見出し画像

句集を鑑賞しましたシリーズ! 細身綾子集(発行:俳人協会)を読んで刺激をもらいました〜!

現在、私がお世話になっている俳句結社「雲の峰」の朝妻力主宰の師匠である皆川盤水(みながわばんすい)先生の師匠が沢木欣一(さわききんいち)先生です。
沢木欣一先生の妻が細見綾子先生ということで、私からすると師系にあたる方ということで勝手に親近感を持っています。

とても感性を揺さぶられる句が多くて好きな俳人の一人です。

もぎたての白桃全面にて息す

この句集の中で一番好きな句です。
読んだ瞬間にドキッとしました。”全面にて息す”という言葉で白桃の小さい毛が思い浮かび、触覚もあって、白桃自身がまだ命を繋ごうと全身で息をしているその細やかな呼吸までもが聞こえてきそうです。
めちゃくちゃ繊細な一句です。

門を出て五十歩月に近づけり

月があまりにも綺麗だから、その 月に触れてみたいと思ったことはあるが・・・。
てくてく歩いて50歩近づいたという感性は、繊細で凄いと思った。50歩だけと近くに寄った月が綺麗だと感じれるその繊細さを見習いたいです。

螢火の明滅滅の深かりき

ホタルの光の滅に焦点を当てて、それが深いと詠み切ったことで逆に明の部分の綺麗さも感じさせてくれる。
滅の深さと明の明るさの濃淡を17音の言葉の器に容れることが出来るなんて驚きです。

うすものを着て雲の行くたのしさよ

私は、年がら年中着物を着ていますので、夏はうすものを着ます。
夏に着物を着ていると、「暑そうですね」とか言われるのですが、風を通してくれるので暑くないんです。麻の襦袢に越中褌を履いてうすものを着ると最強に涼しいです。是非お試しあれ!
この句は、自分自身の実感にもとてもマッチして好きな句です。
雲と一緒にウキウキとお出かけする感じが夏の暑さを吹っ飛ばしてくれます。

チューリップ喜びだけを持つてゐる

チューリップって喜びだけで咲いてそうって妙に納得感があるのですが、チューリップに「細見綾子さんがこんな句詠んでたよ!」って教えてあげたいです。ほんで、チューリップの感想を聞きたいです(笑)
「喜びだけじゃなくて、悲しみもあるよ!」なんて返ってきたら楽しいなあなんて思ったり。
チューリップと会話ができそうで楽しいです。

葉桜の下帰り来て魚に塩

葉桜の中を帰ってきて晩御飯の焼き魚に塩をふっている日常の一コマなのだと思いますが、葉桜と魚に塩をふる感じが何ともいい感じで響き合っているように思います。

冬来れば大根を煮るたのしさあり

冬に大根を煮ることのたのしさを詠んだ句ですが、”あり”とピシッと言い切っているのですが、字余りのところで少し余白の柔らかみができて、何とも言えない絶妙な楽しい感覚を醸し出しているように感じます。
作者がたのしく煮た大根を食べてみたい!


その他のいいなあと感じた句

百里来し人の如くに清水見る
孤独なれば浮草浮くを見にいづる
きさらぎが眉のあたりに来る如し
夏帯の単色は我が性となり
まぶた重き仏を見たり深き春
鶏頭を三尺離れもの思ふ
くれなゐの色を見てゐる寒さかな
白蝶々飛び去り何か失ひし
青りんごたゞ一個買ふ美しく
硝子器を清潔にしてさくら時
山茶花は咲く花よりも散つてゐる
紙漉くや雪の無言の伝はりて
蕗の薹喰べる空気を汚さずに
餅のかびけづりをり大切な時間
虹飛んで来たるかといふ合歓の花
木蓮のため無傷なる空となる
延年の舞終るこれにて春終る
谷へちる花のひとひらづつ夕日
青梅をひいふうみいと数へたる
かきつばた紫を解き放ちゐし
玉虫の瑠璃色きよき寒さかな
どんぐりが一つ落ちたり一つの音
黒揚羽水辺の石で息したり
朴落葉少しの風に遠く飛ぶ
句碑の背に白山茶花の白静か
今は散るだけの紅葉に来り会ふ
再びは生れ来ぬ世か冬銀河
赤いすもも青いすももと並べたる
吾亦紅ぽつんぽつんと気ままなる

脚註名句シリーズⅡー13 細見綾子集 棚山波朗編(発行所 俳人協会)

私が所属する結社「雲の峰」のホームページです。

結社は怖いなあという方も多いと思いますが、うちの結社は優しく指導してくれるので初心者にオススメです。
俳誌をお送りすることもできますので、興味のある方はお声がけ下さいませ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?