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2024/5/23 善も悪もない

今日は仕事がゆるい。午前ぐらいはサボっても良かろうと、下北沢へ映画を見に行くことにした。

駅までは住宅街の細い道をずんずん下る。もともとは大きな家が立ち並んでいたところがポツポツと空き家になり、その空き家たちが取り壊され、洒落た建売りやモダンなアパートに生まれ変わるようになった。おかげでここ数年は常にどこかが工事している。今日も夏前にはアパートが完成すると書かれた看板が立てられた土地に、資材を乗せたトラックが尻を捩じ込もうとしていた。

駐車できるスペースがだいぶ狭いようで、丈の長いトラックが尻を突っ込んでも頭が飛び出してしまう。飛び出した頭が、そもそも車がすれ違うのが難しい狭い道路を、さらに半分塞ぐ形になっている。

「これ、車通れる?」
「通れないね」
「うーん、ま、いいか。しょうがないもんね!」

モンペのお兄さんたちの明るい声。そうだな、しょうがないもんな。

駅の自販機で飲み物を買う。いつも味のついていない炭酸を買うのに、いつの間にかなくなっていた。悲しい。代わりに買ったのは水なのに、吹き出すことを恐れて蓋を慎重に捻ってしまう。炭酸仕草。

下北沢へは電車で20分ほど。映画館へ着くまでに水は飲みきれず、少し荷物が重くなってしまった。

終映後、ちょっと迷ってタイ料理店を選んだ。トムヤムクンが辛くて爽やか。タイの可愛いサウンドのポップスがずっとかかっている。ひとりの外食は小さなスペースで済むので身軽。カオマンガイをわしわしと食べながら、見てきた映画について考える。つい他人の考察を読んでしまってちょっと後悔する。頭の良い人の考えにすぐに乗っ取られてしまいそうになるから。ネットを見るのはやめて、持参した文庫本を少し読んだ。

食べ終わってすぐに電車に乗ると、すぐに最寄り駅に着いてしまった。まだ午後に入って間もない。名残惜しいような気がして、駅近くの喫茶店に入る。店に客はおらず、店主だけ。持ってきた文庫本が残り十数ページだったので、これを読み切ったら帰ろうと決めて、珈琲を注文する。

店内にはラジオがかかっていた。私と店主の他には誰もおらず、もちろん私と彼女は特に会話することもないので、ラジオのパーソナリティの溌剌とした声だけが響く。ちょうどさっき見てきたばかりの映画の話をしていた。

喫茶店はお菓子屋でもある。オーブンの「ぶーん」という音と、熱したバターの香りが充満している。これが「香ばしい」か。

ゆっくり本を読み切って、珈琲を飲み干し、料金を払って帰った。ふくらはぎに力を入れて坂を上って帰ると、出がけに確認した時と寸分違わぬ位置に、3匹の猫たちがそれぞれ寝っ転がっていた。

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