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仁義なき催事場日記③

エピソード⑤ さよならポップ吉村

怒涛のオープニングセール3日間を終えた僕は、息つく間もなく月曜も9時過ぎにイオンへ到着した。
すると、ポップコーン屋はすでに片付けが終わっていて荷物を運び出すところだった。
「吉村さん……もう終わりですか?ウチの店は25日の日曜までやるんですけど……」
するとポップ吉村は、
「ウチは子ども商売だからねぇ……平日はあんまりやらないのよ、効率悪いし。今日は別の仕事があるからそっち優先だね」
ほおぉ……。イオンの指示通りやらなくてもいいのか。そうだよね、あくまでも催事期間最後までやって欲しいのはイオンの意向であって、儲からない見通しがあればやらなくてもよいのだ。そういう契約もあるのか。

とはいえ、せっかくいろいろ教えてもらえるチャンスだったのに、もうお別れかぁ……。催事は孤独との戦いでもある。勝手に戦友であり師匠と崇めたポップ吉村との別れに僕は一抹の寂しさを覚えていた。
「またいつかどこかで会うでしょ。この仕事ってけっこう狭いから、よく同じ人と会うんだよね」
と、ポップ吉村さん。
「次、僕は埼玉県のふじみ野でやると思うんですけど、吉村さん話もらってます?」と訊いてみた。
「いや、埼玉はなかなかね……同業者がいて縄張りじゃないけど業界の縛りみたいのがあるんよ」
なるほど。たしかに催事出店って屋根のある露店みたいなものだからな……いわゆる的屋(テキ屋)と同じなのか。

そうしてポップ吉村とかわいい奥さんはイオンを後にした。
テンガロンハットとオレンジTシャツにジーパンという後ろ姿を見送りながら、僕は
「シェーン!カムバ――ック!」
と叫んでしまったのは言うまでもない(噓)


エピソード⑥ 進化するしかない



とにかく、ポップ吉村から得た知識を活かして今日から頑張るしかない。
売上が想定より低すぎたため、埼玉からの救援物資を断たれてしまったのだ。当初はティラミスがバカ売れ予想だったため、埼玉のお店から週に何度か運んでくる予定だったのが、最初に運んだ分で足りてしまうことが判明したのだから仕方ない。休憩なしで10時から19時まで乗り切るしかない……か。
まぁ9時間通しくらい初めから想定内だったので驚かないけれど、さすがに立ちっぱなしはキツイので椅子を買うことにした。
近所にアウトレットの店を発見したので、帰りがけに寄ることにしたのだ。

その他に爪切りを買ったり、スティックコーヒーを買ったり、ホテル内のコインランドリーで洗濯したり……月曜以降ちょっと生活感が滲みだしてきた。10日間生活するって案外大変なのだ。


ただ良いこともある。
今回のホテルはGoToトラベルのお陰で安く手配できて(それもあって出張が実現した)ホテル代金が51176円→33265円に!さらに電子クーポン8000円分も貰えたのだ。


お陰で寿司を食べたり、

牛角で焼肉食べたり、

と、なんとなく豪遊できている。
厳しい状況に追い込まれていても、どこかで楽しく過ごさないとね。


あとは、
「自分のキャラクター設定をする」が課題として残っているけれど、これもポップ吉村を見習って帽子でも買おうと思っている。
週末までなんとか乗り切るぞ!(続く

次回は「孤独との戦い」から。乞うご期待。

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