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『奇跡さえも』ボカロ曲とかを紹介したい #11

  • 作詞:Sakurai(Omoi)

  • 作曲:Omoi

  • 編曲:Omoi

  • 歌唱:初音ミク (コーラス:鏡音リン)

Omoiについて

 第11回で紹介したい楽曲はこちら、『奇跡さえも』という曲だ。この楽曲を制作したOmoiはSakurai氏とKimura氏による2人組ユニットだ。マジカルミライ2018のテーマソングである『グリーンライツ・セレナーデ』をはじめ、『テオ』『君が飛び降りるのなら』などの力強いシンセサイザーロックを得意とするユニットである。その作風からか、ファンからは「音圧が強い」などのコメントも寄せられることも多い。「Synth Rock Cover」というアレンジカバーを制作することもあり、『小さな恋のうた』『前前前世』などのカバーが存在している。

サウンドについて

 この『奇跡さえも』も、Omoiの作るボカロ曲らしく、感情に訴えるような力強いシンセサイザーとギターのサウンドで構成されている。Omoiの真骨頂ともいえる明るく前向きなサウンドがこの曲でも発揮されている。メインボーカルのミクの調声も、感情が込められているような声に仕上げられており、特にサビの力強さには魅了されてしまう。
 調声はもちろんだが、曲構成の面でもサビの爆発力は際立っている。AメロとBメロでやや抑えめに歌う構成になっているからこそ、サビの力強さが一層大きく感じる。最後のサビのあとに続くCメロでは爆発力を維持したまま語りかけるボーカル力と伸びやかさが輝いている。この曲を聴くと、私はいつも流星に乗って夜空を飛んでいるかのような感覚を味わっている気がす
る。

歌詞について

 もちろんこの曲の良さはサウンドだけではない。Omoiらしいポジティブな言葉遣いが光っている。

春の足音が嫌いでした
何かが始まる気がするから 
僕はまだ 何ひとつも
やり切れてないのに
それを君ときたら 優しく笑って
夢のひとかけらを 僕にくれたんだ

『奇跡さえも』Omoi

 これは1番のAメロ~Bメロの歌詞の一部である。「春の足音」が「何かが始まる」象徴として捉え、その上で自分の不甲斐なさを嘆いている。しかし、「君」という存在が「夢のひとかけら」を与えてくれるという変化が起きる。春という季節は、入学や就職など新しいことが始まる季節である。それに不安を感じる人は多いだろう。しかし、その一方で新たな出会いが増えるのも春という季節なのだ。新しい出会いによって、「僕」は「夢のひとかけら」を見つけることができたのかもしれない。この歌詞の続きには

辿り着けるのなら 遥か遠くまで 
誰も見たことのないその場所へ 連れて行ってよ

『奇跡さえも』Omoi

 と続く。出会いからさらにその先を目指そうとする感情がここには表れている。また。このあとに続くサビの歌詞はこう綴られている。

1.2.3で風を切って
4.5.6を駆け抜けたなら
奇跡さえも霞むような
君のドラマが見たいんだ!

『奇跡さえも』Omoi

 夢を追い、「君」の輝く瞬間を見たいという願いをこめて「君のドラマが見たいんだ!」と歌っている。あえて難しい言い回しを使わず、感じたままにまっすぐ言葉にしたような歌詞だからこそ、心に訴える力強さがある。
 この歌の中における「僕」「君」には様々な立場が当てはめられると考えている。「僕」をVOCALOID、「君」を使い手であるボカロPと捉えて、ボカロPの活躍を願う歌と考えることができる一方、「僕」と「君」を入れ替えて、ボカロPがVOCALOIDに夢を託す歌とも解釈できるのではないかとも感じる。もちろん、これ以外の「僕」と「君」がいてもおかしくはない。

おわりに

 まっすぐで前向きなOmoiサウンドと歌詞に心を打たれ、救われてきたという人は決して少なくないだろう。この『奇跡さえも』もまた、夢に向かって突き進んでいる人たちに届いてほしい一曲だと、私は思う。

(この記事はカクヨムで不定期連載している「ボカロ曲とかを紹介したい」の転載版です。noteに転載するにあたって一部修正しています。過去の記事は下記のリンクから。)


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