見出し画像

50歳、アウトドアはじめまして④レイクカヌーへ

2日目は、美味しい朝ごはんを食べて(お米が美味しいの〜、お水が美味しいからかなー。舞茸うまうま、納豆も美味しかった)8時40分ごろ宿を出発。
朝は川の水であらわれた澄んだ新しい空気が頬に冷たくあたる。
吸い込むと、緑の匂いに樹々の肌の匂いが混ざっていて、二日酔い?の体にすっきりと清々しい

一緒にご飯を食べて、ラフティングを乗り越えて、シェアリングをして、飲んだり話したりしながら、急速的に仲良くなった仲間たちの朝の顔は少しだけまぶしい

目指す湖まで、40分ぐらいバスに乗って山の中へ行くという

山道をぐるぐる上がっていくたびに、紅葉のグラデーションが変わっていく。
まだ、紅葉には早いよね、と言っていたけど、上に行くと少しずつ緑の中に黄色が混ざってきて、時々、葉っぱの先の赤さにドキッとする。
黄色の炎を抱えたような緑の意思、少しだけ早い秋の訪れ 

流れていく樹々の切れ目からどんとそそりり立つダムが現れる。ハッと息を飲むぐらいに薄茶色のそそり立ったその建造物は、知っているダムの無機質な硬さとは違った。
なんというか、石垣みたいなんだ。西洋のお城の城壁みたいな美しさも持っていた。どれだけの長い時間をかけてつくったんだろう。
圧倒される。
ダムの湖が鏡のように山の景色を写す。
少しでも風があったら、さざなみになって揺れるから、しんと静かに息をひそめているようだった。

私たちの目的地は、そのダムが蓄えた湖だった。
バスを降りると、オートキャンプ場の賑やかさと反対に静かな湖畔が広がる。
どこまでが本物なのかわからなくなるくらいに、鏡の景色は上下対称で、ロールシャッハテストのようだったり、モアレ模様のようであったり、蛾が羽を広げたようでもあった。
あの世とこの世の境目みたいに時空が歪むように見えた

画像1


「ならまた湖」それが、湖の名前だった。
見えている湖の大きさは、大きめの池ぐらいに狭くて、ここをぐるぐる回るのかしら、と思っていたら、
「この先を抜けると、指を広げたみたいに、いろんな形に広がっているのよ」といわれて、ああ、見えているものが全てではないんだ、と思った。

カヌーは、1人で乗る
防水のマウンテンパーカーの上にライフジャケットを着用して、膝までズボンをめくって、お尻から乗り込む

あっけないぐらいに、スーッと湖面に進んでいく
漕ぎ方は教えないから、自分でいろいろ工夫してみてください、と言われる

最初は、おっかなびっくりパドルを動かす
ぱちゃぱちゃ すー、、、あんまり進まないなー
この漕ぎ方だと、上腕の変なところが痛くなるぞー
うーん、、、
パドルと船の先っぽばかりを見て、右行きすぎたり、左行きすぎたり、うまくいかないなー
しばらくなんとかかんとか動かしながら、進めていく

水の抵抗、波紋を作る アメンボみたいな水面の波紋ができる
スーッと進む

みんなどんどん先に行ってしまう

あ、そっか。
教えてくれないけど、うまく進んでいる人のを見て、真似したらいいんだなーと
パドルを少し高くあげてみたり、回転運動にしてみたり、いろいろ試す

ああ、でもせっかくいい景色なんだから、それも楽しみたいなー

なんて思ってたら、ダムの湖畔のそこはまだ入り口なだけです、と。
ここから先ずーっと行って帰ってくるんだ、と言われる

途端に恐怖が奥底から立ち現れる
「私は、いけるのかしら?行って、戻って来れるかしら」
これは知っている
小さいパニック症状
頭が先行して怖くなる 
ドキドキして怖くなる
先がわからなくて、そこまで自分が出来るのかわからなくて
不安になって怖くなるんだ 

満員電車に乗れなくなった時と同じ症状だ
閉じ込められたらどうしよう、と思うと怖くて乗っていられなくなる

水の深い足がつかないところで、
たった1人でこの小さなカヌーの中で
私だけ、進めなくなったらどうしよう
電車とは違って降りますとは言えない、、、

深く呼吸する 

私は、怖いって思っているんだ
でも、先のことはわからないんだ
だから、大丈夫
手を動かすことに集中しよう
頭から手へ
肩甲骨、背中、太腿
水がパシャっと肌にあたる

目を瞑る 

緑の匂い 
湖面にパドルの音だけ すぐに吸い込まれてしんとなる
心臓の音 

大丈夫、大丈夫。。。

カヌーと私と湖の水たち
岩の樹々たち

ありがとう
ありがとう
ありがとう 

ひとかきが自分を前に動かす


透明度が高いから、湖の真ん中から進んで岩肌に近くなると、水の下の岩の景色が見える
外に出ているところは白く乾いているのに、水の下では青ざめて静かにたたずんでいる

開けた場所で休憩 
どこまでも広がる空の広さ 
遠くの山々 奥の山は色を失い影の濃淡のようだ
あの奥に、尾瀬があるという 20歳の頃フランスから帰ってきてすぐに歩いたことを思い出す

201004ヘルスツーリズムbn (18)



静かな湖畔の空気をうちくだくように、大きな声でみんなでヤッホと言ってみる あちこちから声が戻ってくる
反響する 声

やまびこ聞いたのはどれぐらいぶりなんだろう
大きく、小さく、遅れて、早く、やまびこたちが反射する
お話の中に迷い込んだみたいな感じ 
ゆらゆらと揺れるカヌーの上で目をつむると、どこまでも水平に広がっていく世界がそこにある

遠くにカカと、鳥の声
音の方向がくっきりとわかる
バサバサと樹々のはためく音
ひらひらと落ち葉が落ちてくる
流れてくる蝶の羽 白い鱗粉と点々の模様 アゲハ蝶だ
どんと置き去りにされたような流木
立ったまま枯れてしまった木は、違う命を持ったように
今にも動き出しそうだった

パドルを漕ぐのをやめると、音が吸収されたかのように
しんとして、自分も消えてしまうかのように思える
みんないるのに、1人で、
1人だけど、みんなを意識した

黒い岩に、いろんな色の緑が鮮やかに命を輝かせている

「カヌーで自分の力で来た人にしか見えないんですよ」
貴重な景色の中に自分はいた

細い隙間に入っていく 途中で砂のところに打ち上げられてしまう

前漕ぎ、後ろ漕ぎ、操って出ていく
パドルをどう使ったら、そこから抜けることが出来るのか
押したり、漕いだり、いろんな角度、どうやったっていいのだ
正解という方法はないのだ 
出られるという結果につながれば、なんだっていいのだ

なんだっていいのか

一段と空気が澄んで清らかな景色の元に進む

うわー、と思う
すごい、水しぶきの細かなシャワー 煙のようなこまかい水が景色を浄化していく
白い流線型に曲がりくねった白蛇のような滑らかな岩肌を滝のようにごうごうと水が落ちてくる 
こちらに向かって走ってくるようだった

澄んで、洗われていく
きれいな水の空気
ずーっと吸い込んでいたい空気と、冷たい水の感触
山のエネルギーをたっぷり含んだ豊かな水は流れていく

うっとりしていると、「みっちゃんは水の人だから、こういうのがいいよね」と言われる。
ああ、そうだった、私は自分が書いた「水くらげ」という話をずっと思い出していたのだ。子どもの頃のプールの思い出。
https://note.com/mitsue2020/n/n371fd7db7773
ランディさんに「あなたは水が好きなのね」と言われたこと。

その頃には、最初に感じた怖い気持ちはどこにも無くなっていた。


細い隙間から戻ってくると、流木にきのこが生えていた。なんという生命力。
きれいだなぁ、、、。
きれいですね、と、気づいて一緒に微笑む人がいる。

深い湖の底から 白い泡が上がっているのが見えた。
お風呂場でタオルに空気を入れて沈めた時にぽこぽこ上がってたような、フワフワと揺らぐ小さな泡
生き物かしら?湧水かしら?温泉?と聞いてみると
堆積した落ち葉から上がってくるそうだ

山からの落ち葉がこの下に沈み込んでいるんだ
ああ、そっか、地球は生きているんだね

水墨画のような雲海が遠くに見える

時間と共に景色は変わっていく
常ならず、無常とはこういうことか、と教えてくれる
きっと同じ景色は2度とないんだ
同じところに来たとしても、空も水も山も樹々も鳥も虫も
同じじゃない 常ならずなんだなぁ、、

ずっと先に見えるもう一つのチームに追いつくように、漕ぐことに集中してください、と言われて、本気でガシガシと漕いでみる。
水泳の時に、クロールで必死に腕を動かしていた感覚がよみがえる。ぐん、と手を伸ばして、水の抵抗を感じると、体が放り出されるように前に進む、あの感覚。

効率よく漕ぐ方法を聞いていたら、私は真面目だから、正しくそれを繰り返そうとしていたのだろう、これでいいのか、と正しさと自分とのギャップを調整するために聞いていただろう。
でも、教わらないから、何がいいのかを探っていく感覚。
子どもの頃の遊びってこんな風にやっていたんだよね。

ぐんぐん漕いでみたり、
表面をなめるように漕いでみたり、
目を瞑って漂ってみたり、
いい姿勢で漕いでみたり、
リラックスして、ゆだねてみたり、

私にとっての心地よさってなんだろう
体に聞いてみる 
心と体が答えを知っている

ああ、そっか量稽古なんだなー。
身体で覚えていくってこういうことなんだ。

リラックスしながら覚醒している状態ってこんな感じなんだ

だんだんと戻ってくると、少し寂しい 
カヌーをぶつけっことかして遊ぶ
最初は、人にぶつからないように迷惑かけないように、って必死で間を開けようとしていたのに、
今は、もうそんなことはいいんだって思う。

201004ヘルスツーリズムbn (16) (1)



ちょっとだけ、ゆっくり進んでみる

次はもうちょっと早くから仲良くなれるかもしれない
1時間と40分ほどのカヌーの旅
時間を意識しないフローの世界 
もう一つの時間の中に私は、いた。
ゆらゆら揺れながら、ずっと、そこにある静かな世界

カヌーの先が岸について、ゴリッとする。
右足を出して、水の中に足を入れて、体重を浮かしてカヌーから降りる。
地面に立とうとすると体がフワフワする 柔らかい存在になってしまったようだ
肩甲骨周り、肩が軽い ぐるぐると可動域が広くなっている
呼吸が深く入っていく

土がしっかりしている 
足元がちゃんとある
体はフワフワするのに、土はしっかりして立っていることがわかるんだ

グラウンディングってこういうことなんだなーと、思った。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?