見出し画像

フォーク&ニューミュージック名曲集④天才フォーク歌手「山崎ハコ」

「暗さ」という点では森田童子と双璧というイメージが強い山崎ハコ。
アニメ『ちびまる子ちゃん』とコラボした「呪い」などという、そのものズバリの「暗黒フォーク」を歌っていたせいもあるのでしょう。 

しかし、その「暗さ」はあくまでイメージであって、本人へのインタビューなどを読むとやはり事務所の売り出し戦略だったようです。藤圭子のケースと似たようなものですね。

インタビュー では、10代のデビュー時から事務所の社長に洗脳されて言いなりになり、家族との音信まで絶ってしまったと語っています。
挙げ句の果てに事務所が倒産。印税のことなど何も分からないまま社長に預けていたデビュー時からのギャラもすべて持ち逃げされて、ある日突然一文無しに。アパートからも追い出されて仕事もなくなり、ホームレス同然の生活になったと・・・。

映画の主題歌「心だけ愛して」(2枚目のシングル)がヒットしてブレイク。 今となっては想像もできないことですが、デビュー初期には山崎ハコが土俗的、中島みゆきが都会的という違いはあれど、同じ女の情念を歌う歌手として二人がライバル視されていた時代がありました。

活躍が期待されていたのに、その後、いつの間にか消えてしまったのはフォークブームが下火になって行ったこともありますが、直接的には事務所の突然の倒産とその後の金銭トラブル、それに続くホームレス生活という悲惨な事情があったからなのですね。こうして1990年代末から約10年間ドロップアウト状態になり、音楽活動からも遠ざかっていました。

完全に音楽界から足を洗ってしまった森田童子とは違って、山崎ハコは2008年に歌手復帰、レコード会社とも契約し直して音楽活動を本格的に再開。その後、アニメやテレビドラマとタイアップすると共に、地道なライブ活動を続けているのは嬉しいことです。

今回リンクする曲の多くは、彼女がまだ10代の頃に書き溜めていた作品。山﨑ハコの才能、恐るべし!です。

※画面右下隅の四角いアイコンをクリックすると画面が拡大されます。

「白い花

「白い花」が、山崎ハコのオリジナル曲。
「心の花」の方は、 五木寛之原作、芦田伸介主演のドラマ 「艶歌の竜」シリーズの第三作「旅の終りに」(2002)の挿入歌で、同じ曲に五木寛之が歌詞をつけたもの。ドラマの中では本人ではなく、一葉が歌っていました。
ドラマ『艶歌』、もう一度じっくり観てみたいものです。

一葉の歌唱シーンはこちら。

                                 「着物」

28才にして、初のテレビ出演。
冒頭のばんばひろふみとの前振りトーク。緊張感ありありですが、話ぶりを見ても別に暗くはないですよね。しかし、ばんばさん、緊張をほぐすためか、セクハラ 発言しちゃってますなあ。
緊張しすぎて、出だしの所で歌詞を忘れれてしまったときの反応もおちゃめで可愛いいです。その後、しっかり立て直して最後まで歌い切ったのはさすがにプロで、数々のライブをこなしてきただけのことはあります。    「着物」は、しっとりとした知られざる名曲です。

「望郷」

生まれ故郷の大分県日田を歌った山崎ハコの代表曲。          生まれ故郷と都会との対比、そして、故郷の喪失を歌う歌詞が悲痛です。 民俗フォークとでも言ったらよいのでしょうか、独特の世界観です。
初めて聴いたときは、歌詞の最後の一行に大きな衝撃を受けました。

こちらはスタジオ録音盤です。

                                  横浜を歌った曲をもう1曲。                     「ヨコハマ」

九州から出てきて高校時代を送った横浜。
故郷と都会との対比が鮮やかに描写されています。
汚れた河に数珠つなぎになって浮かぶ沢山のだるま船。水上生活者は映画『泥の河』でも描かれていましたが、高度成長による街の発展と共にいつしか消えて行ってしまいました。                           

「ララバイ横須賀」

佐世保、呉と並ぶ戦前からの軍港都市、横須賀のご当地ソング。横浜市と境を接しています。    

「流れ酔い歌」

生ギター1本で、女の暗い情念を切々と歌い上げています。       歌詞も曲もとても10代で書いた曲とは思えません。 早熟の天才ですね。

地獄「心だけ愛して」

神代辰巳監督の映画『地獄』(1979)の主題歌で、「気分を変えて」と並んで多分山崎ハコ最大のヒット曲。                                              
少々話が脱線しますが、映画の方は登場人物全員が地獄に落ちて因果応報の責め苦を受ける1960年の新東宝中川信夫監督の『地獄』の出来の悪いリメイクのような感じでした。主演の原田美枝子は頑張っていたものの、よかったのは主題歌だけで作品そのものは箸にも棒にも引っかからない凡作でした。神代辰巳は低予算の日活ロマンポルノで数々の名作を作って来た監督ですが、スポンサーが好き勝手な注文を出す大作映画の監督には向いていなかったような。

「きょうだい心中」

こちらも映画『地獄』の挿入歌。                   一種の歌物語で京都の伝承「兄妹心中」が元になっているようですが、北面の武士遠藤盛遠(文覚)と袈裟御前との悲恋も連想させますね。      主題が近親相姦を扱っているということで、放送禁止歌に指定されています。

「雨に唄えない」

1982年の6枚目のシングル。この頃になるとフォークブームは完全に下火になり、ニューミュージック全盛時代になっていました。静かな歌い出しの前半こそフォーク調ですが、後半はエレキギターを前面に押し出しアレンジもニューミュージック調。そのアンバランスさが絶妙で、なかなかいい味を出しています。

「気分をかえて」

1990年の11枚目のシングル。この曲がヒットしたので、この頃はテレビでもよく見かけました。今回は、アップテンポのブルースロック調アレンジで。中島みゆき唯一ののブルースロック「トラックに乗せて」と同じような感じです。山崎ハコの曲調と歌詞はブルースとの相性がよいらしく、アルバムではブルース曲を何曲か歌っています。

香坂みゆき「気分をかえて」

「気分をかえて」は香坂みゆきに提供した曲で、こちらもヒットしています。

「織江の歌」

山崎ハコが音楽を担当した1980年版『青春の門』のイメージソング。   主題歌ではなくイメージソングなのは、テレビCMでは流されたものの映画の中では使われていないからです。

「夕陽のふるさと」

こちらも懐かしい故郷との別れを歌った隠れた名曲。          1981年のアルバム「茜」A面の冒頭に収録されています。

「我が里」

この曲も望郷の歌ですね。山崎ハコは、故郷への思いを綴った曲を何曲も歌っています。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?