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世田谷邪宗門

今回は、ふと思い立って足を運んだ純喫茶で田舎の祖父母を思い出した話。


「世田谷邪宗門」

世田谷邪宗門
★★★★☆ · カフェ・喫茶
03-3410-7858
https://goo.gl/maps/o4xSKUcFwxPdd6Pw7

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世田谷邪宗門は、小田急線下北沢駅から歩いて15分くらい、住宅地の真ん中にあります。駅から行くと行きは下り坂、帰りは上り坂です。この邪宗門、しんどくなるくらいおばあちゃんちを思い出す喫茶店でした。


わたしは東北のへんぴな海辺で育ちました。両親は共働きで、お茶屋さんを営む祖父母の家から小学校に通いました。お茶屋さんは大通りに面していて、ちょっとした喫茶のスペースがあって、よく近所のおばちゃん達が遊びに来ておしゃべりしてました。

店側が入るとすぐに小上がりになっていて、おばあちゃんはいつもそこに座っていました。ガラスのショーケースにはたくさんの急須や茶筒、お茶っぱやお菓子が積み上げられていて狭苦しい店でした。おばあちゃんの趣味でいつもきれいにお花が生けてあって、小さい頃は花を毟ってよくおばあちゃんに怒られました。おばあちゃんは多動っぽくて、いつも両の手をニギニギしてて、幼いわたしはそれをずっと眺めていました。

お客さんから見える側のお店はおばあちゃんのテリトリーでした。おじいちゃんはコミュ障で、いつも吃っていて、16時から酒を飲むひとでした。
おじいちゃんは字が上手で、法事に使う「盛籠」を作っては配達していました。お通夜やお葬式の注文が入るとわたしも一緒になって果物の缶詰やお茶をカゴに詰めて、車に乗せて、配達について行きました。式場に着くとおじいちゃんはわたしを前へやって、自分は頭を下げて黙っているので、困ったお客さんはわたしにお金を渡して「おじいちゃんに合ってるか聞いてきてくれる?」と言うのでした。

両親が離婚して遠くに住むようになったのは中学二年生の頃で、お茶屋さんにはめっきり行かなくなりました。
10年も経つのにたった3回遊びに行ったっきり。

東京でたのしく暮らしてるとそんなこと思い出さないんだけど、この前ふと思い立って足を運んだ純喫茶にはわたしの郷愁があって、必要以上にお店のおじいさんの優しさが沁みた。

あんみつ珈琲おすすめです。これ、あんみつに濃い目のコーヒーがかかった「アフォガード」みたいなやつ。バニラアイスが冷たいのとコーヒーが熱いの、あんこが甘いのとコーヒーが苦いので口の中がびっくりします。うまい。


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ここでは遠藤周作の「生き上手 死に上手」を読みました。これは遠藤周作が晩年書いたエッセイで、文豪とかカトリック教徒とかそういう遠藤周作を象る肩書を全て取っ払ったかわいいおじいさんの本。遠藤周作がボケるのを怖がったり、趣味で絵画教室に通ったり、夜寝れなくて2時まで本を読んだりする。かわいい。是非読んでください。


邪宗門、ぜひお洒落して行ってみてください。


【2021.1.10追記】

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