映画「小名木川物語」の上映会 (後編)
11月20日から23日まで限定オンライン上映会が行われ、これまでご覧いただけなかった地方の皆さんにも、映画を届けられたことをうれしく思います。今回の上映会は深川一帯で行われた「本と川と街」という地域の催しの一つでもありましたが、地元の方の上映したいという熱意の賜物でもありました。深川で作った映画が深川に帰っていくようで、これもまたうれしい限りです。
さて、映画の制作は緩くスタートしながらも、福島いわき市のロケも入れ少しづつ進んでいく。撮影はその日に出られるスタッフの人が中心となり、手分けして行うのだが、カメラ一台の簡単な撮影セットながらいろいと手間取り、午前、午後のある時間帯にワンシーンのみ撮れたということも多く、辛抱強く関わらざるを得なかった。さらに、脚本も完全稿としての全体が提示されないまま。脚本チームの進行に合わせ、私が現場で撮り、演出するというとても難しいやり方となった。しかし、地元の皆さんのご協力もあり、あえてのんびりと対応していこうという、私には珍しい態勢を考えた。私の下町的な性分としては、スパッスパッと決まっていきある速度で筋道ができていかないとイライラするのだが、この映画製作に関してはなぜか我慢できた。それもこれもプロデューサー役の東海亮樹さんの存在があったからだと思う。
4年間の撮影に起きた様々な出来事を思い出しているのだが、もういろいろあり過ぎて語るにはきつい。もうすぐできる映画のパンフレット(今頃出来上がるというのも申し訳ないが)に事細かに書かれているので、どうかそちらをご覧いただきたい。ただ、やはり2017年のとりあえずの公開後に東海さんが急逝したことが無念でならない。そして何よりも町の皆さんがずっと制作、そして公開を支えてくださったことに改めて感謝をしている。
上映会は今後も思い出した頃に行われるはず。実はクラウドでご協力いただいた方々への返礼として遅れていたDVDとパンフレットがやっと作っていただけたようで、これで一段落だと監督役としてはホッとしている。
主演の徳久ウイリアムさんは2本目の映画主演に挑んでいるようだ。伊宝田隆子さんも本業の美術家として海外への参加も進められているはず。私はその後、3分ほどの短編映像を昨年制作したに過ぎない。もう一度、劇映画を撮ってみたいという気持ちは高まっているが、今のデジタル一眼、ミラーレスカメラを使った完璧な動画撮影システムは無知に近いのでハードルは高い。それにも増して、依頼されるような仕事は来ないだろうという確信もある。しかし、ずっと「写真と地域」についてこだわってきた私にとって「映画」は果てしない夢の一つでもある。夢は捨てないでおきたい。
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