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とくに2番の歌詞の意味、俺のトンデモ考察を聞いてくれ【 LiSA - 炎 】

歌詞は適宜引用して解説しますが、全文通してチェックしたい方はこちらなどご参照ください▼

※劇場版『鬼滅の刃』無限列車編のみならず、その先の原作エピソードにも言及したネタバレがあるので、ご注意くださいね。

1番:紛れもない煉獄杏寿郎への愛

さよなら ありがとう 声の限り
悲しみよりももっと大事なこと
去りゆく背中に伝えたくて
ぬくもりと痛みに間に合うように

1番の歌詞について、多くを語る必要はないと思います。炭治郎達にエールを送り去っていった煉獄さんへ、炭治郎、伊之助、善逸からの誓い・餞が歌われています。

炭治郎は「手を離さないこともできた」

僕たちは燃え盛る旅の途中で出会い
手を取りそして離した 未来のために

1番サビの「手を取りそして離した 未来のために」という詞が、個人的には強く印象に残ります。

未来のために手を離した。つまり、あえて、故意に手を離している。
これってどういうことなのだろう。煉獄さんの言葉を振り返った時、目に止まったのは、原作第65話「誰の勝ちか」における、次の台詞です。

「もうそんなに叫ぶんじゃない」

「腹の傷が開く」
「君も軽傷じゃないんだ」

竈門少年が死んでしまったら
 俺の負けになってしまうぞ

1番の歌詞は炭治郎視点に見えますから、手を離したのは炭治郎の意思。「手を離す」とは、その表現の通り煉獄さんと別れの決意を固めることでもでもあります。

逃げる猗窩座に対して「逃げるな馬鹿野郎!馬鹿野郎!!卑怯者!」と叫んでいた炭治郎は、別れの覚悟はできていなかったでしょう。ですが、「叫ぶ」のをやめなければ「腹の傷が開」き、煉獄さんの「負け」になると諭されて、落ち着きを取り戻します。

「手を離す」とは、煉獄さんの死を受け入れて彼の言葉に耳を傾けることを指している。そう考えます。

俺がここで死ぬことは気にするな
柱ならば 後輩の盾となるのは当然だ

もっともっと成長しろ
そして今度は君たちが鬼殺隊を支える柱となるのだ
俺は信じる

これがまさに「未来のために」という歌詞の意味するところです。

炭治郎達が、煉獄さんの言葉を聞き入れ「成長」し「鬼殺隊を支える柱となる」ことが、煉獄さんの勝利であり望む未来。そのためには「手を離」す必要があった。そういう歌詞に見えます。

煉獄さんのすべての言葉を聞いた炭治郎の思いがこの歌詞です。

夢が一つ叶うたび 僕は君を想うだろう
強くなりたいと願い 泣いた 決意を餞に

「僕たちは燃え盛る旅の途中で出会い」は、当然、人生そのものを指す

1番サビの「僕たちは燃え盛る旅の途中で出会い」とは、当然列車に乗った「この旅」を指すのではなく、炭治郎達と煉獄さんそれぞれの人生の喩えです。「旅の途中で」というところがポイントですね。

総括して1番は、炭治郎達と煉獄さんの出会い、そして未来のための別れを歌っていると言えます。

2番の歌詞の意味をどう捉えるか

問題の2番。
1番にも増して、誰かが悲しい出来事に襲われているように見えます。

もう何一つだって失いたくない

悲しみに飲まれ落ちてしまえば
痛みを感じなくなるけれど

音を立てて崩れ落ちていく
一つだけの
かけがえのない世界

輝いて消えてった未来

炭治郎視点とも、煉獄視点とも、どうもうまく重ならない。

では誰か。

猗窩座ですよね。

「手を伸ばし抱きとめた激しい光の束」は、花火を指す

劇場版「鬼滅の刃」無限列車編は、原作の7〜8巻の物語です。ですが、2番の歌詞の答えは、はるか先の18巻にあると思います。

18巻では、炭治郎と義勇のペアに猗窩座が敗れ、人間だった頃を回想する話が収められています。

その中で「花火」は、人生に絶望していた人間時代の猗窩座「狛治」が、人間らしさを取り戻し、恋雪という女性と夫婦になる約束を交わすまで、物語の核となる重要なものでしたね。

はい おれは誰よりも強くなって
一生あなたを守ります

これが、恋雪からの逆プロポーズに対する狛治の返事でした。
猗窩座の技名が花火に由来していることは「設定こぼれ話」で吾峠呼世晴先生が明かしているところでもあります。

2番の歌詞のサビ「手を伸ばし抱きとめた激しい光の束」は、この花火を意味しているのでは、というのが、今回のトンデモ考察の核になります。

手元に18巻がある人はぜひ。
このシーンの花火、まじで光の束なんですよ。

でも、歌詞はこう続きますよね。

手を伸ばし抱きとめた激しい光の束
輝いて消えてった 未来のために

1番は、炭治郎たちが「未来のために」煉獄さんに誓う歌詞でした。

でも2番だと、一転して「未来」はもう消えてるんですよね。

誰よりも絶望した猗窩座の人間時代

無限列車編の登場人物の中で、もっとも悲しい過去を持つのは猗窩座ではないかと思います。

・自分が犯罪に手を染めることに心を病み、病弱な父親が自殺する
・結婚が決まった矢先、相手が義父ともども毒殺をうける

懐かしい思いに囚われたり
残酷な世界に泣き叫んで
大人になるほど増えて行く
もう何一つだって失いたくない

この歌詞が最も当てはまるのも、猗窩座ではないでしょうか。1番よりもなお重く苦しい、未来が消えてしまっている2番の世界観は、猗窩座にこそふさわしいように思います。

18巻の猗窩座の回想は、以下のように締めくくられています。

鬼になって記憶を無くしまた俺は強さを求めた

守りたかったものはもう何一つ残っていないというのに

家族失った世界で生きていたかったわけでもないくせに
百年以上無意味な殺戮を繰り返し

なんともまあ惨めで 滑稽で つまらない話だ

「悲しみに飲まれ落ちて」"しまわなかった"if

でも、2番の歌詞には、猗窩座のストーリーにそぐわない言葉もあります。
ラスサビの最後の部分ですね。

託された幸せと 約束を超えて行く
振り返らずに進むから
前だけ向いて叫ぶから
心に炎を灯して
遠い未来まで……

猗窩座は、こんなポジティブな生き方はしていない。どちらかというとこの部分は、煉獄さんと父母にかかるストーリーを思い起こさせます。

「炎」の2番を猗窩座の歌として聴きたい、と思った時、この捻じれがどうにも腹落ちしなかったんです。でも、18巻から8巻に戻って、煉獄さんと猗窩座と戦闘シーンを読むと、なんとなく消化できた気がしました。

鍵になったのは次の歌詞です。

悲しみに飲まれ落ちてしまえば
痛みを感じなくなるけれど
君の言葉 君の願い
僕は守りぬくと誓ったんだ

君ってだれだろう?

煉獄さんの歌と読めば、それは煉獄さんの母のように思います。
猗窩座の歌と読めば、"君"は明らかに「恋雪」を指しています。

戦いながら、煉獄さんと猗窩座は、このような問答を繰り返しますよね。

お前も鬼にならないか?
ならない

鬼になろう杏寿郎 そうすれば
何年でも二百年でも鍛錬し続けられる 強くなれる
君と俺とでは価値基準が違う
俺は如何なる理由があろうとも鬼にならない

「悲しみに飲まれ落ち」「痛みを感じなくなる」ことが鬼になることなのだとしたら、この歌詞は煉獄と猗窩座のやりとり、双方の価値観を反映しています。

二人の価値観の間で揺蕩っているといってもいいかもしれません。

猗窩座のつらい境遇に、もし煉獄の価値観が勝っていたとしたら。
あるいは、煉獄の母のような人物が猗窩座にもいたとしたら

猗窩座に胸を貫かれ、まさに死ぬというとき、「鬼になれ!!鬼になると言え!!」という猗窩座の言葉に対して煉獄さんが思い出したのは、死を目の前にした母の言葉でした。

そんな心の柱になる存在が猗窩座にもいたとしたら。
猗窩座が悲しみに落ちることがなかったら、というifストーリーとして、2番の歌詞を読むことができるのではないでしょうか。

ここまでの考えは突飛すぎるかもしれませんが、
無限列車編は、あくまで煉獄さんにスポットが当たった物語ですから、歌詞が一度猗窩座のことを歌うとしても、煉獄さんの価値観・物語にかえってくるのは、自然なことなのかな、と思います。

煉獄 vs 猗窩座 火が2つで『炎』

僕が「炎」の歌詞について現状思っているのは、以上のことです。実はジャンプ本誌は追いかけていないので、原作『鬼滅の刃』のエンディングについては12月の最終巻を待つ状態なのですが、それを読んだら、少しまた考えが変わるかもしれませんね。

ただ、間違いないなと想うのは、煉獄と猗窩座、炎柱と花火、どちらも火(炎)の属性を持つキャラクター。この2人の生き方が明らかに対応して描かれているということです。

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