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Stones alive complex (Blue Calcedony)


ソーシャルディスタンス用カーテンを押し通るような感触が全身にあり、亜火ノ聖命は夢の第二層へと降りた。

ここは、観える場面がそれなりに現実味を帯びてた第一層より、少し支離滅裂な層。
その物を「物」として認識できる概念が、未完成のままに渦巻くシュールな領域。

レアチーズケーキでできた金閣寺の屋根瓦を踏みちらかし、逃げる平将門の後ろ姿を見つけた聖命は急ぎ追う。

(そういえば。
三重県立美術館にダリが来てたっけ・・・
スタンスをディスして、行くならゆかねばな!)

ローカルネタをふっと思い出しつつ、飛び散るチーズケーキの欠片をひと口味見。

「美味!
こら待て将門!
幼名、鬼王丸よ!」

左方向から巨人のごとき幼児の手が突進してくる。その丸っこい指がつまんでる上本町行急行列車の後部へ、将門はしがみつく。

逃がすかと追う聖命。

その足へ、しゅるしゅると白線がからみつく。

『飛びこみ乗車は御遠慮くだちゃーい!
白線の内側へお下がりくだちゃーい!』

幼児が、駅員口調を真似てアナウンスする。
足をとられスピードが落ちた。

「現実は幻想なのだ!」

声で追いかける。

「ずいぶんと厭世的だぞ!聖命!」

振り返り将門は言い返す。

「少しニュアンスが違うな!
各自の幻想が、この総合した現実を創っている。
幻想を変えれば、現実は変わる。
ていうか、現実=幻想なので当たり前か。
現実界は夢の第零層とも言えるのだ。
その上には、マイナス一層から始まる超現実層がある」

将門を後部に貼り付けた列車は、腹ぺこでふらつくティラノサウルスの骨格標本を線路にして走る。
全身を拘束しようとしてくる白線を、聖命はフルチャージして無双となったSuicaをカッターにして散り散りに切断した。
その断片へタミヤのボンドを塗り塗りからのプラモデルし、ステルス戦闘機F―35ライトニングを組みあげコクピットへ乗りこんだ。

令和(00)とグレートリセットしようとした勢力の思惑とは、別の世界線へリセットされる予感がしていた。
今回のスクラップ&ビルドはアトランティス規模だ。

「ピラミッド型のヒエラルキーが頂点から崩壊し始めたら、そのシステムに乗っかってた概念構造も崩れ去るのだぞ!
各個のアイデンティティを形作ってた部品が、意味をなさなくなるのだ!運命法則もパラメーターが異質なものになってしまう!
霧散する零層からマイナス一層目へシフトできる、へそ曲がりの数は限られているってことなのだ!
当たり前だと思っていた既存のパラダイムに、惜しみなくキレれてるやつを増やさねばならん!虎みたいにな!
オーバー?」

ヘルメット無線で呼びかける聖命。
そして、アフタバーナー全開のマッハ1.6で幼児の指が動かす列車を追う。

(おわり)

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