笑わないこと

数年前、私は会社の寮に暮らしており、同じ寮にいる同期の子と仲が良かった。

ある日、同期が訪ねてきて、「布団を干してたら雨が降ってびしょ濡れで寝られなくなったから泊めてほしい」と言った。唯一の布団をだめにしてしまったら相当困ってるじゃん!と思った私は、「大変じゃん!災難だったね、いいよいいよ泊まってって〜」と返した。

それは特に恩を売るつもりもなかったし当然の行いだと思ったけど、そうではなかったらしい。

もう一人寮には同期がいるのだが、その子に話したときは大笑いされて、本気で困っていたのにその態度だったからショックを受けたのだという。

私の共感力が高い方だったのか、それとももう一人の同期が無神経すぎただけなのか分からないが、布団を濡らしてしまって途方に暮れている同期にとって私は感謝するべき存在だったらしい。

共感力がない人や相手を気にせず思ったことをそのまま言う人を優しくないと表現してしまうのもいささか暴力的であり正しくはないだろう。しかし、人を思いやらないということは当然人を傷つける危険性が高い。

優しい人が損をしがちな世の中。何十年も生きていると辟易して気ままに生きる人を羨んでしまうかもしれないが、人の助けになり人に愛される人間であることを今はまだ誇りに思っていたい。

そしてできるなら、自分ならこんなこと言わないのに酷い!と憤慨してしまうような場面でスルーできる強さも身につけたいところである。強くて優しいのは大変難しきこと…。

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