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鍼灸師が訪問診療のクリニックで医療事務として働くことで見えた可能性と課題


どう生かすのかだけでなく、どう死なすのかをより考えるようになりました。医療事務として約10ヶ月間働いて出て来たのは、そんな言葉。


僕は、過去8年ほど鍼灸師として臨床の最前線に立ち、多くの患者さんを治して来ました。

そこから一歩も二歩も引いた形で、
現在は、在宅医療現場の最前線で働く医師と共に患者さんの家に行って診療の補助をしたり、
事務所で書類処理や電話対応、他職種とのやり取りなど、
最前線で働く人が患者さんと向き合う為のサポートをする仕事をしています。


もともと、患者さんと向き合い、患者さんの症状を治していく仕事をしていたのもあって現場の最前線に立つ医師が何を必要としているのかを多少予測出来るということもあり、訪問診療の同行をする医師からすると心強い存在になれてきているんじゃないかなと思います。


初めは分からないことばかりだった仕事にも慣れ、
今では、より先を見据えた仕事が出来るようになって来たかなと思います。


そんな中で、2020年の2月より、昨年新しく立ち上げた岐阜県恵那市にあるNEXWEL恵那地域笑顔共創クリニック(通称:笑顔クリニック)の事務方を任せてもらえるようになり、現場からより経営者側の仕事をするようになりました。

今、そのクリニックは、立ち上げ段階を過ぎ、クリニックとして成長して行かなければならない段階に入っています。ただ医療現場の仕事をこなすだけではなく、いかにして患者さんを増やすか、地域の人々にクリニックを使ってもらえるのかを考えなくてはなりません。

本当にやることがたくさんあって、自分の努力がクリニックの経営に直結しているのもあり責任は大きいのですが、チャレンジが多くあり、仕事ばかりの日々ではありますが個人的には楽しく日々を送ることが出来ています。


タイミング的にも次の段階へ一歩を踏み出し始めたと言えるかなと思います。


そんな折だからこそ、一度今までの仕事についてしっかりと振り返っておこうと思います。


僕がこの10ヶ月間で訪問診療という現場で何を学び、何に可能性を感じ、どんな課題を見つけたのか、少し長いですがお付き合いください。

在宅医療とは、いかに治すかではなく、
いかに死なせるかという現場だった

在宅医療と病院での医療には大きな違いがあります。
患者さんやその家族が自宅で療養していくにあたって求めることは、病が完治して元気になることではありません。

苦痛なく穏やかな最後を迎える為の医療、それが在宅医療なんです。
(異論は認めます。個人的な意見です。)

もちろん、褥瘡が出来たり、発熱したりといった症状が出てくればそれを治す為に治療をおこないますし、時には外科的処置も行います。

しかし、それらの治療は、全ての症状を治すことをゴールにしているわけではなく、如何に苦痛を取り除くことが出来るのかを目指しています。


80歳を過ぎ90歳を迎えるような歳になると多くの人は、もう十分に生きた、早く安らかに眠りたいと言うようになります。
そして、住み慣れた家で最後の時を迎えたいと思うようになります。

中にはまだまだ生きていたいと思う人もいるでしょうし、一概に全員がそうだとは言いませんが、やはり、死を意識する人は多いように思います。


在宅医療を行なっている僕らがする必要のあることは、そんな人たちが良かったと思えるような最後をご自宅で迎えさせてあげることです。
また、患者さん本人だけではなく、ご家族にとっても後悔のない最後を如何にして迎えさせてあげられるのかが重要となっています。


“医療”と“死”があたかも敵同士のように、対極の位置にあるように思ってしまう人もいるのかなと思いますが、“医療”と“死”は敵同士ではなく、連続するひと続きのものだと思います。

実際に患者さんの家に訪問している医師に求められうことは、なるべく少ない薬の処方量で患者さんの状態を安定させることなんだなと感じました。

また、必要に応じて、訪問看護師さん、訪問入浴の事業所の方々、ヘルパーさん、ケアマネージャーさん、薬剤師さんと連携をとって患者さんが望む生活を送れるようにサポートをすること、そしてご家族の負担が減るようにサポートしていくことが在宅医療の現場に求められることです。


時と場合によっては、どう生かすかより、どう死なせるのかを優先した選択をする場合もあります。


最終的には患者本人とご家族がどうしたいのかに委ねられる場合がほとんどですが、
僕たち訪問診療を行う側は単に選択を迫るのではなく、寄り添い、一緒に考え、納得する答えに辿り着けるよう対話を行なって行きます。

他のクリニックの訪問医を直接見て来たわけではないのであくまで僕が見て来た当クリニックの医師たちの話になりますが、ご自宅に伺う際は、患者さんやご家族とよく話をしてよく話を聞いて、日々の診療を行なっていて、病院の外来に比べると長い時間をかけて診療を行なっています。

それが出来るのが訪問診療の強みなんじゃないかなと思います。


そして、信頼関係を作っていく中で、人生の終わりが近づいて行き、
やがて最後の時を迎えることになります。
病院で看取る患者さんに比べると穏やかな最後を迎える患者さんを看取ることが多い現場かなとも思います。


僕自身、医師の診療の同行でいろいろな患者さんを看取る現場に立ち会って来ました。

身内を亡くすことは、たとえもう終わりが近いと分かっていたとしても悲しいことです。
それでも最後を自宅で迎えられることは、患者本人にとっても、ご家族にとっても幸せなことなんじゃないかと思います。


また、たとえ最後の瞬間を病院で迎えることになってもギリギリまで自宅に居れたのであれば、それはそれで幸せなことなんじゃないかなと思います。

僕たち訪問診療を行う者がやっていくべきことは、自宅で苦痛なく過ごす時間を少しでも長くしてあげること、もしくは納得いく最後を迎えさせてあげることなのかなと思います。


在宅診療の現場に居る鍼灸師としてのジレンマ

医師と患者さんの自宅へ伺っていて感じるのは、鍼灸師・あん摩マッサージ指圧師が訪問診療の現場で出来ることはたくさんあるなということ。

患者さんが訴える症状に対して、医師がその場で出来ることは意外と少ないです。
医師が在宅医療の現場で出来るのは、薬の処方と医療器具の交換や簡単な処置くらい。

最近はポータブルエコーやポータブルのレントゲンが出て来ており、病院でするような注射や褥瘡などの外科的処置も患者さんの家でできる様になりました。

しかし、そこまでの処置が必要となる患者さんの割合は少ないです。
多くの患者さんが訴えるのはいわゆる不定愁訴、薬の副作用で出ている症状や筋肉の拘縮などから来る痛みの症状で、医師がその場で対応できないことが多いです。

だいたいの場合、医師は、薬の調整を行い、湿布や塗り薬といったものを処方し届き次第使って頂くくらいしか出来ません。


しかし、その際に鍼灸師・あん摩マッサージ指圧師がいれば、治療をしてすぐに症状を緩和することも可能です。
僕も医師の許可のもと何度か患者さんに対して円皮鍼を使ったり、短時間の手技をお試しという形でやらせてもらい症状を緩和させたり取り除くことが出来ました。


もし、医師の診療時に隣に鍼灸師・あん摩マッサージ指圧師が居てその場で指示のもと治療が出来てそれが薬の処方と同じように保険適応で医療行為として請求が出来れば、
患者さんにとっても医師にとっても、僕たち鍼灸師・あん摩マッサージ指圧師にとっても良いことになるんじゃないかと思います。

残念ながら今の保険制度ではそれは実現不可ですが、
実際に医師と一緒に医療事務として患者さんのご自宅に伺っていて、
鍼灸師・あん摩マッサージ指圧師が医師と共に診療を行うことが出来たらどんなに良いだろうと思わずにはいられません。


自分に治療をさせてもらえればすぐに症状を緩和してあげられるのにと毎回思います。

だけれど医療事務として医師の診療同行をしている身として考えると、
それを毎回やってしまうことは、その場では患者さんにとっては嬉しいことになるけど、僕以外の同行業務を行なっている医療事務との差が生まれてしまい、いつの日か僕がその患者さんの家に医師といけなくなった時の不満に繋がるかもしれないし、それに無料で治療することは、国家資格を持った他の鍼灸師の為にならない。

将来的にそれを実現させる為の研究の一環として行い論文にまとめて有益性を発表する為なら良いのかもしれないが、残念ながらまだそこまで出来るだけのプランも無ければ、今は時間がない。

可能性は見えれども、それを実現する為にはまだまだ情報も足りなければ自分自身の力もたりない。自分にしてあげられることがあるのに、その能力があるのに、それを今、使うわけにはいかない。そんな環境に僕はいます。もどかしいです。

でもいつの日か、僕が今見ている可能性を実現させられる日が来たら、
きっと、患者さんにとっても医師にとっても鍼灸師・あマ指師にとっても良い環境が作れると思ってます。今は胸の中にその可能性ある未来への期待を留めておこうと思います。


多くの人が知らない鍼灸・マッサージの保険治療について

訪問マッサージや訪問鍼灸治療が保険でカバーされるということは、世の中にそこそこ広がって来ているのではないかと思います。

特定の条件に合った人であれば、医師の同意書の元、鍼灸治療やマッサージ治療が保険を使って自宅で安く受けられるのですが、保険でそれらの治療を受ける際には制約が付いてきます。

施術を行う側の鍼灸師やあん摩マッサージ指圧師の中にも知らない人が居るかもしれませんが、保険を使って鍼灸やマッサージをする場合、同意書に書いた症状や疾患に対して医師から飲み薬や塗り薬、貼り薬といった処方薬を出してもらうことが出来なくなります。

なので、患者さんは、鍼灸やマッサージを保険で受ける場合は医師が同意書に書いた症状や病名に対して痛み止めの薬や湿布などの処方を医師の診療で出してもらえなくなることを了承する必要があります。

逆に言えば、痛みなどの症状に対して処方薬が出ている場合は、保険を使った鍼灸治療やマッサージ治療は受けられないということになります。


現状、日本の医療現場では、同一の症状に対して処方薬を出すことと鍼灸治療・マッサージ治療を保険で同時に行うことが出来ません。

様々な論文で薬を飲みながら鍼灸治療を受けることのメリットが証明されて来ている現代において、この制度は変えるべきものだと個人的には思いますが、制度改革がそこまで追いついていないのが現状です。


それは、鍼灸治療や医療としてのマッサージの効果についてのデータ、エビデンスが全然足りていないからというのが大きな理由の一つかもしれません。


医療の国家資格である鍼師、灸師、あん摩マッサージ指圧師という資格が、
西洋医学の制度と一緒に使えない、あくまで東洋医学という別物として捉えられてしまっていることは、患者さんにとってもマイナスなことだと思います。


そこは今後鍼灸師・あん摩マッサージ指圧師が努力をして変えて行けるように行動していくべきことかと思います。少なくとも僕はその為に動こうと思っています。


医師の訪問診療の現場で鍼灸師が
出来ることと出来ないこと

少し仮定の話をします。

もし、医師の訪問診療に鍼灸師が同行して、その場で合法的に鍼灸治療をし、それが保険診療として請求が出来るようになったとして、何が出来て何は出来ないかという話をしたいと思います。

医師の訪問診療と同時に鍼灸治療が出来るのは、5分から10分の簡単な治療とどの治療が効いてどの治療が効かないのかを判断することだと思います。

ここでのゴールは症状を取り除くことでも治すことでもありません。
あくまで何が効くのかを見極めることです。

しかし、それが出来るだけで大きなメリットがあります。
それは、どの薬や漢方薬が患者さんに効く可能性があるのかをその場である程度判別出来る点です。

医療現場において医師が処方をする際、最初の処方が完璧に決まる場合は多くないです。
大抵の場合は、とりあえず処方してみてそれが合わなければ薬の量を変えたり、薬を変えて状態をみることになります。

簡単に言うと医師が薬を出して患者さんを診ていく場合、
1度や2度の治療で診療が完結するわけではなく、
数週間、もしくは数ヶ月単位のスパンで考えて処方して行くこととなります。
時には、薬が身体に合わず状態が悪くなることもあります。

その際にもし鍼灸治療を使うことで病態把握がその場である程度出来るようになれば、医師も状態に合った処方がしやすくなる可能性があります。


ただ、それを可能とする為には、中医学的診断や漢方薬を処方する際の診断と西洋薬を処方する際の診断法のすり合わせをする必要があると思うので、
最初から上手く行くわけではないと思いますが、もし実現すれば医師にとっても患者さんにとっても良いものとなると思います。


あくまで僕の予想の話ではあるんですが。

逆に出来ないことは、
多くの鍼灸師・あん摩マッサージ指圧師さんが治療院などでやっている時間をかけた治療です。

医師の訪問診療の場合、
患者さんの自宅にいる時間は、20−30分程です。
その中で患者さんとご家族の話を聞き、
血圧を測ったり、聴診を行い、体の状態を見て、
処方を決めカルテを作成します。

必要があれば採血を行ったり、注射を行ったり、その他必要な処置を行います。
鍼灸師が同行したとして、治療にかけられる時間はだいたい5分、長くても10分ほどでしょう。

その中で出来ることはどうしても限られてしまうので、
医師との同行時は、検査と何が効いて何が効かないかの判断をするくらいしか出来ないと思います。

その上で分かったことを別で訪問治療をする鍼灸師・あん摩マッサージ指圧師に引き継いでしっかりと治療をしてもらうという流れが現実的なところでしょう。


医師の訪問診療と訪問鍼灸マッサージを一緒に運営しているような医療法人であれば、
鍼灸師が医師の診療同行する日と訪問治療をする日を曜日で分けて行うなど、両方の業務を行うようにして、メリットを最大限に活かすことが出来る様になるかもしれません。


どうやら、整形外科の医師がそれと似た感じで、病院で診る患者さんに対して鍼灸治療やマッサージ治療を保険を使って行なっているところもあるみたいですが、医師の診察時に鍼灸師が同席しているわけではなさそうです。

個人的には、医師の診療時に鍼灸師がいて東洋と西洋両医学の見地で診察が出来れば、
患者さんにとってより良い治療が出来るようになると思っています。
実際にその可能性を訪問診療の現場に入るようになって感じています。


これを実現させるには、医師と対等に話せる鍼灸師が居なければなりません。
果たして今の鍼灸師の中に医師と対等に医療の話が出来て、東洋医学の内容を西洋医学しか知らない医師にわかりやすく説明が出来る人が一体どれほどいるのでしょうか?


西洋薬に関して医師と最初からまったく同レベルになる必要はないし、
むしろそれは無理だと思うので、最終的な判断は医師に任せて、処方のプロセスに関わるお手伝いをするという認識を持つくらいが良いかと。

訪問診療に同行する鍼灸師・あマ指師の役割は、患者さんの心と身体のケアと症状のその場での緩和とさまざまな身体所見を読み取り患者さんの状態把握をしてそれを医師へと伝えることだと思います。

それらすべてを医師が一人で出来るのであればそれが1番だとは思いますが、
西洋と東洋両医学をすべて理解するには生半可な努力では無理だと思いますし、
時間がとてもかかってしまうので、そのような医師をたくさん育てるのは効率が悪いでしょう。

それよりも多職種連携という形で、医師と密接な連携をとれる存在に鍼灸師・あマ指師がなることの方に僕は可能性を感じます。

人によっては、医師の下には付きたくないという鍼灸師もいるかもしれません。
西洋の医師が居なくても、どんどん患者さんを治していける腕の良い鍼灸師も居るでしょうし、そういった方の存在も大切です。

しかし、そうじゃない鍼灸師だって居るはずです。

その時に、訪問診療を行う医師の横に立つ鍼灸師というポジションは新たな可能性を見せることが出来るのではないでしょうか?


鍼灸師が訪問診療の現場に立って見えた可能性

鍼灸師が訪問診療の現場に医師と共にいる事に大きな可能性を感じます。
医師との信頼関係を構築した上で鍼灸師としての知識や技術を使えるようになれば、
患者さんにとっても医師にとっても鍼灸師・あマ指師にとってもメリットのある体制が作れるのではないかと思います。


乗り越えなければならない壁はたくさんあります。
特に法律の改正をしなければならず、ここを乗り越えるには生半可なことでは無理でしょう。
しかし、僕がその先に可能性を見出し、新しい鍼灸師の働き方が見えていることは紛れもない事実です。

それが空想に終わる可能性も多分にあります。
それでも実現させることが出来れば、日本の医療業界にとって大きなメリットをもたらす可能性があるのではないかと思っています。

現在の医療に上手く鍼灸を取り込むことが出来れば、医療費の削減、患者さんのADLの向上、ひいては介護費用の削減に繋がるかもしれません。

また、医療現場で医師の元で鍼灸師が学べることがたくさんあります。
それは、鍼灸師にとって西洋医学を身をもって学べるということであり、
その経験は将来的に鍼灸院を構えて治療をすることになったとしても大いに活きて来るでしょう。

逆に医師にとっても自分にはない東洋医学の見地でどう患者さんを診るのか学べる機会が現場で出てくるということでもありますので、間違いなく学びが増えるでしょう。

その先に待っているのが、真の意味での統合医療であり、西洋と東洋の両医学の統合なのではないかと個人的に考えています。


治療がしたい鍼灸師にとっては、治療をする機会の減少に繋がりますので短期的に考えれば魅了的に映らないかもしれませんが、長期的な視座で見れば、鍼灸師が訪問診療の現場に入って医師との同行業務をすることにはとても大きなメリットがあるのではないかと思います。

僕は今、鍼灸治療・医療目的でのマッサージ治療をする機会が全然なく、訪問診療の為の同行業務と事務業務しか出来ていませんが、
近い将来に、週2-3で訪問診療の同行をしつつ、週2−3で自身でも訪問治療に行くという鍼灸師・あん摩マッサージ指圧師の働き方の確立が出来るのであれば、
それは、鍼灸師の今までの働き方にはほとんど無かった働き方のひとつとなりますし、大きな可能性を秘めたものになり得るのではないでしょうか。


キャリアの先を見据えて

最後に、医師の訪問診療の同行業務をやることにしたとして、
その先にどのようなキャリアが待っているのかの話もしておこうと思います。


一般的な鍼灸師のキャリアというと、
終わりがほとんど決まっており、そもそもステップがほとんどないでしょう。

鍼灸師の最終キャリアの選択としてあげるとすれば、
独立開業をして聞こえ良く言えば一国一城の主になる治療院の開業という道、
給料と仕事の安定感を求めるのであれば、教員になり、鍼灸学校に就職して学長を目指すもしくは雇われのままで行く道、
多くの従業員をかかえる多店舗展開をして会社の運営を行う、言わば経営者になる道、
くらいではないでしょうか?

成功する鍼灸師のキャリアの最終地点は、
自分の治療院を構えて治療のみする道、
たまに講師として学校で教えながらも細く長く好きなように治療をして暮らして行く道か、
治療院の多店舗経営、もしくは鍼灸に親和性のある別の事業の経営を行う道、
あとは大学などで研究者として働く道の4つに集約されるのではないかなと。

それ以外は、雇われ鍼灸師として鍼灸院や訪問鍼灸マッサージの会社に雇われて定年を迎えるか、途中で鍼灸師を止めるかでしょう。

僕の学生時代は、鍼灸学校に通う人の3割しか鍼灸師として残らないと言われていたので、
おそらく最終的に残る鍼灸師さんというのはほぼ独立開業した人なんじゃないかなと予想しています。あとは、学校に残る先生方くらいでしょうか。


多くの鍼灸師さんが結婚や出産などのイベントの度に職を変えて行きます。
それが悪いことだとは思いませんし、自分が望むような道に行けるのであれば生涯ずっと鍼灸師である必要はないと思いますし、鍼灸師として学んだことはきっと人生の中で活き続けるでしょう。


ただ、せっかく取った鍼灸師の資格と知識を活かせる場が他にもあるのなら、そういった道を提示して行くことも鍼灸師になった者の、先人としての役割なのではないでしょうか?

ということで、もし鍼灸師が医療事務という職に就き、ステップアップして行った先にどのようなキャリアが待っている可能性があるのかを提示させて頂きます。


医療事務のキャリアのいくつく先の一つは、事務長です。
事務作業をしているので、そのあたりの知識は間違いなく付きます。
その上でステップアップして行けば、将来的に病院の事務長、医療法人の事務長というポジションが見えて来ます。

病院と言っても大きさは様々なので一概には言えないですが、
可能性として総合病院などの大きな病院の事務長になる可能性もあるでしょう。

個人的に鍼灸師で西洋医学の知識も豊富で東洋医学の知識も豊富な人が大きな病院の事務長になった時、その病院でこそ真の統合医療の実現ができるのではないかと思います。
東洋医学に対する深い理解を持つ事務長なんてそうそう居ないでしょうから、そういう人が現れれば、大きな可能性を感じずにはいられません。


別の道として、医療事務職を経験し様々な知識と経験を積めば、
コンサルティング業を行えるだけの知識を身につけることが出来るでしょう。

もちろん、個人の力量に大きく左右されることになりますが、
病院などのコンサルティング業をする会社に就職するという道が出て来ます。

正直言えば、この道は鍼灸業界から離れてしまう可能性が大きいかなと思いますが、
そういった方が出てきて病院と鍼灸業界両方のコンサルティングをするようになるとそれはそれで面白いことを生み出すんじゃないかなとも思います。


これからの世の中を考えれば、訪問診療の現場にはどんどんIT技術が入ってきます。
実際、僕が働く医療法人でも多くのITツールが導入されています。
そんな医療×ITという職場で経験を積めば、医療×ITという方面でのキャリアの形成も可能となるでしょう。その先には大きな医療IT会社への就職など、また新たな道も見えて来ます。

一つ言えることは、医療事務職に来て経験を積みキャリアを積み上げて行った場合、鍼灸治療を行う現場からはどんどん離れて行ってしまいます。

もちろん、個人で小さい輪の中で自費治療を普段の仕事とは別で行い続けることも出来ますが、医療事務という職場に来るということは、現場から管理職へ、言わば環境作りをする方へとシフトすることになります。

患者さんと向き合い、治療を通してその患者さんが幸せになって行くのを見れればそれでいいと言う人には向かない道でしょう。
それでも誰かが環境を作って行かなければ、鍼灸業界が向かう先に待ち受ける未来は明るいものでは無くなってしまうのではないでしょうか?


終わりに

僕は、鍼灸が好きです。
良く効くことを身をもって経験してますし、
鍼灸師として臨床で多くの患者さんを治して来ました。

素晴らしい技術だと思います。
だからこそ、その素晴らしい技術がより活躍できる環境を整えて、
頑張っている鍼灸師が報われる環境を作り、
これから鍼灸師になることを目指す人々が報われる環境を誰かが作って行かねばならないと思います。

それは西洋医学の外からでは難しい、
むしろ外からだけでは無理なんじゃないかなと僕は思います。


だからこそ、鍼灸業界の外であり、医療業界の中から変えていける鍼灸師がもっと増えるべきなんじゃないかと思います。

その道の1つが医療事務職なのではないかと個人的には考えています。
ある程度の技術と知識を持った鍼灸師が医療事務になった時、
良い意味で化けると思います。

鍼灸師が訪問診療の現場に入ることが増えれば、
地域医療の現場に新たな風を吹かせ、新たな可能性を見せることが出来るんじゃないかと僕は思います。

鍼灸師で医療事務職になり、事務長になり、病院経営に入って行く人はまだほとんど居ないと思います。
今から入ればその道の第一人者になれるかもしれません。

臨床現場での経験や東洋医学の知識が足りない新卒者では、こちらのフィールドに来ても何も出来ずに終わるかもしれないので、正直新卒ですぐに医療事務職に就職することはお勧めしませんが、数年臨床を積み、知識と技術と自信を得た鍼灸師で、
環境作りを行なって行きたいと考える人にとっては、学びもあり、チャレンジもあり、良い環境になるのではないかと思います。


僕がこの領域であと何年やるのか、
将来的にどのようになっているかは分かりませんが、
しばらくは在宅医療に関わる鍼灸師として、医療事務として、
今までに無い地域医療の形成ができるよう頑張って行こうと思います。

願わくば、僕と同じように大局的に見て鍼灸業界を変えて行こうと思う人が増え、
同じように西洋医療側に入って変えて行こうと動く人が増えたらと思っています。


このnoteを読んで胸に刺さるものがあり、
医療事務として働いてみたいという方は、ぜひご連絡ください。
一緒に働いて行けたら嬉しいです。
そして、いつの日にか、日本鍼灸業界を変え、
統合医療の実現を目指せたらと思っています。


2020年3月13日

松永光将

医療法人笑顔会
スマイルコンシェルジュ

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