追い妄想深読み「けんかをやめて」その後の彼女は
「けんかをやめて」の女の子が大人になったら
先日、Re:minderサイトにて深読み!河合奈保子「けんかをやめて」は竹内まりやが企んだ秘密計画の第一歩だった?をUPしたけれど、コラム文字数の関係もあって、本編から泣く泣く削った部分がある。
「けんかをやめて」の女の子がその後どうなったかだ。
コラムでは、まだまだ純な心を持つ中学生だと深読みをした。けれど、その後の彼女を描いた姿を竹内まりやは自分の楽曲に潜ませて、薬師丸ひろ子に歌わせている──
ということで、Re:minder番外編 ”追い妄想深読み”という名の備忘録としてここに書いておきたいと思う。
薬師丸ひろ子「古今集」に見る極上サスペンス
これもまた、以前にUPした僕のコラム薬師丸ひろ子「古今集に”どんでん返し”を潜ませた竹内まりやの策略として触れているけれど、ここでおさらいも兼ねてもう少し歌詞を引用して説明したいと思う。
「元気を出して」は、薬師丸ひろ子のアルバム『古今集』(1984年)に収録された竹内まりや提供の名曲である。
現在、アサヒ生ビールCM「おつかれ生です」篇でもかかっている大ヒット曲なので歌詞の内容も知っていると思うけど、ざっと説明すると「チャンスは何度でもあるし、彼だけが男じゃないのよ!」と、失恋した親友を元気づける曲だ。
そして、親友を元気づけるこの女性こそ、「けんかをやめて」の女の子だと僕は深読みしている。
中学生のときに経験した”三角関係”の苦い経験は、彼女をやさしい大人の女性へと成長させてくれたのだ。
……なーんて騙されてはいけない。
それは、同じく薬師丸ひろ子の『古今集』に「トライアングル」という曲が収録されているからだ。
恐怖…ドロドロの三角関係に拍車が掛かっている
「トライアングル」の歌詞を確認してほしい…
おわかりだろうか…
「けんかをやめて」の女の子は凝りてないのだ。
「元気を出して」で、親友を元気づけている女性と、親友から彼を奪った女性は同一人物である。
「涙など見せない強気なあなたを そんなに悲しませた人は誰なの?」…お前なのだ。
純粋な心を持った女の子は恐ろしいことに、「彼だけが男じゃない」と他に目を向けさせて、親友の彼を自分のものにしてしまう女性へと成長していたのだ。まさに三角関係の申し子である。
これこそが竹内まりやが企んだ秘密計画の全貌だ
先日のコラムで、竹内まりやのアイドル脱却計画の狼煙が「けんかをやめて」だと言及したけれど、”男と女の道ならぬ恋”の主人公の女性は…「けんかをやめて」で三角関係の恋に目覚め、そこから成長して「トライアングル」で親友の彼を奪い、親友を慰めるフリをした「元気を出して」へと繋がっていく。もしかしたら不倫がテーマである「駅」の女性も同じ彼女かも…などと妄想してしまう。これもまた三角関係だからだ。
ここまで読めばもう想像つくだろうけど、主人公の女性は竹内まりやの内に潜むもうひとりの自分である。”ブラック竹内まりや”とでも呼ぼうか。作家である竹内まりやは、自分じゃ絶対にやらない恋の駆け引きを、自己の黒い部分を投影したもうひとりの自分として一連の作品の主人公に据えたのだ。
ちなみに、広末涼子に提供した「MajiでKoiする5秒前」などキュートな曲調に騙されちゃうけれど、この曲に出てくる彼女もまた策略家である。
アイドル脱却計画はもちろんだけど、それだけではない…作家・竹内まりやとして自分の居場所を確立する、作詞家としての地位を完全なものにする計画…それこそが竹内まりやの狙うところだったのだ。そして、80年代のうちにその計画はお釣りがくるほどの成功を収めたのだから、凡人の僕らはその偉業を成し遂げたポテンシャルの高さにただひれ伏すしかないのである。
◇◇◇
ここまで「策略」とか「秘密計画」とか、めちゃくちゃひどい言い掛かりでご本人に怒られそうだけど、逆にそれだけの大作家だと僕は思っている。
きっと音楽家でなければ恋愛小説家として大成してたんじゃないかな?
ということで、「けんかをやめて」の本編に書かなかった妄想部分でした。あしからず。
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