セレンディピティ性のあるclusterワールドを作ろうとしてみた話
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この記事は、Cluster Creator #1 Advent Calendar 2022 への投稿記事です。
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こちらのAdvent Calendar、昨日14日目の記事は
uMe店長 さんによる「難しく考えないメタバースイベント」 というものでした。
なにを隠そう私自身この記事を書きながら、いままさに上記の記事にて紹介されているイベントに参加中です。かつてコピーバンドで演奏したことのある曲が流れてきてテンションが天井突き抜けました。この勢いのまま、この記事も書きあげたい。
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今年もAdvent Calendarは盛況のようで、#2 も開催されています。
また例年通り、ユーザー企画による非公式アドカレも開催されています。
(こちらにも記事を投稿させていただきましたので一応宣伝。)
公式・非公式いずれも、多種多様な情報に溢れているので、タイトル一覧を流し見してみるだけでも面白いかもしれません。
ということで、記事に入ります。
挨拶
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改めまして、おはこんにちばんドラゴン。みっつです。
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気がつけばドラゴンとして過ごしているメタバース生活。
今年もいくつかワールドを制作しました。
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この記事では、
「セレンディピティ性のあるワールドを作ろうとしてみた話」
と題して、今年clusterにアップロードしたいくつかのワールドについての話をします。
序
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「セレンディピティ」という言葉をご存知でしょうか。
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ググらなくても大丈夫です。
以下にいくつか引っ張ってきました。
「セレンディピティ」
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私みっつがこの言葉に初めて実感を持って触れたのは大学院生の頃。
研究をしていると、当初の目的とは違うどころか全く意味不明な事象に出くわす事があります。
想定通りにいかない時に、それを無闇に失敗と決めつけず、その発見に何らかの価値を見出すこと。
そういう時に働く直感やそれを嗅ぎ分ける嗅覚、を表す単語として「セレンディピティ」という言葉を使っていました。
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実際にそのような体験から出てきた、当初の研究テーマと全く関係のない研究成果を文献として公表することもありましたし、それは極上の体験でした。
「セレンディピティ」を通して手に入れたものや経験は、特別な思い入れのある記憶としてその後の人生においても、とても大切な宝物のようなものになると感じています。
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少し時は流れて2022年。
最近ではこの「セレンディピティ」という言葉が、たとえばAmazonやNetflix、YouTubeなどで日々みなさんも触れているであろう、おすすめ機能 (レコメンド, 推薦) を開発する中でも使われているということを知りました。
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例えば
「セレンディピティのある推薦は楽しい」(https://www.kamishima.net/archive/recsys.pdf より)
というような説明のされ方をします。
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何かをオススメされる時に「意外性」というのはとっても重要な要素なんですよ。といった感じのニュアンスだと思っていただいていいと思います。
そういう「意外性」を伴った、思いもよらない出会いの体験を生む要素を、セレンディピティという言葉で広義に表現しましょうね という感じです。
好きなものばかり、偏ったオススメだけがなされる状態のことを「推薦の墓場」と表現することもあるみたいです。
個人的にはあまり来てほしくない未来です。
(興味のある方は「セレンディピティ 機械学習」とか「推薦システム」とかでググってください)
仮想空間と偶然性
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私みっつは個人的に、clusterをはじめとするメタバース / 仮想世界に作られる空間やイベントその他コンテンツについて、この「思いもよらない出会いの体験」というのが非常に重要な要素の一つであると考えています。
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現実世界で散歩をすると、何か発見があります。
見知らぬ土地を歩いた時には、その気づきの数はひとしおでしょう。
「面白そうな路地を見つけて、入ってみると、意味不明な像が建っている公園を見つけた」とか。
見知ったいつもの近所の公園でさえ、昨日と今日ではきっと違う様子であるはずです。明日はまた別の景色を見ることができるでしょう。
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こうした些細な変化や、偶然性。
面白いですよね。
自分の周囲に降り掛かった偶然と、それを見つけられた喜び。
それ自体は小さなことでも、数年経っても忘れられないようなものもあります。
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この要素を、仮想世界ではなかなか表現するのが難しい。
「これは誰かが意図して作ったものだ」という意識がどこかで働いてしまっていて、なかなか「意外性」を演出するのは難しいな、と感じます。
というより、何を見ても「これは演出だ」と感じてしまいがちです。
(実は現実世界でも、道や建物など大抵のものは誰かが設計しているはずなんですけどね)
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一方
「入室した時には、こんな景色が見れるとは思わなかった!」
「え、これとこれをかけ合わせちゃうの!?そんな組み合わせがあったなんて!」
「こんな演出が起こるとは想像以上だった!」
「まさかこんな展開になるなんて!」
「あそこに置いてあったアレは、結局何だったんだろう・・・」
というような、強制的に予想外の感情の動きを起こされるようなハイインパクトなものや、そこで過ごした時間は、数あるメタバース体験の中でも皆さんの記憶に強く残っているのではないでしょうか。
そうした純度の高い意外性、思いもよらない何かを発見する要素が、優れたものにはしっかり組み込まれていると感じています。
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もう少しこの話を続けますが、現実世界でも仮想世界でも全く変わらず意外性を生みうる要素もあると思っています。
他者との関わりです。
人との出会いや、そこで生まれる会話。話す内容そのものや、そこで生じる自分自身の心の機微。
これらすべて、事前に予想できるものではありません。
現状メタバースでは人がいるところに人が集まる。
よく言われるこのような現象が起こるのは、人との関わりが「何が起こるか分からない」の最たるものの一つであるからではないかと、みっつは考えています。
逆に人の集まらない一部のものについては「設計されたもの感」が過ぎているのではないかとも。
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と、
いうような思案に一人静かに暮れながら、かれこれ数年間この世界で生活をしてきました。(この話を真面目に公開するのは初めてだと思います)
要するに私みっつは「偶然性」というものにとても興味があるのだと、ちょうど一年前くらいから気が付いてきていました。
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ここまでが前置きです。長くなりました。
「思いもよらない出会いの体験」を目指してワールド制作
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そのようなことを考えながら試行錯誤していた結果として、今年出来上がったのが、下記の 3 つのワールドです。
①【ワールド紹介AIのルポ】 RUPO ~Bridge you to the world~
② ●WORLD IN MY HEAD / ○ワールドインマイヘッド
③ $.星になった君たちは
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ざっくりと紹介すると、
①と②は、自分がいま行ってみたいと思っているワールドをオススメしてくれる場所
③は、自分のあるべき姿を"来世"として診断してくれる場所
です。
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①と②については、あまり複雑なアルゴリズムではないものの、事前に仲間と手動で集めたワールドのデータベースを使って、機械学習で作成した分類モデルをもとにして作られています。
ワールド内の各所で自らが選択した内容をもとにして、おすすめのワールドを提示してくれるというものです。
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③については、予測モデルなどを用いているわけではなく、単純にワールド内での行動にひも付いたフラグやスコアをもとにして、フローチャートのように、結果が変わっていくというものです。ルールベースの分類という表現の方が伝わる方もいるかもしれません。
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一応書いてみましたが、ぶっちゃけ中身はどうでもいいです。
それよりも、まだ遊んでみていない方は、ぜひワールドを訪れてみてほしいと思います。
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私の制作力の不足している拙い部分は大いにあると思いますが、どうでしょう。
それなりに「思いもよらない出会いの体験」をすることができたのではないでしょうか。
そうであったら嬉しいです。
作るからには、そうした面白みのある印象的な時間を過ごしてもらえるものにしたいという思いがありました。
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以下に、その過程で考えていたことをいくつか書いていきます。
セレンディピティをどう作ろうとしたかについてです。
どのように意外性を作り出すかを考えました。
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①②では、知らなかったワールド(そして願わくは自分の求めていたワールドとはほんの少しだけ違うけど、好みのワールド)と、
③では、全く想像のつかなかった自分のなりうる姿と、
出会えるようにと思って制作しました。
(ちなみに③については、現在進行形で来世の診断 ⇒ オススメのアバターの診断 に変容中です。お楽しみに。)
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①②の予測モデルでは、その精度を追求しすぎないことを考えました。
100% 自分が求めているワールドがオススメされるのであれば、ワールド検索機能でキーワードを入力すればいいのです。
少しだけ、予想通りじゃない要素の含まれたワールドを見つけられることにこそ価値があるし、どこかでそういう結果が求められているのです。
若干精度が悪いことで、たまにちょっと予測を外してしまう、それはすなわち意外性のある結果に他なりません。
そしてそのエラーもまたカワイイキャラクターの為すことである、というのは実は「予測が外れている」ということ自体のもつ悪印象を軽減するための設計でもあります。
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③については「何やら分からんが、自分の結果はこれなんだ」という受け取り方をしてもらえるように、複数の変数・複雑なルールで結果を返すことに加えて、どういう変数を取り扱っているのかさえも説明しない、という設計をとりました。
どの行動がどのように結果に結びついているのかを、直感では理解できない程度に複雑して、遊ぶ側の目線からするとほとんどブラックボックスになってしまうように設計することで、得られる結果はより意外性が強調されたものになるのではないかと考えました。
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このようにして、
自分が行くとよい場所や、自分がなるとよい姿を提示してくれるワールドを作り、それぞれの結果に「意外性」の要素が含まれるような内部的なデザインを行いました。
ワールドの制作後
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実際にワールドとして投稿してみて、
「こんなワールド知らなかった」とか「こんなところをオススメされたから行ってみた」といった感想の声や、「自分の来世はこれなのか!」というような(半ば疑問を持ったような)驚きの様子などを垣間見ることができました。
遊んでくださった方は本当にありがとうございました。
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100% 狙い通りだったとは言えないが、作りながら想像していた以上に効果的だった部分も見えてきたような気がする、というのが率直な感想です。
実際に作ってみることで得られる情報や、感じることはとても多いです。
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効果的だった部分についてここから触れますが、キーワードは「主体性」です。
今回作ったワールドはいずれも、遊ぶ人自身の「選ぶ」という行為をもとにして結果が渡されます。
この、その時の気分や思い付き、インスピレーションをもとにして、主体的に選択しているという自覚が、意外な結果を得たときの印象をより強烈にしているのではないかと考えています。
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おそらくこれがたとえば「アバターの身長は」とか「最後に訪れたワールドは」とかそういった、事実ベースのことを回答することで結果が得られるという体験であった場合、その印象は若干薄いものになってしまうのではないかと考えています。
「へぇ~、そうなんだね」とか「うんうんやっぱりね」程度のものになるのではないかと感じています。
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まだうまく言葉にできていない部分もあり、また既存のストーリーテリングやゲームデザインの手法との差別性を明確にできていない部分もあるのですが、
「遊ぶ人自身が主体的に、何が起こるか分からないところに飛び込む、それにより意外性を伴った結果が返される」
という流れをデザインすることは、ワールドづくりにおいて、面白く、強烈な体験を作るためのヒントになるのではないかと考えているところです。
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さらに加えるのであれば、その選択を行う場所が3Dの空間であることや、選択の結果によって動的に自分のいる空間に変化を生じさせるということも、体験をより強化する一助となっていたと思います。さらに特にVRで訪れた場合は、その情報量や身体性も相まって、より強烈なものになる実感もありました。
特にワールドの推薦については、チャットボットやweb形式、つまり2D平面的な表現手法で行うことも考えてはいたのですが、おそらくその場合はここまでの体験価値には達しないのではないかと予想しています。
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作ってから改めて思ったこととしては、こんな感じです。
結
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あまりきれいにまとめられず、そして何かしらの結論を導き出せたわけでもないので、ちょっと自分でもがっかりしていますが、トピックとしては書きたかったことを書ききることができました!
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単なるハブでなく、推薦機能を持ったワールドはまだclusterの中には少ないと感じていますが、Script機能の実装は行幸です。
もっともっと性能のいい、幅広いオススメ機能をもったワールドが作れるようになったと感じています。自分のワールドもより簡単に拡張できるようになったなと感じているので、アップデートせねば、と思っています。
オススメ機能や、近しい機能をもったワールド・そこでの体験を作るにあたって、結果をいかに印象的なものとして受け取ってもらうのかは重要です。
その手掛かりとして、セレンディピティという要素のことを考える選択肢を持ってくれる方が増えたら、これからもっと面白くなりそうだな、と思いこの記事を書きました。普段、あまり自分の考えていることを公に晒すことは避けたいと思ってしまうのですが、ちょっと頑張りました。
ここまで長々と読んでくださった方はありがとうございました。
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最後に少し。
「セレンディピティ」を通して手に入れたものや経験は、特別な思い入れのある記憶としてその後の人生においても、とても大切な宝物のようなものになる。
そのようなものやことを、自分が作った制作物を介して持って帰ってくれる人が一人でもいたとしたら、幸せだなと思います。
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個人的な興味の範囲でも、このような設計を突き詰めていくことにとても面白みを感じていますし、反面まだまだ未熟な部分をたくさん自覚する毎日で、精進精進、と思いながら日々打ちひしがれていたりします。
似たようなことを考えている方がいたら、ぜひお気軽に話しかけてください。
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注釈としては、
まだまだ考え半ばなので、数か月後には全く別の意見で話しているかもしれないので、その点はご了承いただけますと幸いです。
以上。