ちっちゃいくせに、でっかいバイク乗ってる人

私の親友メグは、24歳の時、死んでしまった。

彼女と初めて、1対1でちゃんと話したのは、確か大学一回生の時の世界史の授業であった。私たちはまだ一回生だったから、必修の授業と選択できる授業があるのだけれど、選択の授業は選べる幅が少ない。割と、みんなが選ぶものは「マスコミ」とか「心理」系のもので人気があったので、もし定員にあぶれたら、そこからまた選ばなくてはならない。本意ではないものを選ぶ羽目になるくらいなら、始めから多少は興味のあるもので、みんなと被らないものを選んだつもりで世界史を選択した。案の定、周りはほとんど2回生以上の人が多く、教室内には見知った顔が少なかった。
そんな中、見たことのある奇天烈な服装で、ドレッドの女の子を見つけた。

それが、メグであった。

私と反して、メグは世界史に興味があった。功を奏して(?)私と彼女は出逢った。

「あ、一回生ですよね?」
確か私の第一声はこうだったと思う。彼女はなんて言ったか覚えてないが、笑顔で返してくれたと思う。以前、社会学の授業で出逢った時に着ていた服と同じものを着ていたので、話しかけたのだ。ちなみに、その服は、それどこで手に入れるん?というような、バスケのユニフォームみたいな、派手な青い服。印象に残っている。

そこから、毎週世界史の授業は、一緒に出るようになった。特に彼女と特別に仲が良かった訳ではないが、会えば一緒に話した。ランチもした。
学部の友達はみんなそんな感じだった。

ところで、私は18才の時(だったと思う) 思い立って、二輪の免許を取った。全体的にちっちゃかったので、教習所の先生が、バイクを起こす授業で手伝ってくれたほどだが、それでも免許は取れた。その後1〜2年後に私の学生生活ライフで周りにバイクブームがやってくることになるのだが、先駆けてバイク乗りになったことは、この時の私はまだ知る由も無い。

ある時、メグと学内を歩いていると、メグの友達に会った。「こんちは〜」私も挨拶したら、メグが友達に言った。
「あ、このこミウ。バイクの子」
「あ〜、前言ってた、ちっちゃいのに、でっかいバイク乗ってる子やろ〜」「そうそう!」とメグ。どうやら彼女は、私のことを他の友達に話すとき、“ちっちゃいクセにでっかいバイク乗ってる人”と言ってたらしい。
それから、私はメグといるときに、彼女の友人に会うと
「バイクの人です」
と自ら名乗るようになった。
大学生活とバイクは私の中で切り離せないアイデンティティの一つで、
バイクに関してちょっとしたメグとの思い出がある。

ちっちゃいくせにバイクに乗っている美羽は、ある日ナンバープレートを無くした。正確には、バイクに乗っている間に、どっかに落とした。
ナンバープレートの下の方が、後輪に当たっていて、振動と共に徐々に取れてしまったらしい。

もちろん、すぐに警察に相談に言ったのだが、落し物担当(にされた)
で紛失物の届け出を担当してくれた人が驚くことを言った。
「見つかるか、発行するまで、紙に書いて後ろに貼っとき」
「え」
「なんか言われたら、そうしときって言われたって言っていいから」
とお墨付きまでもらったので、本当に紙に書いて貼ることにした。

さすがに、ぺらぺらの紙はダメだろう。
しかし、ダンボールとかじゃ、「わ、あの人ダンボール貼ってる」
て思われるし・・・
そこで白の厚紙に、数字やひらがなを、ナンバープレートの字体と同じように、油性マジックで綺麗に模写してやった。角も本物のナンバープレートよろしく、綺麗に丸くカットした。
結束バンドでバイクの後方にそれをとつけた私は、今まで通り普通に公道を走った。大学前の通りに、いつも通りにバイクを停めた。
意外と気づかれないものだな・・・と満足すらしていた。

数日後、メグと会ったとき、自慢げにナンバープレートを見せた。
はじめ、彼女は(あまり車のナンバープレートをじっくり見る機会もなかったと思うので)気づかなかった。
私が、「紙やで」と一言教えてやると、

「・・・!!? 似せてるっ!」

と爆笑した。
なんだか、“似せてる”というキーワードがとても自分的にツボだったので
鮮明に覚えている。メグの方もナンバープレートに似せて謎の白い紙をバイクの後ろにつけてる女にツボったらしく、
それからしばらく私は、“ちっちゃくせにでっかいバイク乗ってる奴”
から、
“ニセのナンバープレートなびかせてるヤツ”
に命名変更された。

数日後、
学校から数キロ離れた通学ルートで、くだんのナンバープレートは
拾得物として見つかった。


読んでくれてありがとうございます。 ふと思った時に、心のままに書いています。 よかったらまた読んでください。