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自民党の新型コロナ対策は「ハンマーを捨てたダンス戦略」①

1 新型コロナ対策「三つの戦略」

世界の国々の新型コロナ対策を見渡してみると、その対策は大きく三つに分類されるようです。

①「集団免疫戦略」                         北欧のスウェーデンが、その代表格とされています。          基本路線は感染の拡大を容認、国民の7割程度に抗体ができて感染が終息するのを待つというもの。                       これにより、11月19日時点でのスウェーデンの累計死者数は6600人を超え、北欧4国の中では突出して多くなっています。

因みに他の3国の死者数ですが、デンマーク778人、フィンランド375人、ノルウェー306人。                          いずれの国も新型コロナ対策として、強い社会的統制を行っています。  スウェーデンの人口は約1000万人で他の3国の約2倍ですが、それでも死者数が群を抜いて多いことに変わりありません。              

予想されたこととは言え、甚大な被害の割には集団免疫の獲得は遅々として進まず、スウェーデン国内でも政府に対する強い批判が巻き起こりました。そのため、最近になって統制を強めつつあるという報道もあります。

イギリスも最初はこの戦略を採用していましたが、感染が急激に拡大して重症者や死者が急増、医療体制が崩壊寸前になったため、途中で「集団免疫戦略」から撤退しました。

州によって対策が大きく異なるアメリカですが、トランプ自身の対応は意外に速く、1月31日中国からの入国を禁止、2月2日緊急事態宣言発令、3月には自らを新型コロナと闘う戦時大統領と称して、「国防生産法」を発動するなど必要な手を次々と打ち、当初はやる気満々でした。

しかし、11月の大統領選挙を意識したのか、その後は新型コロナ対策に急ブレーキがかかり、いつの間にか経済最優先の「放置戦略」に転換してしまいました。                              政府が私権や民間の活動を制限することを嫌う自らの岩盤支持層を意識したものと思われます。

コロナ対策の実務を取り仕切る各州では、民主党の知事がロックダウン等の厳しい対策をとる一方、トランプと同じ路線をとる共和党知事の州では、早々と規制を解除して経済活動を再開するなど州によって対応がバラバラで統一的な対策が打てず、あれよあれよという間に世界最大の新型コロナ蔓延国になってしまいました。

ただアメリカのPCR検査能力は凄まじくて、その気になった途端、あっという間に一日120万件にまで増やしました。

これに対して、日本の一日あたり検査数は、8月から11月の平均で僅か2万件でアメリカの何と60分の1、これまでの最大を記録した11月11日でも33861件にしかすぎません(11/14現在)。 

それもそのはずで、7月30日時点での日本のPCR検査数は、何と世界159位。アフリカのウガンダの次で、まさに発展途上国以下です。        その後、4が月近く経ちましたが検査数は遅々として伸びず、最新のデータでも中米ホンジュラスの次で第153位です。

これで新型コロナと戦えと言われても、検査数が少なすぎて、肝心の敵がどこにいるのかも分からないのですから、見えないコロナウイルスとまともに戦える訳がありません。

日本のこれまでの検査陽性者数の少なさは検査数自体の少なさに助けられていた面があり、欧米のような大規模PCR検査を実施すれば、検査陽性者数が1けた上がる可能性があると思っています。

                                
②「封じ込め戦略」(ゼロコロナ戦略)                 台湾、中国、韓国などの極東の近隣国やオーストラリア、ニュージーランドなどがこの戦略をとっています。
厳格な水際対策と大規模な検査→(IT技術なども活用した)追跡→隔離→治療を徹底すること、必要に応じてロックダウン等も併用すること等によって、新規感染を抑え込んでいくというもの。

日本ではほとんど報道されなくなっていますが、初期の迅速で厳しい水際対策(中国からの入国禁止は2月6日)と徹底した検査・隔離等によってほぼ封じ込めに成功した台湾の累計感染者数は609人、累計死者数に至っては僅か7人です(11/19現在)。  

初期には4700人以上の死者を出したものの、その後の国をあげての凄まじい感染対策と管理によって感染の蔓延を早期に終息させたのがお隣中国。  震源地の武漢では、市民1千万人のPCR検査を短期間に完了するなどの徹底ぶりで、現在は国内の新規陽性者数ゼロから1桁台を達成、経済活動も順調に回復して来ています。

韓国は「封じ込め」と「ハンマー&ダンス」の中間の戦略をとっているように見えますが、それでも日本より遥かに低い感染者数を維持しています。

その結果、台湾や中国では、新型コロナ以前の日常生活が、ほぼ戻りつつあります。                              その上、驚くべきことにほとんどの国が今年、GDP成長率の大幅なマイナスが予想される中、台湾と中国は、プラスの成長率が見込まれているのです。

「経済を回したいのなら、徹底的に封じ込めるのが一番の早道」というよいお手本です。

アジア近隣国の成功事例に何も学ばず、やればできるのに何のかのと理由をこじつけて、いまだに感染症対応ベッド数を抜本的に増やそうとせず、ベッド数不足を理由に、最強の武器であるPCR検査の拡大を妨害・抑制し続けている異常な国は日本だけです。

これは、PCR検査を拡大して無症状者まで検査すれば、新規陽性者も大幅に増えてしまう、そうなると入院患者が増えて医療体制がひっ迫するという逆立ちしている上に倒錯した論理です。

マスコミはこれまで、事あるごとに欧米の感染状況に比べると日本は遥かに良いという伝え方をして、日本の感染対策を賛美してきました(「日本型モデル」や「大阪モデル」)。                       しかし、原因は不明ですが、欧米と東アジアとでは感染状況が大きく異なっており、東アジアの国々では欧米のような感染爆発は起きていません。

その東アジアの中では、日本の感染状況は最悪で、統計では唯一欧米の後を追うように急激な上昇カーブを描いています。

③「ハンマー&ダンス戦略」                     ①と②の中間的な対策です。                     感染拡大が激しくなってきたら緊急事態宣言を出し、ロックダウン等を行って新型コロナを叩く(ハンマー)、その結果、感染状況が落ち着いてきたら規制を緩和し、経済活動を再開する(ダンス)、というサイクルを繰り返す方式。                               

ヨーロッパ諸国をはじめ多くの国がこの方法を採用しています。しかし、ハンマーで叩いている間は下火になりますが、規制を緩めたとたん、再び感染が急拡大するという悪循環に陥っている国がほとんどです。規制緩和後、感染拡大が止まらなくなったフランスやイギリスなどは、現在、2度目のロックダウンを余儀なくされています。           

2 日本の新型コロナ対策 

では、我が国は、どの戦略を採用しているのでしょうか。 

2月頃、日本政府は新型コロナを非常に甘く見ており、屋形船を端緒にしたクラスター対策と国民に注意を呼びかける以外は、ほぼ何もしませんでした。

それどころか、官邸のホームページで安部総理(当時)自らが、中国の皆様大歓迎などとインバウンドを呼かける始末(その後、HPから削除)。
中国で感染が拡大しているのは分かっていたのですから、台湾のようにいち早く入国規制をかけるべきだったのにそれとは真逆の政策をとり、初期対応を完全に誤ってしまいました。

おかげで、折からの春節ということもあり、札幌雪祭りなどに多くの中国人が来日することに。

続く横浜港におけるダイヤモンド・プリンセス号新型コロナ集団感染では世界的な注目を浴びましたが、適切な対応が全くとれずに日本政府の無能ぶりが知れ渡ってしまい、国内だけでなく各国からも顰蹙を買いました。 右往左往して迷走したあげく、最後には、十分な検査もせずに乗客たちを下船させてしまったのです。                                                          おまけに、あろうことかその乗客たちを横浜駅近くで一斉に「解放」し、一般交通機関を使って帰宅させるという信じられない無能ぶりを発揮しました。                               「解放」後、すぐに駅近の飲食店街に飛び込んだ乗客たちもいて、この時のまちがった対応が、神奈川県の感染拡大の一因になった可能性もあります。

クルーズ船問題を除けば、この間の政府による新型コロナ感染対策は、国民に注意を呼びかけることとクラスター対策だけで、これ以外の対策には非常に消極的でした。                                                            この状況が突然一変したのが、3月24日の東京五輪1年間延期発表。

この日を境にして政府、東京都知事、マスコミなどが、まるで堰を切ったように突然大騒ぎし出だしたのにはあきれました。                                  しかし、このドタバタ騒ぎで、それまで政府が新型コロナに対して不作為を決め込んでいたのは、やはり五輪を予定通りに開くためだったということが露わになってしまいました。

大っぴらに感染対策を行えば日本で新型コロナが蔓延していることが世界中に知れ渡ってしまう、そうなると予定通り五輪が開けず、下手をすると中止に追い込まれかねない、そのことを政府や五輪組織委員会は真剣に恐れていたのだと思われます。

安部政権によるこの意図的サボタージュは、日本の感染対策に大きな禍根を残すことになります。                             

入国制限の実施が大幅に遅れたため、台湾のような効果的な水際対策ができず、初期消火に完全に失敗してしまったのです。

現在も我々国民は、普通の日常生活を取り戻すことが出来ていません。  高齢者や基礎疾患をもつ者は苦しい自粛生活を強いられ、それ以外の国民も新型コロナ感染の恐怖に怯えながら日々の生活を送るという形で、この時の大きなツケを払わされ続けているのです。

その後は国民からの強い批判にさらされて対応を一変、唐突な学校閉鎖と緊急事態宣言の発出、それに伴う対応策を矢継ぎ早に打ち出しました。                                     これは明らかに「ハンマー&ダンス戦略」のハンマーにあたる政策です。

政府の専門家会議も、局所的集団感染が見つかったら、その都度集中的に叩いていくクラスター対策に力を入れていきます(現在は、全く対応しきれなくなっていますが)。

並行して、国民には不要不急の外出自粛、企業に対する休業や在宅勤務の要請、個人事業主へは休業や営業時間の短縮要請、その他、コンサートやイベント等の自粛要請、入場者数制限など、対症療法ではありますが、それなりの対策を行いました。

これらの対策は一定の効果を上げましたが、緊急事態宣言の解除後、政府は、ハンマーよりも各種の規制を徐々に緩めて経済活動を再開する「ダンス」に力を入れ始めます。                                                        その後は、「アクセルとブレーキを同時にかけている。」と言われたように明確な戦略やはっきりした方針もなく、「アベノマスク」に代表されるその場しのぎで中途半端な対策をだらだらと続けてきたのは、皆様ご存じの通りです。

3 「疑似集団免疫戦略」と「GO TOキャンペーン」

このように政府の対策が二転三転してきたのは、与党内で、経済活動最優先の「ダンス派」とある程度の規制強化を望む「ハンマー派」との間でせめぎあいがあり、その時々の状況下で国民の反応を見ながら、どちらかの政策が優先されてきたからです。

実は、緊急事態宣言解除後は、与党内の「ダンス派」が圧倒的に優勢になっていたのですが、それが一気に表面化してきのが「GO TOキャンペーン」。

日本政府は公式には絶対認めないでしょうが、緊急事態宣言解除後、経済活動を最優先にして後は何もしない「集団免疫戦略」に徐々に舵を切って行ったと見ています。                      

一応「戦略」とは書きましたが、実態は、大局的な見通しの下に誰かが決断を下したというほど御大層なものではありません。

落ち込んだ経済活動を何とか底上げしたい、疲弊した支持基盤(全国旅行業協会の会長は二階幹事長)に何が何でもお金を回したいという要求から、なし崩し的に規制を緩め、大々的に「GO TO」を推進して行ったら、結果的に「集団免疫戦略」に似たものになったというだけのことです。        「疑似集団免疫戦略」とでも言ったほうが、実態に近いかもしれません。

ただ、「緊急事態宣言」や大幅な規制はもうこりごりで、何があろうと、もう二度とやりたくないということだけは、はっきりしているようです。

その証拠に、ここに来て連日、全国の新規陽性者数がそれまでの最多記録を更新し明らかに第3波が来ているのに、政府は実質、何の手も打っていません。

いや、それどころか「GO TOキャンペーン」をはじめ、営業自粛要請の解除、大規模イベントの人数制限緩和、外国人の入国制限・待機条件の大幅緩和(11//1)、WITHコロナキャンペーン(「新しい生活様式」=「皆さん、新型コロナさんとは上手に付き合って行きましょうね。」)などの封じ込めとは真逆の政策に熱を入れている有様です。

10月末には、東京オリンピックに向けて、横浜スタジアムでの観客数制限緩和「人体実験」まで行い、黒岩神奈川県知事は「大成功。」と自画自賛する能天気ぶり。

さらに、11月中旬には、IOCの五輪貴族バッバ会長(何とN95マスクを装着!)を来日させて、「何が何でも観客を入れた五輪はやるので、迷っている協賛企業の皆様は、どうぞ12月以降もスポンサー契約を継続してくださいね。」という暗黙のメッセージを出させる始末。

この状況下で、大量の選手・役員・観客が来日すると予測されている五輪を開催すれば、それこそ「地獄」が訪れることは火を見るより明らかで、まるで敗戦に至るまで自らの暴走を止められなかった戦前の日本軍のようです。自分たちの巨大利権確保のためには、国民の生命など二の次、三の次で、もはや狂気さえ感じさせる暴挙です。

コロナの蔓延を煽るようなことばかりしている一方、政府がやっている感染対策はと言えば、「感染したら自己責任だからね。」と言わんばかりに、マスコミを通じて国民に注意を呼びかけるだけ。

「GO TO」開始以降、政府は目いっぱいアクセルを踏み込んでエンジンをふかし、どんどん旅行や食事に行くように呼びかける一方で、「三密を避けろ。」だの「マスクをして、黙って会食しろ。」だのと、国民にはブレーキをかけることを要求するという支離滅裂ぶりで、こちらの頭までおかしくなりそうです。

これでは、大炎上中の建物を前にして、国民には水をかけることを要求しながら、政府の方は堂々と大量のガソリンをまいているようなものです。

寒さの訪れと共に、恐れていた欧米のような感染爆発が、とうとう日本でも現実のものになりつつある中、蔓延の温床としてようやく「GO TOキャンペーン」に対する批判の声が高まってきました。            しかし、菅総理は中止する気などさらさらないどころか、何と来年のGWまで延長するという案まで出ています。

「GO TOキャンペーン」でさえこうなのですから、菅総理には2度目の緊急事態宣言など、頭の片隅にもないのでしょうね。            今出さずに、一体いつ出すのでしょうか。               手が付けられないようになってから出しても、後の祭りです。

4 「ハンマーを捨てたダンス戦略」        

さて、緊急事態宣言後に「疑似集団免疫戦略」に舵を切った日本政府は、そのまま現在もその路線をとっているのでしょうか。

答えは、NOです。                         しかし、ここでホッと胸を撫でおろしてはいけません。

日本政府の「戦略」は、今では、世界最悪の第4の戦略、「ハンマーを捨てたダンス戦略」に「進化」してしまったからです。 

現在、こんな「第4の新戦略」をとっている国は当然のことながら、日本だけです。                              スウェーデンやアメリカだって、こんなバカげたことはやっていません。

それは、経済的成長と感染防止という二兎を追うこれまでの表向きの政策を国民に知られないようにこっそり放棄して、経済を回すためなら、感染が拡大しても死者が増加してもかまわないという非情な「棄民政策」に舵を切ったということです。

今まで書いてきたように、現在、政府が最も力を入れている「GO TOキャンペーン」は、感染拡大を最大限に助長する最低の「経済政策」です。

「GO TOトラベル・キャンペーン」では、国民に旅行を奨励して全国にお金を回そうとしましたが、それで大いに潤ったのは政府からGO TO事業を1895億円で受託した「ツーリズム産業共同提案体」なる団体や大手旅行代理店、高級旅館・ホテルなどで、それ以外の中小業者や旅館・ホテルの大半は、いまだに閑古鳥状態。                        

その結果、お金の代わりに全国津津浦浦にあまねく行き渡ったのは、新型コロナ・ウイルスだったという最悪の結果に。

人の移動量の増加と感染拡大は正比例の関係にあるのですから、政府が奨励しているように、「トラベルやイート等」で人の移動が多くなればなるほど感染が拡大することは、小学生でも分かることです。

うがった見方をすれば、経済成長と同時に、コロナ感染で年寄りがどんどん死んでくれれば、年金や医療費等で財政の重荷になっている高齢者の数も減らせて、まさに「一石二鳥」!                    政府がやっていることを見ていると、こんな恐ろしい陰謀論さえ頭をよぎってしまうのは私だけでしょうか。

政府の暴走を止められるのは、国民の世論しかありません。                                         「バカな大将、敵より怖い。」(武井正直)                                                                                    

本気になって政治を変えないと、本当に自民党に殺されますよ。

                                  続きは、こちらです。




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