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季節の職人|ショートショート

長い冬の始まりを告げる雪虫が舞う北国。
これから繁忙期を迎える、職人Kさんにお話をお伺いしました。

インタビュアー「今日はお忙しい中お時間をいただきありがとうございます。」

職人K「これから繁忙期にはいるので、手順の見直しをしているところです。」

インタビュアー「そうなんですね。普段から気を付けていることはありますか。」

職人K「なるべく1つずつ、バラバラになるようにというのが最終目的ですから。そこはやはり一番気を付けていますね。」

インタビュアー「高度な技が必要なご職業だと思います。いつごろから職人を目指しはじめたのでしょうか。」

職人K「なろうと思っていた、というよりなってしまっていた。という感じですかね。自分が一番自然体で取り組むことができることがこれだったんです。」

インタビュアー「それではさっそく職人技を見せていただきましょう!」

職人は、華麗にしめじを掴み上げると石づきの根本ギリギリを切り落とした。
さらに、大きな束を半分に裂き、両手でつかんでまだ水とだしが入っただけの鍋の上へ向かう。

両手の人差し指と親指を器用に動かしながら、すべてのしめじをばらばらにほぐしてゆく。

職人は妥協を許さない。

大きいしめじは、親指でぐいと押して半分のサイズにすることで、火の通りが均一になる。逆に小さすぎるしめじは、早く煮えすぎてしまわぬよういくつかまとめて1つの束にして投入する。

インタビュアー「華麗な技でしたね!やっぱりライブでみると違います!」

職人K「ありがとうございます。自分にできることを突き詰めた結果です。」

……

などと脳内で妄想しながら、しめじを鍋にいれてゆく。かなこは、この作業が好きなのだ。鍋を作る時の楽しみのひとつである。

“好きなモノを職業に!”

などと言われる昨今だから、鍋の時にしめじをバラバラにして入れる職人として食べていけるのかな?という考えた浮かんだが、やっぱり好きなモノは趣味にしておくのが一番いいという結論に落ち着いたので、しめじ職人の夢は胸にしまっておくことにした。


【あとがき】

わたしがかなこでした。
無心になれるし、やってて楽しいのでなんだか、職人っぽいよなというところからおもいついたおはなしです。

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