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三豊鶴のTsukumogami(付喪神)【Luca ROMA】

2022年8月5日から香川県三豊市の三豊鶴で実施される「酒蔵Art Restaurant」
150年前に作られた歴史ある酒蔵の中に、現代アーティスト24名による作品が展示・販売されるほか、シェフ8名が週ごとにコース料理を振る舞います。

今回は、8月6日(土)〜7日(日)に在廊する彫刻家、Luca ROMA(ルカ・ローマ)さんをご紹介します!

プロフィール

1972年イタリア・ミラノ生まれ
香川県三豊市在住
彫刻家

ミラノ・ブレラ美術学彫刻科卒業後、2000年に来日。2003年高松市にアトリエを開く。現在は木・鉄等を中心に体全体を使って感じる事の出来る作品創りに努めている。芸術士として幼児教育に携わっている。
素材から感じる声をきちんと聴いて自分のやりたい方向にしっかりと繋げていくことを意識して制作している。

これまでの作家人生について

小豆島での展示の様子

ーイタリア生まれのルカさん。イタリアの学校ではどんなことを学んでいたんですか?

大学では美術全般、現代アートや古典美術なども学んでいましたが、当時興味あったのは特殊効果(special effect)でした。ですから、映画で使われるようなモンスター、ロボット、パペットなどを彫刻で作っていたんです。材料も油粘土やシリコン、ガラス繊維などを使っていました。

友人達は皆、ミケランジェロやピカソ、レオナルド・ダヴィンチ、レンブラントなどの作品を見ていましたが、自分はターミネーターやスターウォーズなどのSF作品が好きでよく見ていたので、学校はちょっと合わなかったかも(笑)

子どもの時から文学や物語にずっと興味がありました。(イタリアの文学である)ピノキオや妖精の話、ギリシャ神話など民間伝承なども大好きでした。高校時代からは映画にハマり、ファンタジーやSFの本もたくさん読んでいました。
その点で、特殊効果の彫刻制作は自分に合っていたと思います。

ーその後、2000年に来日されましたが、なぜ日本を選んだのでしょうか?

子どもの時から細く長く20歳くらいまで、柔道をやっており、20歳以降は、合気道も始めました。技だけではなくて、武道の文化や魂、伝統についてを知りたかったので、日本人の先生を探していましたが見つからず。

本を読んで勉強をしましたが、「実際のところどうなんだろう?」「本物の武士道って何だろう?」「刀は本当にあるんだろうか?」「侍とは何なのか?」という疑問が大きくなり、実際の日本を見たくて、大学卒業後に来日しました。ですから、最初の目的は武道を習うためだったんです。

いざ来てみると、想像していた日本とは大きく違ったので、かなりショックを受けました。専属の内弟子をとっている道場はありましたが、自分はいろんな武道をやりたかったので、合気道メインでやりつつも居合道や薙刀、少林寺、剣道など、いろんな先生のもとで習っていました。

小豆島での展示の様子

ーなぜそんなに武術が好きでハマっていたんですか?

最初は護身術の一環として始めたんです。どんどんやっていくうちに、道を極めたくなりました。
子どもの頃から周囲に気を使って優しくするのが当たり前の環境で生きてきましたが、そのままだと本当に危ないところでは負けてしまうと思い、護身術を学びたかったんです。

日本へ来て、30歳を過ぎた頃、仕事も始まり、100%トレーニングに時間を割くことができず、内弟子にもなれなかったので、仕事として彫刻を始めたんです。彫刻道を極めようと思いました。

実は、武道のコンセプトや、好きな物語のことをを彫刻にも取り入れているんです。例えば、去年から今年の木彫りの作品のテーマは「螺旋」です。「螺旋」というのは、合気道の中でも大事なポイントなんです。

ーこれまでの経験が、現在の彫刻活動に繋がっているんですね!

そうですね。日本に来たので、日本の民間伝承(天照大神など、日本神話)も勉強しました。いろんな材料が好きですが、木と鉄が一番好きで、最近はその二つを中心に彫刻制作をしています。付喪神についても勉強しました。

Tsukumogami(付喪神)

ー2010年の粟島でのアーティストインレジデンスでは、「Tsukumogami(付喪神)」という大型作品を制作されました。

2010年に粟島に行って、制作のための調査をしていたときに、空き家をはじめとした放置されたものたち、道の脇に捨てられたスクラップ、バイク、車などをたくさん目にしました。もう誰も使わない、誰のものでもないような、錆びたものたちです。

その様子を見て、現代考古学をしているような気持ちになり、「これは付喪神になるだろう」と閃いて、作品を制作しました。古いものではあるけれど、現代のもの(大昔のものではない)。現代のものだけど、古い。そしてそれらは鉄のものが多かったので、集めて形にするといい雰囲気になりました。

展示コンセプト

ー今回の三豊鶴での展示について教えてください。

今回も、付喪神を作ろうと思っています。

三豊鶴に初めて行った時に、粟島の時と同じ感覚を覚えました。さらに、三豊鶴のメンバーが「この場所を大事にしたい!」と思って活動している話を聞いて、大きな付喪神を作るのにピッタリだったんです。

三豊鶴の倉庫から金属の部品を探し、その部品をぎゅっと集めた大きな付喪神を制作しようと思っています。金属メインで作りますが、雰囲気に合わせて他の素材も入れるかもしれません。ルールは特に設けず、雰囲気を一番重要視しています。

ご来場いただく皆さんへメッセージ

付喪神の他に、木彫りの過去作品もいくつか展示する予定です。
蔵の中と外の両方に作品を置くので、ぜひお楽しみに!

三豊鶴「酒蔵Art Restaurant」とは

皆様のお越しをお待ちしております!