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おいしそう

 僕の目の前で、彼女はおいしそうに朝食を食べる。
 幸せそうに朝食を食べる彼女は嬉しそうで、よく食べる彼女はちょっとぽっちゃりとしていて、かわいらしい。

「私、今とってもしあわせ。もう、死んでもいい」
 と彼女は言った。
 僕はその言葉が聞きたかった。

 僕は飼育家だ。
 人間を食料にしている宇宙人と契約をし、おいしい食料を育てている。
 僕は得意な料理で、宇宙人が好む味に仕上がるように、女にエサを作り、与える。
 宇宙人は、若くてぽっちゃりとした女性が好みだ。程よく肉がついていて、程よい脂肪がのっていて、柔らかい。
 僕はちょうどよく出来上がった彼女の仕上がりに、満足する。

 彼女の「死んでもいい」という言葉が、僕の救いだった。
「死んでもいい」って言ったよね、ごめんね。僕は政府に雇われているんだ。宇宙人が人間を乱獲しないように、ごちそうを作って提供する。それが僕の仕事なんだ。それによって多くの人間が守られているんだ。いつの時代にも生贄は存在する。これは仕方がないことなんだ。
 だけどもこの仕事を続けているうちに、僕は自分の感覚がすっかり麻痺してきていることに気がついている。

 昨日の夜、僕は彼女を抱いた。
 もうそろそろだと思った。
 僕は彼女をいただいた。
 柔らかくて、暖かくて、入れ心地が良くて、それはもう最高の味だった。

 おいしかった。
 そんな忘れられない夜を思い出しながら、おいしそうに朝食を食べる彼女を見ている。
 彼女は本当においしそうに朝食を食べる。
 できることなら毎朝そんな姿を見続けていたいという欲求にかられる。
 だけどもこれが最後だ。

 お肉も美味しそうだなあ、と思う。
 ああ、食べてしまいたい。

 おいしそう。

おわり。


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