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猿でも出来る作曲Life Act.5

息子が自分の夢を私に伝えたのと同じ頃

" ネットミュージック "

そんなジャンルが人知れず秘かなブームを
巻き起こしていると耳にした。

ほどなく私はそのきっかけとなる曲と
出会うことになった、

それはAfter the Rainの
「アイスリープウェル」なる曲。

言わずと知れた有名な歌い手、
そらるさんとまふまふさんとのユニット。

「これロックやん!」

これは自分にとって正に革命前夜であった。

「父さんの声はちょっとだけそらるさんに似ている」

息子からそんなことを言われたのも
いい刺激になった。

いわゆる宅録でここまで
ハイクオリティな楽曲が制作できるのか?

もちろんかなりの知識と操作力は必要だが
これはやり甲斐がある、そう感じた。

これまで私が無縁だった音楽世界…それは

ボカロPがボーカロイドの曲をカバーする
「歌ってみた」と言う活動や

自作曲を作る"歌い手" なるジャンルの存在。

私が知っていた機械的で無機質に歌う
ボーカロイドとはまた一線を画した世界観、

しかも彼らの作曲の拠点は自宅・・・

彼らは基本、楽曲制作の際に
スタジオに入らず音作りから歌入れまで

全て自宅で行う "宅録" だと聞かされた。

この時ふと思った、

「これなら楽器が出来なくても曲が作れるかも?」

そしてこのスタイル…数10年前
S氏と私とのやり方に似てるじゃないか?

それならいっそのこと息子だけじゃなく
私もやってみようかな…と。

後に息子は半ば呆れ顔で笑いながら
こんなことを言っていた

「息子がやるからオレも…なんて親はなかなかおらんよね」

確かに、言われてみれば
そんな親はあまり存在しないだろう。


ところで息子が
どう言った曲を作りたいと思っていたのかは
この時はまだ分かりかねていたが

私が作りたい曲は洋楽のヘビーメタルのような重々しいギターリフが刻まれる重厚なサウンド

それを機械で再現できるのか?
いや再現してみたい、そう思った。

その時不安になったのが
以前S氏がシンセで作成した曲の

打ち込みギターサウンドの陳腐な音。

ピアノの単音をギターっぽく無理やり歪ませた何とも安っぽく薄っぺらな音を思い出し

今の機械ではヘビーでアグレッシブな
メタルやハードロックの音を

出すことが出来るのだろうか?

そこはもう時代の流れと
テクノロジーの進歩を信じるしかない。

まずは息子と二人でユニットを結成して
共同制作で曲を作っていこう、

そしてゆくゆくは個人で…

そんな話からこのプロジェクトは始まった。

しかしそこにはもうひとつ大きな壁が
立ちはだかっていた。

それは私と息子との音楽性の違い。

ハードな音を好む私と
ボカロ系やSAKAI NO OWARIと言った
ファンタジックな世界を好む息子…

まずは互いの微々たる貯金や小遣いをはたいて
機材を共同購入しようと話していたのだが

結局、昔のように音楽的な問題で
どちらかが妥協することになるのでは?

それが危惧されたものの
まずは音を出せる環境を手に入れなければ
先に進まない…

それが2人の一致した体験だった。

こうして2人してコツコツと貯金を重ね
その間も共に歌詞を書いたり
曲のイメージを膨らませたりしながら


プロジェクト発足から1年が過ぎた
2016年夏の終わり、
ようやくひと通り機材を揃える目処がついた。

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