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『閉店事件』感想 〜インディーズホラーの真の価値〜

皆様こんにちは。橘ミツヤでございます。
先日配信にてChilla's Art様シリーズの最新作『閉店事件』をやらせていただいたのでその感想やらを交えながら、インディーズホラーについて語っていきたいと思います。

「粗い」は「怖い」 今、あえて時代を遡るホラーゲーム界

怖さを演出する2つの「粗さ」

皆様はホラーゲームをプレイしていて、どんな時に怖さを感じますか?
僕は「無力感を感じるとき」です。これはとても重要で、なぜかというと、もしキャラクターを快適に動かせれば、恐ろしい敵に対して戦う術があれば、僕のようなゲーム好きは「ホラー×ゲーム」の「ゲーム」の要素に集中してしまうから。つまり「恐怖に怯える探索者」から「クリアを目指して試行錯誤をするゲーマー」へとスイッチしてしまうのですよ。僕はお化け屋敷やホラー映画が大の苦手ですが、ホラーゲームなら何とかなってしまうのはこの要素が大きいからに思えます👻

その点Chilla's Artシリーズはその心配がありません。良い意味でとても操作感が悪い!不親切!(←超褒めてます)
このゲーム性の粗さが、プレイヤーの「ゲーマー」としての機能を麻痺らせるのです⚡

それともう一つ、「ゲーム性の粗さ」に加えて、「画質の粗さ」も恐怖感を煽ります。粗めのテクスチャって本当に不気味な感じがしてきつい。
初代バイオやクロックタワーとかの昔の名作ホラーの何が怖いってやっぱりこのあたりだと思うの。アホみたいに操作性が悪くて不自由なところに、あの時代の暗いテクスチャが重なってくる。もう耐えられぬ(´;ω;`)
そういえば今作『閉店事件』のエンドの一つに明らかにクロックタワーのリスペクトが詰まったものがありましたね。

車で脱出成功、と思いきや殺人鬼がその中で待ち伏せしていて…というバッドエンドは当時の大量のプレイヤーにトラウマを植え付けたとか。

狂気を孕んだ人間のリアルを描いた今作『閉店事件』


今作『閉店事件』も、カフェ店員として例に漏れず独特の雰囲気の中でストーリーが進んでいきます。
特に今回は、恐怖の心霊現象というより、ストーカーに迫られる女性のじめっとしたリアルな恐怖感を追体験していく感じでしたね!
途中黒いお客様のラテラッシュのような怪奇現象(?)のようなものに見舞われた気もしなくもないですが、あれはストーカー被害によって精神的に追い詰められていた主人公の状態のメタファーか単純に幻覚のようなものかなと私なりには当時考えてしまったので…

Chilla's Art様の作品としてはサイコロジカルホラーとサバイバルホラーの2パターンがあることはファミ通のインタビュー記事で語られています。
今回は前者の方でしたね。

その中でもいつも通り、インディーズ的な予算感の中で工夫の凝った演出が光ってました✨

クライマックス、トイレから脱出を図る主人公。減りの遅いゲージと扉を叩く音が恐怖感をドンドコ鳴らします😨

ただ、その分全体的な恐怖感は今回は割と抑え目だったように思います。

  • カフェという環境が割と広くて明るめだったこと

  • カフェ業務の忙しさ

  • じわじわと来る恐怖コンセプトからか強烈なホラー演出が無かったこと

この辺りが要因だったでしょうか。
強いて個人的感想を述べるのであればカフェ業務ターンの長さがちょっと気になったかなというくらい。
おそらくコンセプト的に同系列になる過去作『夜勤事件』と比較して、単調な仕事と恐怖演出の少なさで少し作業感を感じてしまったかなぁという感じはある。
ただまあそれが逆に日常生活を蝕んでいくストーカーへの恐怖感を助長していると言われれば返す言葉もない…
この辺りはバランスの問題かな。

総じて今作はChilla's Artの新しい取り組みが見られた作品だったように思います!今後もより一層期待がかかりますね✨

破壊的イノベーションを巻き起こすインディーズホラー

ここまで言ってきたように人を恐怖させる為には「粗さ」も重要な役割を果たすのです。この特徴がインディーズホラーの存在意義を押し上げていると思います。

いくら技術が発展し、高画質で臨場感のある最新ホラーゲームが発売されても、Chilla's Artシリーズやツクール系のフリーホラーと言ったジャンルは寂れていきません。「リアル」と「粗さ」の差別化が上手く機能してる証拠ですね。

つまりホラーゲームは、演出次第で比較的低予算でウケるゲームを作りやすいジャンルと言えるのでは無いかと私は思うわけです。

「イノベーション」という言葉は聞いたことあるかと思います。いわゆる革新的発明という認識で大丈夫だと思いますが、その中でも「破壊的イノベーション」、つまり現状の改善ではなく全く新しい価値を生み出すものにインディーズホラーは分類されるのではないかと思います。
ほんでもって厳密には破壊的イノベーションの中でもさらに「ローエンド型破壊的イノベーション」に分類される…なんだかややこしくなってきましたね。簡単にいうと質を落として安くしちゃえってやつです。ダ○ソーとかユ○クロとか。
この質を落としてって部分がホラーゲームに関してはメリットにすらなりうる可能性があるってことなんです。そんでもって価格は安い。『閉店事件』もたった600円弱。そりゃまあ買いますよと。

もちろんリアル路線も負けてないです。最近だとバイオハザードvillage。橘ミツヤは絶対無理なのでやりませんがリアルすぎるグラと没入感がたまらなく怖いらしい。
どっちが上とかなく本当に差別化。2つのパターンでうまく棲み分けできてるねって話でした。

感想

さあ長々と語ってしまいましたが『閉店事件』、概ね期待を裏切らない面白さだったと思います。
カフェターンでぐだぐだしすぎて申し訳なかった…あのあたふた感も含めて楽しんでくれると嬉しいです。
見てない人は是非チェック!それでは皆様、おつおつおつ!

橘ミツヤ

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