大丈夫、マイフレンド
「大丈夫?」
僕は彼女に訊ねた。
「大丈夫じゃない」
彼女はそう答えた。
「大丈夫?」と訊かれたら「大丈夫」と答えるしか無いと言うけれど、彼女は違う。
「だって大丈夫じゃないんだもの」と彼女は言う。
美容院で「痒いところ無いですか?」と訊かれて「ここ」と答える人なのだ。
「僕にできる事ある?」
と僕は訊ねた。
「ない」
彼女はきっぱりと答えた。
「そっか、じゃあ何か助けが必要だったら僕に言ってね。辛いことがあったらさ、叫べばいい。ジョン・レノンみたいにね」
「叫べば助けてくれるの?」
「僕にできることがあればね」
「何ができるの?」
「歌うこと」
僕は「Till there was you」を歌った。
「お腹すいた」
と彼女が言った。
「じゃあ食事をしよう。僕が奢るよ。僕ができることは、そのくらいだ」
「ありがとう。そのくらいがうれしい」
彼女はそう言って微笑んだ。
おわり。
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