第23回読書会 「心理的安全性のつくり方」石井遼介

第23回読書会で、石井遼介著「心理的安全性のつくり方」を取り上げました。心理的安全性はここ最近ビジネスの現場において頻出の用語であり、主に組織マネジメントにおいて使われることの多いものです。

成果を上げ続ける組織とは、どのような特徴があるのか?

Googleの社内調査チームが社内外の組織を調査したところ、成果を上げ続ける組織には共通点があることがわかりました。それこそが、「心理的安全性」が高いというものでした。
この言葉を定義したエドモンドソンは、「チームの他のメンバーが自分の発言を拒絶したり、罰したりしないと確信できる状態」としています。心理的安全性の重要性を指摘する事例として有名なものはスペースシャトル・チャレンジャー号の重大事故に関するものです。大事故の原因とされたのは断熱材とされていますが、実は断熱材の損傷は打ち上げ前にエンジニアによって察知されていました。彼は上司に報告したものの、その後の会議で断熱材の損傷は報告されず、そのまま打ち上げられたチャレンジャー号は大爆発を起こし、乗車していた宇宙飛行士全員が亡くなりました。その後の調査で、なぜ断熱材の損傷が報告されなかったのかを関係者に聞いたところ、「上司に意見するなど考えられなかった。私の立場は組織の中で最も低いものだったから」という反応でした。ここから、当時のNASAにおける組織内の問題が指摘され、心理的安全性の低い組織は時に重大な結果を招くこともわかってきました。
組織内における心理的安全性を保つことは経営戦略上重要なことであるのです。
本書では、特に日本の組織における心理的安全性を4つの因子に分け、①話しやすや、②助け合い、③挑戦、④新奇歓迎としています。
心理的安全性の高い職場は時として「ヌルい職場」との指摘もあります。石井は仕事の基準と心理的安全性の高低から4つのマトリクスに分け、仕事の基準も心理的安全性も低い職場を①寒い職場、仕事の基準は高いが心理的安全性が低い職場を②きつい職場、仕事の基準は低いが心理的安全性の高い職場を③ヌルい職場、仕事の基準、心理的安全性ともに高い職場を④学習する職場としています。組織として目指すべきものは④であるとされますが、日本型組織においてその実現は容易ではなさそうです。
読書会においては、ケアやwell-beingの視点から心理的安全性の可能性や応用などについて意見が出されました。一方で、心理的安全性が資本主義システムに組み込まれた企業活動の中に取り込まれることで、資本主義システムの再生産につながる可能性についても指摘されました。また企業の規模によっても心理的安全性への取り組みや意識には格差があり、小規模な事業体やインフラ系など社会生活や社会活動を支える領域の組織にこそ心理的安全性は必要なのではないかとの意見も出されました。
他にSNSや学校現場における心理的安全性についても必要ではないか、との指摘もありました。

人が人らしく、自分らしくあることが保障される空間、関係性は基本的人権の一つではないでしょうか。今の日本社会は心理的安全性の低いものであると言わざるを得ません。
心理的安全性は企業組織だけでなく、広く社会一般において展開される概念・思想であることを整理できたと思います。


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