から大手の上場企業まで幅広い層のクライアントからご依頼を頂いています。案件の内容も多岐にわたりますが、名古屋オフィスには異なるキャリアと専門性を持つ4名の弁護士が集まっているので、日々の法律相談はもちろん、コーポレートガバナンスやM&A、税務、紛争案件、そしてクロスボーダー案件など、名古屋オフィス単体でも幅広い分野の案件を受けられる体制になっています。

──事務所としてのコアバリューである多様性がきちんと根付いていますね。

小松:地元の法律事務所に長く勤務してきた弁護士もいれば、官公庁や事業会社に勤務していた弁護士、海外留学や海外勤務を経験した弁護士もいます。多様なバックグラウンドを持った4名ですが、共通していることは、全員が長い間、愛知県という土地に根を張って仕事をしてきたという点です。その地域特有の慣習を理解しながら、全員のバックグラウンドと経験をかけ合わせて案件に対応していますし、名古屋も東京の弁護士と協働することでご依頼いただく案件の幅がさらに拡がったと感じています。

──2022年11月にはオフィスを増床して、さらなる発展に向けて準備万端ですね。

小松:基盤固めは完了したので、次の1年は、組織としても、提供するサービスとしても、さらなる成長を目指します。そのためにも必要なときに必要なだけの人員を増やせるよう、オフィスを移転しました。

(左から)小松慶子弁護士、田口靖晃弁護士

──国内拠点の今後の展望を教えてください。

田口:今後もクライアントに対して良い仕事をしていきたいですし、より良い仕事をするためにはどのような体制を目指していくべきかという視点で考えています。その中で、必要に応じて規模の拡大なども検討していきたいと考えています。

小松:事業の推進や経営にもっとリーガルサービスを活用していただけそうな企業も多い印象を受けます。また、私自身がM&P参画前まで事業会社の法務部に所属していて感じたことですが、今の法務の守備範囲はどんどん広くなっており、ビジネスや戦略的な部分において法務が付加価値を発揮できる場面が増えていますので、そうした企業のサポートをしていきたいと考えています。

──M&Pの海外戦略は、現地に法律事務所を立ち上げるのではなく、共同出資して立ち上げたコンサルティングファームと協働する形を取っています。この狙いを教えてください。

渥美雅之(以下、渥美):M&Pは2021年9月、M&P所属の井上諒一弁護士らと共同出資の形でアジアに特化したコンサルティングファームであるM&Pアジア株式会社を設立しました。

このプロジェクトの中心人物である井上弁護士は、インドネシアをはじめとするアジア地域に精通した弁護士です。駐在経験もあり、現地に進出する日系企業や担当者と関わる中で、法務だけではなく税務や会計などを包括的にワンストップで依頼できる専門家のニーズが高かったのを肌で感じたそうです。このようなニーズに応えるため、コンサルティングファームという形での進出を果たしました。法務部分をM&P、それ以外の部分をM&Pアジアがそれぞれ担当し、M&Pグループとしてワンストップで課題を解決しています。

渥美雅之弁護士

──M&Pアジアも設立から1年が経過しましたが、現地の反応はどうですか。

渥美:反応は上々で、M&A案件、アジアにおける新規事業展開の総合的サポートなどといったご依頼も増えていますので、ニーズの掘り起こしに成功していると感じています。

──今後の海外戦略を教えてください。

渥美:事務所の成長のためには、アジアに留まらず、全世界を視野に入れる必要があると考えていますし、実際、アジア以外の国に関するご相談も増えています。また、伝統的な国際業務である、いわゆるアウトバウンド案件は今後もなくならないと思いますが、直近の傾向として、海外の企業が日本国内に投資する、いわゆるインバウンド案件の需要も高まっていると感じますので、積極的に獲得していきたいと考えています。そのためには現地の法律事務所や企業とのコネクション作りも重要ですし、時差を気にせず相談できる窓口が現地にあるということも非常に重要だと考えていますので、現地拠点の開設も選択肢の1つとして検討していきたいと考えています。

黎明期の組織における“人材”の重要性

──この4年で人数が飛躍的に増加したM&Pは、“人”や“人材”についてどう考えていますか。

大澤:私たちが提供するのは目に見えないサービスで、それは人からしか生まれないものなので、すべての価値は人にしかないと言っても過言ではないと考えています。

金井悠太(以下、金井):“人”が重要なのは言うまでもないことですが、一人ひとりを個として見て、それぞれの個性や思いを尊重し、重視している点がM&Pの特徴だと思います。

大澤:M&Pは5年目といってもまだ黎明期です。組織の形やあり方が確定していないため、一人ひとりの個性が組織全体の考え方や雰囲気に与える影響は大きいので、組織の方向性を考える上でも個性を重視することは重要だと考えています。

金井悠太弁護士

──M&Pとして初めて採用した新卒弁護士5名が2022年4月に入所しました。設立当初は3名だったアソシエイトもこの4年で28名と激増しましたね。

大澤:アソシエイトの存在感が増した印象はあります。それは人数が増えたことも要因の1つだと思いますが、弁護士業務だけでなく採用活動をはじめとする事務所の運営面においても、それぞれが事務所のことを真剣に考え、自分たちの事務所を自分たちで作っていくのだという意識のもとで主体的に動いているからだと感じます。若手の立場だからこそ見える景色もあり、中長期的な視点からのするどい意見も出ます。個人的には大変頼りにしています。

金井:年次に関係なくフラットに意見を受け入れようとしてくれるパートナー陣の雰囲気と、若手だからこそ発揮できる価値があると感じているアソシエイトが非常にうまくかみ合いつつ事務所を運営できているように感じます。この雰囲気をずっと残せたらいいなと思います。

──次の5年、10年のためにどんな人材を育てていきたいですか。

金井:全員がそうである必要は全くないですが、例えば各世代に1人は組織に対する思いを持っている人がいると良いなと考えています。

大澤:事務所の継続性や成長のためには、若手のうちからどのような事務所を作っていきたいのかという点についてビジョンを持った人を育てることは重要ですね。

* 弁護士法人三浦法律事務所の従事務所として広島オフィスと名古屋オフィスを開設しています。三浦法律事務所は、弁護士
法人三浦法律事務所、弁護士法人エムパートナーズおよび法人に所属しないその他の弁護士によって構成されています。

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