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君に、胸キュン

「イタリアの映画でも観てるようだね」
 と僕は彼女に言った。
「何それ。イタリア映画が好きなの?」
 と彼女は僕に問い返した。
「うん」

「イタリア映画ってどんなの?」
 彼女は素朴な疑問を僕に投げかけた。
「ニューシネマ・パラダイスとか」

「映画通が好きなやつね。何か聞いたことある。観たことないけど」
「それから昔はマカロニ・ウエスタンっていうのが流行ったんだ」
「何それ」
「イタリアで作られた西部劇だよ。そもそも西部劇ってアメリカの西部開拓時代の話なんだけど、それがなぜだかアメリカ以外でも作られているんだ。フロンティアスピリットとかぜんぜん関係なくなっちゃって、ただただスタイルだけを真似た娯楽映画だよ。特にイタリアで作られた映画は人気があって、スパゲッティ・ウエスタンとも言われたんだけど、スパゲッティよりも骨太のバイオレンス色が濃い内容だったからマカロニになったんだよ」

「ふうん」
「で、何がイタリア映画を観てるようなの?」
「それは比喩的表現っていうか」
「比喩?」
「夏目漱石がさ、「I love you」の意味を「月が綺麗ですね」って訳したんだよ。日本人は「愛してます」なんていう直接的な表現をしないから、「月が綺麗ですね」の方が思いが伝わるって」
「それってくりいむしちゅーの上田のたとえ突っ込みくらいに伝わらないと思うけど」
「そうだね。「あなたは綺麗ですね」の方がわかりやすい」
「うん。その方がうれしい」

「で?」
「だから、「君に胸キュン」ってこと」

「イタリア〜の、映画で〜も、観てるよう〜だね〜♪」

「愛してるって、簡単には言えないよ」

おわり。


「タイトルがネタバレじゃん!」
「古畑任三郎か!」
「例えがわかりにくいわ!」
「くりーむしちゅーの上田か!」

◎この小説は、Xでの投稿を元に作成されています。


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甘野充
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