Stones alive complex (Libyan Desert Glass)
平将門は、産まれたての小鹿が立ち上がろうとするかにフラフラと腰を持ち上げ、すっくと立ったとたんにどすんと尻もちをつき、あぐらに座りこんだ。
その様子を頑張れ頑張れと見守っていた亜火ノ聖命もつられ、ガックリしてあぐらに座った。
「わしは・・・」
将門は、痒そうに目を掻き。
「・・・気絶していた。
気絶した夢を観ていたよ」
聖命は問う。
「気絶している自覚があるまま気絶しているっていうのは、気絶していないことになるのでは?」
「気は確かに、気絶をしていた。
気絶している自分を見下ろしていたのだ」
「話を整頓しようか。
自分の夢の中で気絶して、
気絶している自分を夢の中で見下ろしていたのだな?
この夢の外ではおぬしは眠っているのだが、眠って気絶してる中で気絶した状態を、とある意識は観察しながらずっと起きていたわけだ」
「多重構造よな」
「その重なった層のことは、次元と呼ばれている。
起きている現実の次元を三次元とすれば、
眠っている時はひとつ下の二次元にいる。
そして。
そこで気絶したのなら、もうひとつ下にある一次元に達したということだ。
この場合の次元とは物理学でいうところのそれとは違う。あくまでも意識レベルの次元のことだ」
「では。
四次元から三次元の自分を見下ろし、観察している自分も存在しているって言うのか?」
「ニュアンスを正確にするのなら、
観察してるというより鑑賞しているに近い感覚だろうな。
四次元の自分視点からすれば、
三次元の自分は眠っているように見えるだろう。
さらには、五次元以上の自分もいるはず」
この文章を書きながら同時に、
へぇ~そうなんだぁ~と感心しながら読んでる自分は、何次元のやつなのだろう・・・。
聖命は筆者の疑問にも答える。
「四次元の君が書かせてる文章を、
三次元の君が読んで驚いているんだと思うぞ」
「えっ!
マジっすか?」
「君に限ったことではないよ。
みんな自覚なく、多次元の自分と常に会話をしているのだよ」
「正解!そのとおりだよん」
「へー!そうなんだー!」
「知ってた気がする」
「七次元から失礼しまーす。
精神の次元構造の説明を簡略化しすぎてると思われます」
「実際には、層じゃなくて多重録音されたひとつの信号なんだよね。
あ、九次元の私です以後よろしく」
「こ難しくてわしには分からん」
「分かろうが分かるまいが、そうなものはそういう具合に動いてくのさ」
一体全体、これは誰らと誰らが喋っているんだ????
「問いが答えになっているぞ。
一体と全体に決まってるだろが!」
「そもそもいつから、
わしらの自我は、こんなにも多層に分裂したんだろう?」
「そりゃあ・・・
知恵の実を食ったあたりから、だろうな。
羞恥心の芽生えが主な原因だよ。
今風なら、自己肯定感の低下といわれる感覚さ」
「羞恥心が強すぎる民族は統治しやすいけれど、たいてい個々の精神は抑圧で分裂し内部崩壊してゆくんだ」
「分裂してきた議論をまとめようか。
そしてこの私こそが、その意識分裂の解毒剤になるわけなのだ」
最後のは、全球中の玉が言った。
(おわり)
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