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箱が好き

 たまには「写真」と直接関係のないことも書かないといけません。といっても、やっぱりどこか「写真」を引きずっていくのでしょう。上の写真はまさにそう。

 写真の説明は後ほどとして、「箱が好き」の箱とは、まさにただの箱のことですが、特に好きなのが「桐」でできているもの、標本箱のようなものです。私は東京の下町生まれですから、子供の頃、特に昆虫採集に夢中になった記憶もないのですが、あの箱が好きです。(樟脳の匂いは特に好きだったりします。)

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 箱とは、モノを収納整理するためのモノでありますが、極端にいえば何かを閉じ込めて置けるものでもあります。少年少女を問わず、皆さん子供の頃に何らかの箱に何かをひっそりと閉じ込めておいた記憶はないでしょうか。先の標本もその一つということがいえるかもしれません。「虫愛づる姫君」というのもあったような。

 誰にでも収集癖があるとはいいませんが、ある程度、とりあえず「とっておく」ということはします。それが何のためなのか、どうしたいのかもわからないが、とりあえず。

 私が箱を特に気にし始めたのは、1993年に千葉県の川村記念美術館で行われた「ジョセフ・コーネル展」からだったと思います。「小さな箱の中のワンダーランド」という副題が付けられていました。ジョセフ・コーネル (1903-1972)はアメリカ人で、シュールリアリズムの影響を受けコラージュ作品を作り続けた孤高のアーティストです。ニューヨークから外に出ることもほとんどないまま箱の中に「宇宙」や「詩的世界」などをきめ細かく展開しました。その17歳の頃にマンハッタンで目にした「ショーウインドウ」に初めて魅せられ「箱」に行き着いたというのも共感しました。私もショーウインドウが好きです。

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ジョセフ・コーネル「鳥たちの天空航法」 (川村記念美術館カタログ)

「無題・オウムと蝶の住まい」、「見捨てられた止まり木」、「海ホテル(砂の泉)」、「無題(星ホテル)」というように、タイトルからもわかるように、コーネルの箱の中のワンダーランドは夢と不思議と好奇心に満ちています。モノに対するこだわりは、もちろんボップアートなど以後の美術にも関わってくるものでしょうが、コーネルの「箱」は、内側と外側という構造が深くイメージを刺激し、どんどんその世界に引き込まれていきます。このあたりはいずれもっとしっかり考察したいところです。

さて、コーネルの作品にはまるで及ばないものの、「箱が好き」な私の作品を恥ずかしながら一部お見せします。

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 どこか東京下町、いや「駄菓子屋さん」というものか、そうした記憶も入っているところが私のコラージュの特長かもしれません。そして、写真展の会場にもそれをちよこっと持ち出してしまうところが、私の悪い癖ともいえます。下は2016年3月の「JCIIフォトサロン」での展示。実は今年(2021年)の3月と4月の個展の時にも、なにやら持ち出してしまおうと画策しています。乞うご期待のほどを!!!!

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古くから様々な読者に支持されてきた「アサヒカメラ」も2020年休刊となり、カメラ(機材)はともかくとして、写真にまつわる話を書ける媒体が少なくなっています。写真は面白いですし、いいものです。撮る側として、あるいは見る側にもまわり、写真を考えていきたいと思っています。