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クリエータ紹介②:尾崎真大さん・宮脇智也さん - 空間図形問題を、問題文から3Dモデルに変換する革新

このnoteでは、福岡未踏的人材発掘・育成コンソーシアム(通称・福岡未踏)のプロジェクト採択者について、プロジェクトの詳細や福岡未踏にかける思いをご紹介します。

今回は、尾崎真大さんと宮脇智也さんのプロジェクト「数学問題文を入力とした 3D モデル自動生成システム」の、教育と技術の融合を目指す革新的な試みをお伝えします。

左)宮脇智也さん 右)尾崎真大さん

プロフィール

  • プロジェクト名:数学問題文を入力とした3Dモデル自動生成システム

  • 支援プランと期間:Grow(23年8月~10月)

  • クリエータ:尾崎真大さん(九州大学 工学部 電気情報工学科 4年生)、宮脇智也さん(九州大学 工学部 電気情報工学科 4年生)

これまでの歩み、来歴

尾崎さんは、子どもの頃に参加したロボット作りのワークショップで初めてプログラミングと出会いました。進路を選ぶタイミングになり、プログラミングへの興味が再燃した尾崎さんは、九州大学工学部電気情報工学科への進学を決意しました。大学ではAIと教育を組み合わせた研究に従事し、アプリ開発にも取り組むようになりました。

一方、宮脇さんの情報技術への興味の源泉を辿ってみると、幼少期のゲームへの興味から始まっているとのこと。「ゲームに触れるなかで、情報処理やITにも薄く興味を持っていたように思う」と振り返ります。宮脇さんもまた、進路を選ぶタイミングでAIを使ったロボットに強く魅力を感じ、九州大学工学部電気情報工学科での学びに辿り着きました。現在は自動車のLiDARセンサーに関する研究を進めています。

厳密に言えば二人の専攻領域は異なりますが、技術やものづくりに対する好奇心や熱い想いは共通しています。大学4年生はちょうど大学院の入試(院試)と重なる時期でもあります。福岡未踏に興味を持った同級生はたくさんいましたが、院試を優先し、福岡未踏への挑戦を見送るケースも珍しくありません。そんななか、尾崎さんと宮脇さんは「やってみよう!」と意気投合し、3ヶ月間のプロジェクトを完遂させました。

成果報告会の様子

プロジェクトの概要

「数学問題文を入力とした 3D モデル自動生成システム」は、数学における空間図形問題を3Dモデルに変換するという、教育分野における革新的な取り組みです。

尾崎さんと宮脇さんは、偶然にも二人とも塾講師のアルバイトの経験がありました。二人でプロジェクトのアイデアを検討する過程で、「空間図形について教えるのは難易度が高い」という共通の課題認識を持っていることに気が付きました。そこから、「その課題をAIの技術で解決できないか」という彼らの挑戦が始まりました。

「空間図形をバーチャルで生成する」という観点で、実はこれまで似たようなシステムがなかったわけではありません。しかし、操作にプログラミングの知識を要するなど難解であったり、そもそも操作に制約があったりと、必ずしも使い勝手の良いものではなかったと言います。

このプロダクトは、問題文をカメラで撮影するだけで、自動的に3Dモデルを生成。3Dモデルを自由に動かし全体を把握できるようにしたことで、学生が問題を視覚的に理解するのを支援することができるというものです。

福岡未踏への応募理由

彼らがこのプロジェクトに取り組んだのは、大学の授業での募集アナウンスがきっかけでした。宮脇さんには過去、ひとりでアプリ開発に取り組んでみたものの、モチベーションが続かず挫折した経験がありました。今度こそ納得がいくまでアプリ開発に取り組みたい、その思いを福岡未踏であれば実現できるのではないかと考えました。

尾崎さんにもまた、アプリ開発をしっかりとやってみたいという興味がありました。結果としてこのプロジェクトは、二人にとって技術への探求と新しい挑戦の機会をもたらすことになりました。

プロジェクト採択に向けた提案においては、具体的な教育現場のシーンを交えて課題を分かりやすく伝えたり、技術面での革新性に魅力を伝えられるよう工夫したと言います。

プロジェクトにおいて、尾崎さんはLLM(大規模言語モデル)による自然言語処理のバックエンドを、宮脇さんはフロントエンドを主に担当し、開発を進めていきました。大学の研究においては、学会の準備なども忙しいタイミング。一週間のうち4日を研究、3日を福岡未踏のプロジェクトに割くような形で、二人はプロジェクトを強力に進めていきました。

彼らは、もっとも大きな挑戦は、「問題文の解釈と自然言語処理の精度向上だった」と振り返ります。彼らはメンターの方とのコミュニケーションを重ね、指示の方法を変更したり、部分的にルールベースのアプローチを取り入れたりすることで、システムの安定性を高めようと努力しました。

プロジェクトを通じて、尾崎さんはプロジェクト管理やITコンサルティングへの関心を深め、宮脇さんはロボットや自動車の分野での開発を目指すようになりました。彼らはプロジェクトの進行とともに、自身のキャリアパスについても深く考える機会を得たと振り返ります。

3ヶ月間のプロジェクト期間を経て、一旦の終わりを迎えた本プロジェクト。彼らの卒論が落ち着いたら、外部に発信していくことも検討しているそう。論文として発表するなどの学術展開や、IPA未踏への応募も視野に挑戦していきたいと語ってくれました。

おわりに

「3ヶ月かけて、資金援助を得ながらプロジェクトを完遂させた経験が、今後の人生でモチベーションや自信に繋がった」そう語る尾崎さん・宮脇さん。単なる技術的な成果を超えて、彼ら自身の成長、学術への貢献、そして教育とAIの未来への可能性を切り開いているように感じました。彼らのこれからの活躍に、大いに期待したいですね。

担当PM 一番左)部谷修平氏、一番右)中村優吾氏とお二人

福岡未踏とは

福岡未踏的人材発掘・育成コンソーシアム(通称、福岡未踏)とは、福岡県在住の若手クリエータを発掘・育成し、クリエータの「何かを作るための第一歩」を支援し、また、IPA未踏と同等の支援に加え、複数のIPA未踏経験者からなるPM・メンター陣にて、プレ人材向けの支援を行います。

(文:五十川慈)