大河原真青句集『無音の火』一句鑑賞と十句選
黙禱のまなうら星の流れけり 大河原真青
黙禱は、静止。
黙禱は、無音。
黙禱は、暗闇。
黙禱の「無」を横切る、一筋の流星。
流れ星が流れて消える前に願い事をすると叶うという。
黙禱は、願いではなく、祈り。
祈りは、届くか。
祈りは、祈る行為そのものに尊さがあるのだろう。
行為の純粋さが生んだ、一瞬の流れ星なのかもしれない。
作者は、3.11の被災地、福島の俳人である。
空蟬をあふれてけふの波の音
坑道を転げるトロや草の花
湯気立てて泥のスクラム崩れけり
泥靴の先より花野ひろがれり
冬草を踏んでいのちが熱くなる
風葬の原発建屋初景色
霜ふかく貝殻骨の鳴る夜かな
七種や膨らみやまぬ銀河系
架空の町架空の橋を金魚売
虹の声聴いてゐるなりあめふらし
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