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万物の営みを表現する【飲食従事者兼画家・小野伸介】
2022年8月5日から香川県三豊市の三豊鶴で実施される「酒蔵Art Restaurant」。
150年前に作られた歴史ある酒蔵の中に、現代アーティスト23名による作品が展示・販売されるほか、シェフ8名が週ごとにコース料理を振る舞います。
今回は、9月23日(金)〜25日(日)に在廊する飲食従事者兼画家、小野伸介(おの しんすけ)さんをご紹介します!
プロフィール
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1985年香川県生まれ。香川県高松市在住
言葉だけでは伝えきれない想いや解釈を表現する方法をあれこれと取り入れる中で、今現在の絵画表現に落ち着き取り組んでいる。2021年夏から本格的に描き始め、同年12月に初の個展を開催した。
幾重にも折り重なる様々な人や動植物の営みを、出来るだけ直感的な色彩で表現しています。何気ない瞬間から広がる無限の営みを見た方々が想像し歴史に触れるきっかけになることを願い描いています。
アートへの憧れからコロナ禍で作家活動開始
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ーこれまでの経歴について教えてください。幼少期から絵に触れていたんでしょうか?
画家としては、2021年12月に個展を開催したことがスタート地点だと思っています。絵はずっと描いていたのですが、憧れているものにちょっと触れてるくらいの関わり方だったんです。
幼稚園入るか入らないかの時に、落書き帳に映画やテレビで見た筆記体みたいなものをずっと書いていました。おそらく、ぐちゃぐちゃに書いていただけなのですが、当時の自分からすると、「描けた!」と思ったんですよね。それで、親に見せたところ、「この子、変なこと言い出した…」という感じで絶句してたんです。
その親のリアクションにショックを受けて、伝わっていないことが悲しくて悔しくて、「もっと上手く描きたい!」と思うようになりました。わかって欲しかったんですよね、むしろたくさん絵を描くようになった気がします。
また、幼稚園の時にみんなで動物園に遠足で行きまして、一番印象に残った動物を絵に描くことになりました。「カッコええ!」と思った彪を描いたら、先生が上手に描けてるよ!と褒めてくれて、クラスのみんなに見本として提示してくれたんです。すごく嬉しかった思い出ですね。
学校の宿題の絵は、下書きは楽しいけれど、色塗りは苦手意識がありました。自分の思ったようにできなかったんですよね。その経験が今書いてるものに繋がっています。
漫画も好きでしたし、画家もかっこいいと思っていました。「アーティスト」全般に漠然と憧れていたんでしょうね。音楽も好きでした。ただ、ガッツリ絵をやろう、という感じではなく…
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大学時代から神戸に住んだのですが、当時はカフェに憧れていました。飲食自体をやりたいわけではなくて、カフェという空間が音楽やアートを許容してくれると思ったんです。カフェで個展したり、ライブしたりすることもよくありますよね。そういう空間にいたいと思ったんです。
そんな流れで、飲食の会社に就職し、希望通りカフェに配属されました。イベントをガンガンやる店舗だったので、DJイベントやライブイベントなどをよく開催していました。当時の同僚で絵や音楽を続けている人もいたので、刺激を受けていましたね。
香川に帰ってきてからは、高松の飲食店グループで働き始めました。仲良くなったお客さんに誘われたことをきっかけに猪熊弦一郎美術館に通うようになり、またアートとの距離が近くなったような気がしましたね。
そのうち実際に作家活動している人とも知り合う機会も増えてきて、2018年には「SO」というグループ展を開催しました。普段アートに接することがない人や、アートの勉強をしたことがない人にとって、アートの入り口になるような場所・時間にすることが目的でした。自分自身が専門的に勉強したことがない中で、それでもアートについてあーだこーだ言っていいのかどうかを証明したかったんです。
内容としては、ワークショップをできる人にやってもらったり、ライブペイントをやってもらったり、キャンバスを用意して来場者に色をぶつけてもらって自由にアートを作ってもらう参加型アートもやりました。アートって簡単に見えて、実際にやってみたらその凄さがわかると思うんですよね。とにかくアートに触れてほしい、やってみてほしい、という気持ちでした。結局作品にリアクションしていくのは、芸術について特別な教育を受けていない人も多いと思うんです。その人たちがもっと楽しめるべきなのではないかと思っています。アートの入り口のハードルを下げつつ、アーティストに対してはリスペクトを持ってもらいたいなと。
イベントタイトルの「SO」には、想・創・奏・層・装などのいろんな意味を込めています。たまたま自分のイニシャルがS.Oだったのは後から気づいて恥ずかしくなりました(笑)
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第一回目のイベントの時に準備しながら、「自分もやりたいな」と思うようになり、友人の写真を印刷してそこに何かをする、というスタイルで「オネムス」というユニット作品の展示をしたり、会期中に自分一人でも作品を描きました。現在もシリーズ展開している「無秩序の中の秩序」の第一作目ですね。色塗りはまだ苦手意識があったのですが、色自体は好きだったので、キャンバス一面塗ってみたんですがしっくり来ず…その上にペンで線を引いてみたらいい感じになり、今の書き方のベースになっています。
これが初めてキャンバスに描き切る経験で、ものすごい快感でした。達成感がすごくて、ゾクゾクしたんですよね。
その後、コロナ禍で飲食店が休業することになり、1ヶ月弱まとまった時間が取れるようになりました。これまでやっていなかった筆で描き切ることに挑戦してみたところ、自分が思っていた以上に上手く描けたんです!そこから取り憑かれたように描き出して、風景画や人物画にも挑戦し、とにかく楽しく制作していました。
SNSにもその様子をアップしていたところ、ギャラリーを運営している友人に誘ってもらえて、急遽個展が決まり、現在のような作家活動に至る、という感じです。機会に恵まれて、何も考えずに乗っかれたのがよかったですね。現在も飲食店で店長兼シェフをしながら作家活動に取り組んでいます。
ー幼少期からずっと心の中にあったアートの火種がどんどん大きな炎となって、今の活動となっているんですね!
植物の営みを表現した「無秩序の中の秩序」
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ー作風について教えてください。何を意識して制作しているんでしょうか?
自分が何を表現し、何を源としているかという点でいうと全部一致していまして、「万物の営み」なんです。実際に個展は「activities(営み)」をテーマに開催して、人の営みや植物の営みなどをイメージしています。
結局、人が何か考え、行動し、選択するというのは、全て色々なものの営みが折り重なった結果だと思うんです。どんなものにも「営み」がバックボーンにあるんですよね、これを抽出したいと思っています。
「無秩序の中の秩序」について言うと、人の手が入っていない山の中に入った時に、草木が生い茂ってごちゃごちゃに見えるけれど、よくよく考えたら、すごく育ってるものとそうでないものがあって、環境に合わせてなるべくしてなっている様子を表現しました。これはある種、秩序だった行為というか、それぞれがこうあるべきだよね、と言うルールの中で木々が生きているんですが、人間がパッとみるとごちゃごちゃの無秩序に見えるので、「無秩序の中の秩序」と言うタイトルなんです。
描き方としては、まずキャンバスに色を塗ってみて、そのアクションに対して「この色がほしい」と言うリアクションをして、その積み重ねで色が埋まっていきます。次に、何か一つ線を描いてみるのですが、次こう描きたい!こうしたい!と言う感じでどんどん線が増えていくんですよね。前の行動に対するリアクションで作品が出来上がっていくことで、万物の営みを表現できるのではないかなと思って制作しています。
今回展示する作品のコンセプト
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ー今回展示する作品について教えてください。
今回は「無秩序の中の秩序」のシリーズに加え、「オールドマンシリーズ」も展示します。合計12点になる予定です。
個人的におじいさんを見ているとキュンキュンするんです。年月を経て色々な経験をしていて、鋭利に尖ってる部分もあり、丸みを帯びて柔らかく温かいものになる部分もあり。人はみんな大なり小なりあると思うのですが、特に老人だとよく伝わってくると思っています。「オールドマンシリーズ」は、老人たる風貌で人の営みを伝えるのにぴったりだと思っています。
ご来場いただく方へのメッセージ
来てくださった方に、想像・妄想してほしいと思っています。いろんなアーティストさん、シェフさん、運営メンバーに対してもそうですし、三豊鶴という建物に対しても、そこでどんな営みがあるか妄想してほしいと思います。
作品自体を妄想しながら見ることで、アーティストの想いを妄想してみてほしいです。真面目に妄想していくと、なぜその道具を使ったのか、なぜこの色を使ったのか、自分の中で見える場合もあると思いますし、たまたま感性とリンクするような表現をしているものをキャッチすることもできると思います。
特に、アートの経験がない人や、逆に自信がある人にも改めて妄想することを意識して見てほしいなと。happyな方向に行く妄想をしてほしいですね!
三豊鶴「酒蔵Art Restaurant」とは
皆様のお越しをお待ちしております!