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記憶が薄れてしまう前に 3

まず点滴を足に、そして起き上がることは許されずトイレに行けないので管を通されました。これがなかなか痛いのと、残尿感がずっとありなんとも言えない気持ち悪さです。そのせいか眠ることは全くできませんでした。起き上がるどころか、腕を動かすことも出来ないのでやれることは、考えることか、腕に響き痛みますが手をグーパーグーパーと繰り返す学生時代バスケ部だった時の握力トレーニングだけでした。実は救急車の中でもやってたんです(笑)

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そのまま朝を迎え、看護師さんが来て「朝食食べれますか?」と聞いてくれました。点滴をしていてもお腹は空くのでお願いしました。まず朝食のメニューを教えて頂き「何から食べたいですか?」とひとつずつ丁寧に介護状態で食べさせて頂きました。ですが早々に自分が遊んでいて怪我をしたことによって人に迷惑をかけている罪悪感に苛まれ少しでも自分にかける時間と負担を減らしたいと思い、大して変わらないと思いますが、ご飯ならご飯を全部食べ次におかずを全部と器を持ち替えなくて済むように食べさせて頂きました。ただ今まで経験したことがなく焦ったのですが、仰向けに寝た状態の食事は固形物も辛いですが味噌汁などの液体の方が苦しいです。口に入れる量によるかもしれませんが、溺れるんじゃないかというぐらい飲み込みにくくしんどかったです。

食事が終わって間も無く担当医の先生(自分よりちょっと歳上の女医さんでした。整形外科ではなかなか凄腕の人らしいです。)が来て、もう一度検査をするということになりました。そして検査が終わると「家族は今日来るの?」と聞かれ「着替えを持ってくると言っていたので来ると思いますが。」と答えると「じゃあ家族が来てから今後のことも含め話しをしましょうか。」と言われ、内心(えっ?そんな重たい感じ?)と思っていました。ただこれ以上家族に心労をかけるのも嫌だったので「大丈夫です。今話しをして下さい。」と言ったのです。すると先生が「分かりました。ちょっと待っててね。」と言い部屋から出て行きました。

10分ほどでレントゲンなどの資料を持って先生が戻ってきました。そこでやっと体を起こす許可をもらい、電動のベッドで体を起こしてもらったのです。そして今の自分の体の状況を説明してくれました。最初に見せてもらったのが顔を横から撮った画像でした。(んっ?腕じゃないの?確かに顔を打って口が少し切れてるけど...)と思っていましが、とりあえず黙って最後まで聞こうと考えていました。すると顔ではなく首の骨の部分を指差し「ここの神経に3本亀裂が入っていることによって体に麻痺が出ています。2本は四肢をつかさどる神経であとの1本が呼吸をつかさどる神経です。傷病名は中心性脊髄損傷です。」(...セキズイソンショウ?ってテレビとかで寝たきりとか車椅子使ってる人の?...いやいや首痛くないし。)と思っていました。

自分は波から落ち飲まれた時海底に顔を打ち、分かりやすく言うとシャチホコのような状態になって首を痛めたのです。説明によると神経の亀裂により正しく脳に信号が送ったり来たりしていない為、誤作動を起こし痛くないとこが痛かったり動かなかったりするようでした。「これからの治療なんですが、神経は回復することはないので状況に応じてリハビリでゴマかすか、手術しかないのですが神経はかなり繊細な手術になるうえ、ほぼ何かしらの障害が残ると思います。良くて言語障害などですね。なので手術をするかどうかは様子を見てからにしましょう。とりあえず当分入院ですね。」と言われました。

今まで風邪以外の病気や骨折、縫ったりましてや入院などしたことがなかったのでなんの実感もなかったのが正直なとこで最初に浮かんだのが(会社に当分休むって連絡しないと。みんなに迷惑かけてしまうな...)でした。すると先生が「今同じ中心性脊髄損傷の患者さんが6ヶ月入院していてリハビリしている最中です。」と話してくれました。(う〜ん、会社辞めることも視野に入れないとマズイのかな...)

それから整形の一般病棟に運ばれました。そして両親が来てくれたので自分の状態を説明し会社に連絡してもらったのです。社長は「待ってるからゆっくり治して戻って来い。今の仕事が出来なくなるなら出来る部署を用意するから。」と仰って頂き、上司や部下からも次々とメールが来ていて、励ましてくれたり気遣ってくれていてすごく嬉しかったのですが、自分は体のことに関しては全く落ち込んでいませんでした。心配や迷惑をかけている方が気になっていたので、一刻も早く退院しなくてはいけないと思っていました。とりあえず自暴自棄になったり落ち込んでないことを伝えたかったので動かない腕を机に置いてこんな写真と件名を送りました。

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海外の絶景インスタ風(笑)という件名とお礼の言葉を入れてみんなに送りました。「なんでこんな大変な時にそんな余裕なの?笑」とも言われましたが、みんな自分の人となりを分かってくれていたので安心してくれたみたいでした。これであとは待っていてくれる人達の為にも自分の体をどうにかするだけです。

                  続く


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