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短きこと、その輝きは研ぎ澄まされ

私が中学とか高校に通っていたときのことだったと思う。
当時、読んでいた漫画雑誌に、そういう雑誌にはよくあるように、漫画の新人賞の結果発表が掲載されていた。

この新人賞の募集要項を仔細には覚えていないのだけど、原稿用紙15~60枚にまとめたものを送るように、というような指定があったようだ。

さて、受賞した作品に目を通していくと、何十ページにも及ぶ作品も名を連ねる中、募集要項に記載されている原稿用紙の必要最低枚数である、15ページの作品が入賞していた。
そのときの受賞作で、この原稿枚数の少なさに匹敵する作品は、他になかったはずだと記憶している。

審査員の講評を読んでみると、どうやらこの作品が評価された理由のひとつに、少ないページ数で物語をよくまとめている、という点が挙げられているようだった。

必ずしも、長いこととか、多いことが良しされるわけではない。
明文化してしまうと陳腐なことだけど、それに気付いたときの衝撃は大きく、自分の世界が広がったような気がした。

短い中で表現することは、装飾が少ない分、その人が何を大切にしているか、何を美しいと思っているかが、よりダイレクトに際立って見えるということだ。
それが色々な技術・技法に凝縮されて、作品という形になる。

その小さくも強い輝きは、時に超大作と呼ばれるような作品の評価を上回ってしまうことだって、あるのだろう。

こういう評価のされ方もあるのか、と思った。
面白いなあ、と。

これに感銘を受けて、高校生の頃に所属していた放送部で制作するドラマの原案として、とても短い物語を書いて提出したことがあったが、あっけなく没になったのは良い思い出である。

それでも、どんな場合であれ、必ずしも量があることだけがいいとは限らない。
これは今でも、私の中での大切な気付きとして、そっと心に仕舞ってある。

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