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ブースカ

「ねえ、ブースカ、小説書けた?」
 と彼女は僕に言った。
「誰がブースカやねん?」
 と僕は答えた。

「だってあなたはシオシオのパーだからよ」
「何それ?」
「ブースカの口癖」
「そうじゃなくて、何でシオシオのパーなんだよ?」
「noteで小説書いててもさあ、あなたは塩対応で他の人の記事にコメントしないじゃない」
「ちゃんとスキしてるしさあ、それでいいじゃない」
「スキだけじゃ駄目なのよ。ちゃんとコメントして交流しないと」
「僕はアイドルじゃないし、交流とか握手会とかしたくないんだよね。僕がやるべきことは交流じゃなくて、いい作品を書くことなんだ。小説家は小説を書くのが仕事だから、小説の執筆に集中したいんだよ」
「作家だってちゃんと営業しないと本は売れないのよ。ちゃんと書店周りして、書店員さんと仲良くして、目立つ場所に本を並べてもらって、ポップとか書いてもらって、握手会とかサイン会をして読者とも交流を持たないと」
「本にサインしてサイン本売るだけじゃ駄目なの?」
「あんた何にも知らないのね。本はね、委託販売なのよ。売れなければ書店は本を返品できるのよ。だけどサインをしちゃったら、返品ができなくなっちゃうじゃない。だから書店はやすやすとサインなんかさせてくれないのよ」
「そっか。でもさ、そんなことばかりしていて小説が書けなかったら本末転倒だよね」
「でも本が売れなくて生活ができなくなったら本末転倒よね」
「う~ん、ぱるるになりたい! 塩対応でも売れたい!」
「ぱるるはかわいいから良いのよ。かわいいから許す、っていうことなのよ。あなたはかわいくないでしょう?」

 僕は困った。
 困って何も言えなかった。
 こんなとき、何て言えばいいのだろう?

「シオシオのパー!」
 僕は苦し紛れにそう言った。

「やっぱりあなたはブースカね」

おわり。

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