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⑯エピローグ;副業よりも買収

 私が最初の会社を買収した際にはまだサラリーマンでしたので、限られた友人にしか言っていませんでした。

 その時の反応は、「はあ?! なにやってんの?」という反応が100%返ってきた後、まったく関心を示さないか、「大丈夫なのか? そんなことやって」という心配するかどちらかでした。

 業績が非常に悪い状態で買収していましたので、数カ月の間うまくいかない時期が続き、その時は打合せの帰り道では「このままカネだけなくなるんだろうか?」「会社の仕事に支障が出たら言いわけができない。それどころかクビになるんじゃないか?」「ひょっとして自分はとんでもないことをやってしまったんではないだろうか?」なんて思うこともしばしばありました。

 そこからだいぶ業績が回復できたので、今はやって良かったと思えていますが、ハプニングはずっと出続けています。ある程度の人数で運営している会社では考えられないような出来事ばかり起こります。ただそれは正確に言えば、今までの会社では誰かが引き取ってくれていた仕事を、全部自分が最終責任をもってやらなければならないということでした。そう考えると、会社員としての仕事をするうえで、色々な部門の人のやっている仕事に対してまた一段深く興味が持てましたし、視野が拡がったことは間違いありません。

 ただそれがお金になるのかというと話は全く別です。むしろ結果的にお金を失うことになるのかもしれません。それでも、自分がオーナーシップを持つどころか、オーナーとして事業に取り組むということは、私にとってはかけがえのない価値になっていると思いますし、サラリーマン仕事にも大いに役に立ったと思っています。

 恐らく50−60代の「いい会社に勤めてきた会社員」は、ごく一握りの社内出世コースの人以外は、新鮮なことに頭を使ってビジネスについて他人と話したり考えたり行動したりする機会は、右肩下がりに減ってきてしまったと思います。

 そうすると承認欲求が得られずイライラして、タクシーの運転手や書店やファミレスの店員に悪態をついたり、マンションの管理組合の集まりに出ていって「したり顔」で無責任なことを言い散らかすのタイプに発展していくのかと思います。「俺はそこそこの人間なのに、どいつこいつも認めねえ。認めさせてやる」といった感情が不健全に噴き出す状態です。

 そういう人たちにとって、健全に働いてみたい、何か新鮮味を味わいたい場合には、起業よりは、他の人の事業を引き継ぐというのが、既に事業基盤があるという点でリスクが低く現実的であるというのが私の主張です。

 また、ごく一握りの社内出世コースをある程度成功した人でも、社長にでもなっていない限りは、ある程度の年齢になったら会社の外に出されます。そして、出された後に探せる仕事のほとんどは、既に高齢になっていることもあり、顧問や非常勤取締役であったりと、名前は立派でも基本的には「毎日は来なくていいです。欲しいのは、それっぽい雰囲気です」という期待に基づく立場です。名誉欲は満たされるかもしれませんが、何かに打ち込める趣味でもない限りは退屈な日が始まります。

 高齢になる前でも、40代以降くらいに、現場を離れて管理職になったとしても、現場の手触り感がなくなることに対して寂しさを超えて虚しさを感じるようになった人も、検討に値する選択肢であると思います。

 繰り返しになりますが、私としても体験する実例ややり方は日々増えていますので、ある程度のネタが溜まったらまたアップデートした要素を肉付けしたいと思います。

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