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長野癒しの旅〜中編

4:30に目が覚める。外は明るくなってくる頃。
二重窓を開けると、ひんやりした空気と、鳥の囀りが部屋に入ってきた。


今回の旅の目的は、自分を癒すことと解放すること。


6時前になると日差しが強くなり、部屋の中が暑くなってきた。ためしに網戸を開けて手を伸ばしてみたら、空気はまだ涼やかだった。

早めに1階に降りようかと部屋を出たところで、2階の隅に本棚があるのに気づいた。
たくさんの本がランダムに並んでいた。
本から得られるものは多い。
小学生の頃、図書館に通い詰めたことを思い出す。

7時半近くになり、下に降りると、テラス席に案内された。目の前に黒姫山がそびえ、庭の緑や蕎麦畑が見渡せる、とんでもなく贅沢な景色だった。
黒糖のシソジュース、サラダの野菜、ラフランスのジャム、フルーツとカスピ海ヨーグルト、何もかも美味しかった。
ゆで卵の上にかかったシーザー風ソースにとうもろこしが入っているのも嬉しい。

朝食後、場所を移動して反対側の壁にぶら下がっている部屋の主に挨拶して出た。
りんごのジャムをひとつ買った。


オーナーさんの車で、見晴らしの良い場所に連れて行ってもらった。写真を撮るのにドアを開けて外に出たら、草の匂いが鼻中に広がった。懐かしいような匂いだった。オーナーさんが好きな場所で、たまに来るといつまでもぼーっとできちゃうんだって。
本当に、最高の場所だ。


二重窓でしたね、と話した。冬はマイナス18℃くらいになると聞き驚く。3メートルくらい雪が積もって、全く違う景色らしい。今の季節の姿からは想像もつかない。綺麗ですよ、汚れた部分も全部隠すからね、と笑いながら話す。
地元人もあまり通らないという細い森の中の道を走る。森の中に別荘が点々と現れる。持ち主が高齢になって使われていないものも多いみたい。

もろこし街道へ入る道路は工事中で通行止めだったので、逆から車を走らせてくれた。昔は通り沿いに十数軒の店が並んでいたけど、今は四、五軒らしい。小林農園という有名なお店の前を通ると、ものすごい行列ができていて、車がたくさん停まっていた。


ドライブは野尻湖が終点。全周約17kmの大きな湖で、ナウマンゾウの化石が発掘されている場所。
遊覧船に乗って、ナウマンゾウ博物館に行って、通ってきた道沿いにあったもろこしを食べて、歩いて道の駅しなのに行って買い物して、黒姫駅までは歩いても行けるしタクシー呼んでもいい、とおっしゃってくださった。せっかくなのでそのとおりにした。

遊覧船はちょうど出発直前。ラッキー!
湖の真ん中にある宇賀神社では20分ほど立ち寄ることができる。湖では釣りをしている人たちもいた。
船着場に戻ってくると食堂があり、ソフトクリームの文字が見えた。暑いしせっかくなので食べちゃう。ブルーベリーミックス、美味しい。
食べながら、ナウマンゾウ博物館へと向かう。
どんどん溶けて最後はシェイクみたいになった。それもそれで良かった。



黒姫駅から長野駅に向かう。
よく歩いた。野尻湖から道の駅しなの経由で黒姫駅まで。自分と同じように歩いてる人とは会わなかった。車で移動するのがふつうみたいで、横断歩道がないところもあって困った。車が来てない隙に車道を横断した時、野生動物になった気持ちだった。


黒姫駅で電車を待ちながらあらためて見たら、「信州信濃町 ようこそ森と湖のまちへ “癒しの森”失われた時間をとりもどす町」と書いてあった。
とうもろこしを求めて辿り着いたのは、図らずも癒しのまちだった。


道の駅しなのから駅に向かう道中、気づいたこと。やっぱり半分くらい、母の実家、祖父母の住んでいた高原地域と似ている。
私はそこで、赤ちゃんの頃からとうもろこしを食べたし、毎年お盆などに泊まっては家の周辺を散歩していた。他にすることがなくて退屈に感じた時もあったけど、それが自分をつくってきたんだなと思う。

今回、好きなものがある場所を選んでここまで来てみたら、自分を知る旅だったんだとわかった。
そして、それはたしかに、癒すことだった。


長野駅に到着。
長野市中心部から善光寺周辺は、本日、長野びんずるという代表的な夏祭りが開催されるようで、多くの人で賑わっていた。交通規制もしかれるそうだ。
思いがけず大イベントに出会すなんて、ラッキー!
ということで、写真や動画をたくさん撮った。
メインの踊りは見逃したけど、祭りの雰囲気は存分に感じられた。

善光寺は素晴らしかった。
牛に引かれてはないけど、私も導かれて来たんだと思わざるを得なかった。
昨年、七年に一度と云われるご開帳の時に、行ってみたかったのは叶わなかったけど、まさかのタイミングで来ることができた。
これも、とうもろこしのおかげ。


お祭りムードの中、長野駅まで歩いていたら、曇り空になり、ポツポツ雨が降り出した。
そして、あっという間にザーザー降りに変わってしまった。
失敗したーー、折りたたみ傘は駅のコインロッカーに預けた荷物の中だ。どうしよう。
とりあえず、メロンパン屋さんの軒先を借りて、しばらく通りを眺める。通りのお店の外国人のお兄さんと視線が合い、「すごい雨だね」と目で会話。
傘を持ってなくて、びしょびしょになりながら足早に通り過ぎる人もいっぱい。浴衣姿の女の子もいる。
そういえば、黒姫駅からも浴衣姿の女の子がひとり乗っていたっけ。

で、ウェザーニュースを見てみた。
新幹線の時間くらいまで雨は止まないようだった。ここで止むのを待つと間に合わないか、。と判断し、近くのコンビニまで走ることにした。
途中、また店の軒先とか借りれば何とか行けるかと思っていたけど、どこも人がひしめきあっていて、コンビニまでノンストップ。
コンビニに入ると、入ってすぐ雨具が置いてあり、店員さんが大量補充中だった。
すごいなー、この迅速な対応。在庫あるんだ、と思いつつ一本手にする。店内激混み。同じ傘仲間もたくさん。


傘を手にしたおかげで、祭りのアナウンスを聞きながら、無事、長野駅が見えてきました。
さて、新幹線の時間までは40分ほど。
と、目の前に、小木曽製粉所と書かれたお店。信州そばと地酒…美味しそう!店内には1組しかおらず、店員さんたちは暇そう。微妙な時間、どうする?
…迷ったなら入る、でしょ!ガラガラ…

ざるそば、日本酒、焼き味噌を頼んだ。
日本酒がグラスになみなみと注がれた。やばい。
お土産も見たいのに、これは20分そこらじゃ済まない。ゆっくり味わいたい。

すぐさま新幹線の時間変更に取り掛かり、1時間後にずらすことに成功!
蕎麦湯まで美味しくいただきました。


バタバタ荷物を取り出し、アップルパイを買ってホームにあがり、今東京に向かっています。
しかも、もうすぐ上野というとこまで来てます。

両足の踵、靴擦れしてる。
信濃町を歩いてる時から、気づいてたけどさ。
日中、汗びっしょりで、パンパンに膨らんだカゴバッグに、デニムの色がちょっと移ってるし。

それにしても、1時間半くらいか。新幹線、速いな。
今日はよく歩いた。19,000歩くらい。
炎天下の信濃ロードはきつかったな。
でも、ブルーベリーミックスソフトととうもろこしと林檎ジュースと綺麗な空や木々の緑のおかげで乗り切れた。あと、大事なのは気持ちだと思った。


まもなく終点、東京です。

東京やっぱ、めちゃくちゃ都会。
宿のオーナーの息子さんは、東京に住んでるけど月1で帰ってくるらしい。

さて、浜松町へ向かいますか。

…JR東海に乗り換えようとしてしまった。
やっぱり、ややこしすぎて迷う。

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