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2024/8/12 消える冥王星、現れる富士山

「一般のシートはすべてリクライニングが可能です。右下のレバーを引いて、リラックスした姿勢で星空をお楽しみください」

と、アナウンスが流れた。右手で言われたとおりレバーを探し出して引くと、ぐーんとシートが倒れる。後ろの席に声をかけることも、前の席から声をかけられることもない。みんながみんな、めいっぱいシートを倒すことが前提なので、気を遣い合うという余地がはなから用意されていない。なかなか珍しいシチュエーションである。新幹線や飛行機で生じる、あのコミニュケーションにどうしても慣れないので、通常の倍くらい開放感を感じてしまった。

本来ならこの連休は、熱海方面へ旅行へ行くはずだった。しかし出発の前日に日向灘で地震が起こり、南海トラフ巨大地震注意、という状況になってしまったため、泣く泣くキャンセル。代わりに近場へごりごりと出かけて遊び倒すことにした。

初日はでっかいプール、次の日は映画と焼肉、1日休息日を設けて、今日は朝からプラネタリウム。子どもがいるからこその遊び方である。プラネタリウムデートなんて漫画的な行いも、そういえばしたことなかったなあ。しておけばよかった。

スネ夫が(ドラえもんのプログラムだったので。近年のスネ夫は特に出来杉君不在時にその代役的な物言いをすることが多い)「水金地火木土天海」と言うのに密かに驚愕した。冥王星、冥王星はどこへ。

あまり騒ぎ立てても良くないので、プログラムが終わった後に、平静を装って夫に「冥王星って太陽系から外れたんだっけね」と知ったかぶりをかますと、「なんか、思ったより小さかったとかなんとかだよね」との返答。この人は大概なんでも知っている。もちろんそれで見下されたり軽んじられたりしたことなどただの一度もないが、私の中に残る、中学生くらいの「お勉強で負けたくない子ども」がずいっと出てきてしまって、へん!という気持ちになる。悟られないように、「だよねー」と言った。

お昼ご飯を食べて、画材屋で子らの夏の工作のための道具を買い揃えた。夫と長男の会計を待つ間、水彩絵の具がバラ売りされている棚で、ひとつずつ色の名前を読んでいると、次男が神妙な顔で「買って欲しいものがある」と言う。差し出されたのは水色の消しゴムだった。真上から見ると、真ん中がダビデの星の形にに白くなっている。

「使うと富士山になるんだ」と言って、次男、ドヤ顔。「たくさん消すから、すぐ富士山作るから」と謎の説得。購入した。私好みだ。使っていくうちに地形が現れるメモ帳とか、ミルクを注ぐと猫が現れるグラスとか、そういうやつ。

買い物袋を手に手に昼過ぎには家に帰った。あまりに暑くて、途中のコンビニでめいめいアイスを選んだ。坂を登るうちにアイスは一度溶けて、家の冷凍庫でまた凍った。私の買ったしろくまは、もう一度凍ったらすごく硬くなって、スプーンで採掘するみたいにして食べなければならなかった。動物園で、果物がたくさん入った大きな氷をかじるホッキョクグマの気持ちになって食べた。

本やなにかしらのコンテンツに変わって私の脳が潤います。