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いいから食わせろ

いつ頃からだったか、池袋西口近辺を夜遅い時間に歩いていると、いきなり声をかけてきて果物を買ってくれと行商してくるチャラいお兄さんによく出くわしていた。
私はあまり果物を食べないので迷惑この上無いのだが、振り払うのが面倒で仕方なく少しだけ買ってあげたりしていた。

先日も例によって出くわしたのだが、買ってくれと出してきたのは果物では無くとうもろこしだった。
生で食えるマジ最高の奴なんすよ〜といつも通りチャラチャラ売りつけてきたのだが、よくある生食可能な白いとうもろこしではなく、薄黄色いインチキ臭い物だった。
急いでいたのでとにかく追っ払いたくて、胡散臭いとうもろこしに300円かよと舌打ちしながら3本だけ買った。

で、帰ってから食べてみたのだがそのまま一口かじった瞬間、今迄食べたとうもろこしでは全く未体験な芳醇な甘さに卒倒しそうになった。
感動の余り服を着替えるのも忘れて一気に3本完食した。
前述の通りあまり果物を食べないのでチャラ男から仕方なく買った果物は全て会社に持って行って事務のおばちゃんにあげていたのだが、とにかく美味しいといつも言っていたのを思い出した。
どうやらあのチャラい兄ちゃんは然るべき農家から仕入れているのかもしくは自分で畑でもやってるのか。

とうもろこしがあまりにも美味しかったので、池袋で物件が発生した際は空き時間の度にあのお兄さんがよく行商している広場に出向いてみたのだが、とうもろこしの夜以来顔を見かける事がなくなってしまった。
どうしてもまた食べたかったので情報を得るべく、いつもその広場で屯している池袋ウエストゲートパークやデュラララに出てくるようなカラーギャングの成れの果てみたいなガラの悪いお兄さん達に何か知らないか尋ねてみたが、自分達はいつもこの広場にいるけどそんな奴聞いた事もないというあまりにも残念な回答に加え、そう言えばカラーギャングが活発だった当時の抗争で死んだ若いギャングに果物屋の息子がいたという安っぽい怪談紛いのオチという顛末。

幽霊でもなんでもいいからあのとうもろこしまた売ってほしいヽ(;▽;)ノ

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