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句集を鑑賞しましたシリーズ! 句集「伊吹嶺」(朝妻力、角川書店)

俳句をはじめてもうすぐ2年になろうとしています。
最初は、本を読んだりインターネットを通じて投句したりしていましたが、本格的に俳句を学びたいと思って、色々探したところ私が住んでいる茨木市に主宰がお住まいになっている俳句結社「雲の峰」がありました。
「雲の峰」は、”学習する結社”を掲げていて、文語・旧仮名で写生俳句を大切にしているので、ここで勉強しようと入会させていただきました。
何ごとも”守破離”が大切だと思っているので、まずは、基本に忠実に3年間はみっちり勉強しようと頑張ってます。
「雲の峰」主宰の朝妻先生の句集「伊吹嶺」より好きな句を鑑賞します。

桜桃の百顆に百の雨雫

この句集の中で一番好きな句です。
さくらんぼの百のつぶそれぞれに雨のしずくが付いている景色です。
それがどうしたのと言ってしまえばそれまでなのですが…。
把握の仕方、切り取り方、言葉の選び方でその景色と余情を表現することが写生俳句の醍醐味なのだと思います。(ほんまか!?初心者が偉そうにって自分で自分に突っ込んでしまいますが💦)
それぞれの雨粒によって、さくらんぼがとても輝いていて、さくらんぼが喜んでいる感じがとても好きです。

写生俳句って、ほんで、それがどうしたん?という感じになりやすいので本当に難しいですね。

鶏に野飼ひの誇り冬日燦

野に飼われている鶏にも誇りがある。その様を詠んだ句です。鶏の誇りと冬日が燦々と降り注いでいる感じがとてもマッチしています。
冬の寒い感じの日差しと野飼いの鶏ととても合っているように思います。
俳句は、つかずはなれず、不即不離の距離感が大切だと言われますが、見事な距離感だと感じます。

いくたびも題簽を見る秋灯下

朝妻先生の師匠である皆川盤水先生より、結社誌に掲載する用の題簽(だいせん)が届いた時の句だということです。
師から弟子へつながって行くって尊いことだと、しみじみ思います。
秋の灯火の下で題簽を何度もなんども見返している姿が感動的です。

一渓をへだて寒禽応えへあふ

山の谷を隔てて鳥が鳴き合うという大きな景が素敵やなあって思います。
冬の山ですから少し寂しい感じも漂う中、鳥たちは何を語りあっているのでしょうか。

ばつたんこまた山水を受け始む

山に響くカッコーンという音が聞こえてきます。そしてまた、水を受け始める。定期的に山に響く音が心地よいですね。

二日目の色となりたり鰤大根

この鰤大根を食べたいです!
特にこの大根に辛口の日本酒を合わせたいですねぇ。

川なりに鯖の街道風光る

茨木市でもかっては、鯖を山に運んでいたと聞いたことがあります。
山の道路は、バイパスとして整備されかっての街道は影を潜めてしまっていますが、そこに風が光るというのは往時をしのぶ心地良い景色だと感じました。

転げ来しボール起点に冬日影

子供達が遊んでいたボールでしょうか。作者の前に転がってきたボール。ゆっくりと止まったボールを起点にしてそのボールの影が伸びている景色。
冬の日の少し寂しい感じと寒さをもろともせず遊んでいる子供達の元気さの感じがとても良いですね。

転けし子の砂払ふ子よ黄水仙

お姉ちゃんと妹を想像しました。黄水仙が優しい感じでとても良く効いていると思います。

霜の夜の膝送りせる通夜の席

最近は、ホールなど椅子席が多いですが、ご自宅の畳の間での通夜の景です。霜がおりるほどの寒い夜の通夜、膝を送る姿に寂しさが募ります。

蚊遣火の灰となりゆく逮夜かな

逮夜とは、お葬式の前の晩のことですってね。はじめて知りました!
俳句をしていると知らない単語が出てきて、こんなにも言葉を知らなかったんやと愕然としることばかりです。
蚊取り線香を焚いて、ろうそくと線香を絶やさぬ様に番をしている風景を思い浮かべます。
死者との会話が弾んでいることでしょうね。

側溝を潮さかのぼる島の秋

側溝に海水が流れ込んできている。満潮時なんでしょうが、この景からとても小さい島を想像します。
その島の秋の景色…。山の紅葉も感じることができます。小さな島の海と山の秋の景色を同時に感じさせてくれる秀逸な句だと思います。


句集の中のその他の好きな俳句

神留守のひとつぐらつく石畳

浦風や釣瓶落しの古戦場

柊を低く咲かせて悉皆屋

身より濃き影水底に目高群る

秋深しパンダは毬のごと眠り

つつましき巣を丹念に蜂二匹

秋近き風や龍図の下に座し

日の濃さに陣まとまらぬ春の鴨

水あれば水覗きこみ野に遊ぶ

春の風子を呼ぶ子らの声揃ふ

大凶を引くこんな夜は根深汁

囀や樹下に野饗の茣蓙を敷く

谷あれば村村あれば遅桜

葉桜やどこかに鉽力叩く音

磐すべりきて秋水となりゆけり

かなかなや武蔵が初の決闘地

散りしことを直ぐに忘れて目高群る

秋風や伊吹嶺に聞く師の訃報

バス停もトイレも仮説村芝居

十二月一日や雲眩しくて

無慈悲とは慈悲のはじまり年惜しむ

球蹴る子縄を回す子日脚伸ぶ

水張りし夜をいつせいに夏蛙


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