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マイナスから新しいものを生み出す【エコロジカルアーティスト・高田雄平】

2022年8月5日から香川県三豊市の三豊鶴で実施される「酒蔵Art Restaurant」
150年前に作られた歴史ある酒蔵の中に、現代アーティスト23名による作品が展示・販売されるほか、シェフ8名が週ごとにコース料理を振る舞います。

今回は、8月26日(金)〜28日(日)に在廊するエコロジカル・アーティストの高田雄平(たかだ ゆうへい)さんをご紹介します!

1983年兵庫県生まれ、兵庫県尼崎市在住
エコロジカルアーティスト。AU所属

2022年三木市堀光美術館 個展、2021年京都国際映画祭等4つの芸術祭と芦屋画廊Kyoto等5つの個展、2020年アマビエ展を企画、百貨店など10カ所巡回展、、、
常に発表し続け、毎年新しい課題を一つ作って取り組むことで、生み出す作品を昇華させることを目標にしています。新聞紙を使用しているが、そこに書かれている内容に傾かないように、絵の具のように作品に使用しています。

※AU…兵庫県を中心に活動しているアーティスト団体。正式名称はArt Unidentified。前身はアーティスト・ユニオン(Artist Union)という名前で、1960年代に活躍したジャンルを超えたアーティスト達が結集して1975年に結成された。

※嶋本昭三…具体美術協会の設立メンバーで、世界4大アーティストに選ばれた芸術家。具体の精神「人の真似をするな。今までにないものを作れ。」嶋本の「人を驚かせること。」をモットーに、2013年に没するまで、歩みを止めることなく制作を続けた。大砲を使って炸裂させて作る大砲絵画作品、瓶詰めした絵具をキャンバスに投げつける絵画作品、ヘリコプターから落下させたりクレーンに吊り上げられ落下し炸裂させて作るビン投げ絵画作品、世界最小芸術1億分の66.7mのナノアート作品、絵具を水面の弧を描くように何重にも落として描く渦巻き絵画作品、作品を破く穴の作品など、創造的なアートを世界にアピールし続けた。

大学時に廃材アートと出会う

ーエコロジカル・アーティストとして現在精力的に活動していらっしゃる高田さん。ここに至るまでの経歴を教えてください。

幼稚園くらいから物作りが好きでして、芸術家になるのは本当に小さい頃から決めていました。作文にも書いていましたね。

その後芸術大学に進み、嶋本昭三先生に出会いました。先生は、「誰もやっていないことをする」ということをよくおっしゃっていたので、自分も他の人がやらないような、自分に合った制作手法を探していたところ、とある授業の中で、廃材を使うアートに出会ったんです。

「ゴミから新しいものを生み出す作業」をやっていて、その工程がとても面白いと思いました。「捨てられるはずのものが作品になる」「マイナスから新しいものを生み出す」ということに興味を持ち、廃材をテーマにしようと思ったんです。試行錯誤しながら色々な廃材を使ってみる中で新聞紙に行きついて、今の作風になりました。「これが自分にあった作品制作だ」と感じる瞬間があったんですよね。

現在、廃材を使ったアートをやっている人はたくさんいますけど、やはり皆さんすごいものを創られています。廃材アートは一つのジャンルとして成り立っていると思います。

AUは、嶋本先生の初めての授業で紹介され、18歳の時に入ったので、もう21年経ちます。大学に入るまでは、「現代アート」ということを気にせず制作していたのですが、嶋本先生に出会ったことをきっかけに意識するようになりました。

これまで取り組んできた作風について

ー作品には英字新聞と日本語の新聞、両方使っていらっしゃるんですか?

最初はずっと日本のものばかり使っていたのですが、海外へ行く度に持って帰ってくるので、英字新聞も使うようになりました。毎年海外に行っているので、どんどん溜まるんですよね。また、周囲の人が海外に行くたびにお土産として海外の新聞を持って帰ってきてくれるようになったので、永遠に溜まっていくという(笑)ここ2、3年は海外に行かないので溜まらないですけど…

海外でイベントをやる時には、古新聞を事前に集めておいてくれるんです。特に大きいインスタレーションをやるときには日本から材料を持っていくのが大変なので、数ヶ月前から集めておいてもらって、余ったら持ち帰れるだけ持ち帰ってきています。

ー新聞以外の廃材を使うこともあるんですか?

その時々で、依頼があったら新聞以外を使うこともあります。ある時には、売り物にならない日焼けした織物で大きな龍を作り、上海で展示しました。企業さんから材料をもらうときもあります。例えば、襖紙、和紙、ジーンズの生地など…工場から大量に素材が出てくるんですよね。

折り紙は小学校から好きでよくやっていました。そのおかげで、立体を作ったり、空間を作ったりする思考回路になったかな。オリジナルの折り紙を作ると「ここを折ったらこうなる」という工程がイメージができるようになるので、立体作品を作るのに重要なスキルが身につきました。自分の中では根底にある部分かもしれません。

ー平面作品、立体作品両方作られているんですね。

特にこだわりはなく、その時に思いついたものを作るので、平面もあるし、立体もあります。立体は結構なテーマがないと作らないかもしれないですね。

例えば、グループ展に参加する時には、その展示のテーマが決められていることがあります。先日「蚊遣り豚と縁起物展」に参加した時には、立体の達磨の作品を作りました。野外展示の際には、やはり平面より立体の方がいいなと思っていて、場所によって作り替えています。芸術祭に参加する時にはその町からイメージして作ったり、歴史から汲み取って立体作品を作ることもあります。

ー龍をモチーフにした作品が多いようですね!

元々平面作品ばかり作っていた時に、立体を初めて作ろうと思って、最初に「手」を作りました。その後、モチーフを決めて作り始めた時に最初に選んだのが「龍」だったんです。上手くできたので、しばらく龍のモチーフを続けていた時に、嶋本先生のコーディネーターの方に「龍を続けた方がいい」とアドバイスされました。龍はどの国にも通じますし、イメージすることが大事とのことで…その後は10年くらい龍だけを作っていました。

僕のことを「新聞の作家さん」と呼ぶ人もいれば、「龍の作家さん」と呼ぶ人もいます。龍は代名詞になっていますね。

今回ペイントした樽の作品について

ー三豊鶴の酒樽にペイントしていただいた龍についても教えてください。

いつも僕が書いているのは昇龍です。各地で展示する際にもこの昇龍を描いている流れで、このこの龍が今回は香川に旅をしている、というイメージで制作しました。

普通に絵を描いても意味がなくて、何かしら新聞紙を使わないといけないなと思っていまして…新聞を丸めて色をつけ、くるっと回すようにして龍の鱗を描いています。

以前は新聞で筆を作って龍の顔を描いたこともありますが、これだと綺麗に描けないんです(笑)鱗だけは瞬間芸と言いますか、あっという間にできるので、場を盛り上げるイメージで、最後の仕上げのパフォーマンスとしてやっています。

今回展示する作品のコンセプト

過去作品

ー今回三豊鶴で展示する作品について教えてください。

今回メインで展示する100号サイズのものは、「DIMENSION」という組み替えができる作品を作ろうと思っています。1枚の絵ではあるんですが、5つのパーツに分かれていて、組み替えて形が変わるんです。パーツごとに接合の点があり、動くようになっています。

あとは、10号くらいの作品を3点、小さいものを5点くらい用意します。酒樽の作品に合わせて「龍の鱗」が何点か、「新聞紙のこよりを使った平面作品」、「無意識にドローイングの線を描き、それに合わせて新聞を切りはりし、抽象的な柄にする作品」などの予定です。

ご来場いただく方へのメッセージ

見にきてもらった人に楽しんでほしい、というのが一番ですね。その中でも、自分の滞在する8月26日〜28日に来てくださる方とは、ぜひおしゃべりしたいです。作家がどんな感じで作品を作っているのか聞いてもらえたら、どうやって生きてるのかわかってもらえるかなと思います。

好きなことをやっているのは前提なんですが、やはり、アートを仕事としてやっていくのは大変です。煌びやかなところだけではない部分についてもお話ししたいと思っていて、深い話もできたら面白いですね。楽しみながらコニュニケーション取れたら嬉しいです。

三豊鶴「酒蔵Art Restaurant」とは

皆様のお越しをお待ちしております!