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2024/7/22 こんなんが、こーんなん、になる。

次男がサッカー合宿へと旅立ってしまった。2泊3日の旅である。本当は明日まで学校があるんだけど、兄弟の所属するサッカーチームは複数の学校の子どもの寄せ集めであり、他の学校は先週末で夏休みに入っているため、多数派を優先して今日から夏合宿が組まれていたのだ。

次男は毎年このサッカー合宿を楽しみにしている。学校もあとは大掃除くらいなものだし早めに夏休みに入ってもよかろうと参加することにした。担任の先生も「問題ないっすよ」との二つ返事だったことだし。ちなみに同じチームに所属する長男は毎年参加しない。曰く「そこまでせんでもいい」。

チーム自体もどちらかというと楽しくボールと遊ぶがコンセプトなので、大体毎年合宿に参加する子どもは全体の半分くらいなのだ。サッカーもやるが、川で遊んだり流しそうめんをしたりとなかなかのんびりしたものだ。われわれの暮らす辺りには子どものサッカーチームが本当にたくさんあるので、皆自分のレベルや信条に合ったいろんなチームに所属している。

しかし生まれた時からべったりの次男がいないとなると寂しい長男である。つまらん、という雰囲気をそこはかとなく漂わせていて少し不憫だったので、おやつは好物のポップコーンにしてやることにした。

数日前に子らと買い物に出た時に、そっとカゴに追加されていたものだった。小さな薄い平たいパッケージのそれをお菓子バスケットから引っ張り出して、2人で外袋の裏側を熟読する。

まず、中身を引っ張り出す。3つに折り畳まれた紙の袋だ。それを開いて、レンジにくべて、500Wで3分、とな。バター味。

こんなんが、ほんとに、こーんなんになんのかな、と疑ってしまうが、信じてレンジにくべる。長男が丁寧に手のひらで伸ばしてから、そっと扉を閉めた。ボタンを押して、2人で固唾を飲んで見守る。

兄弟は、幼少のみぎりから、映画館で映画を観る時、必ずポップコーンを買う。私がそのように教えたのだ。でも私自身は、実は映画館でポップコーンを買ったことがない。『子猫物語』でも、『ドラえもん』でも、『ぼくらの七日間戦争』でも、買わなかった。高校生の時に友達と観に行った『タイタニック』でも。もっと大人になってからは珈琲やビールは飲むようになったけど、ポップコーンは買わなかった。

でも、なんとなくずっと「映画にはポップコーン」というステレオタイプの絵のようなものが自分の中にあって、それをさも自分の歴史の中の常識のように兄弟にドヤ顔で伝えたのだった。親の言葉は子どもの小さな世界に絶大な効力をもたらしながら降り積もる。映画とポップコーンは当然のようにセットとなり、その延長でポップコーン自体がおやつとして頻繁に登場することにもなった。フィクションの風景を現実に起こしたような気持ち。

ずっと不安になるほどぺっちゃんこだった袋は、1分を過ぎた頃に徐々に膨らみ始め、見る間にぱんぱんの紙袋になった。ほかほかのポップコーンを分け合って食べた。

本やなにかしらのコンテンツに変わって私の脳が潤います。