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2024/6/10 「すんっ」の実践
朝からぼちぼち仕事をする。
昨日からずっとあるドライヤーのことが忘れられない。夢に出るほど焦がれている。ドライヤーに。
この土日、日本で一番大きなレゴブロックのイベントに参加するために、家族で神戸へ行っていた。
家族4人の一泊旅行だ。各々少量の持ち物をパッキングして、各々担いで、新幹線に乗った。
これまでは子どもらが、ちょろちょろしたり騒いだりつまらなくて泣いたりするため長時間の移動にはもっぱら車を使っていたが、そんな心配もすっかりなくなりあまつさえ電車旅がしたいなどと抜かすようになったので、満を持して。
駅弁やお菓子を買い込んで、本を読んだりゲームをしたり、たまに誰かが窓の外を指さして「富士山だね」などと言ったりして過ごした。一度も抱っこでデッキに出て上下に小刻みに屈伸しながらあやしたりしなかった。
レゴの祭典は非常に盛大で、趣味と情熱と叡智の詰まった場所であった。夕食に南京町で中華を食べてすっかり満足したわれわれは、その日三ノ宮の駅の近くにホテルをとっていた。コンパクトで小綺麗なホテルで、特別高級というわけではない。温泉もないし大きな浴場やらスパやらもない。寝て、次の日朝食を食べたらすぐにチェックアウトして神奈川へ帰らなければならなかったので、必要最低限で十分だったのだ。
順番に入浴して、髪の毛を乾かそうと備え付けのドライヤーを手に取った。そもそもできたばかりのホテルだったようで、全てが真新しく洒落てはいたのだが、そのドライヤーはなんかもう様子が違った。シュッと細くて、グレージュとかエクリュとかそのへんのかんじの最近出てきたような言い方の色で、なんならコンセントな形までスマートな気がした。
シルバーの繊細な大きさのスイッチを入れてみてたまげた。音が小さい。風力がやばい。えっなんかすぐ乾いた…?
これまでの人生で、ドライヤーに重きを置いたことがなかった。恥ずかしながらこの年まで、取っ手がごきっと折れるような、筒がでかくて音もでかくて2980円、みたいなものしか使ったことがなかったので、今使ったものが本当にドライヤーと呼ばれるものなのかどうかもわからなかった。こんなに違うのか。ドライヤー、ピンからキリまであったのか。
細い筒の横っ腹に刻まれた商品名をすぐさまググった。このまま楽天で注文する勢いだった。10000円くらいするかな。でももう私毎日これ使いたい、買うわ、そう思った。すぐにヒットした。楽天市場の検索結果に飛んで、ずらっと並ぶその商品の値段にまたたまげた。33000円。さんまんさんぜんえん。
オープン価格ではないようで、いろんな店が検索に引っかかったが、すべて結果は33000円だった。上がっていた体温がすーっと下がっていくような、急に体が100mくらい後ろに下がるような感覚。すんっ。今流行りの「すんっ」て、こういうことか。
即購入ボタンを押せなかったくせに、忘れられず、今日も1時間に1回くらいメーカー公式店のページを眺めている。さんまんさんぜんえんのドライヤー。速く乾いて毛先まとまる。うるつや速乾。
今もまだ、購入ボタンは押せない。
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