目の前で半額のホタテがなくなった私の嘆きを聞いてください
もう泣きそうなんです。
同情しなくてもいいから、私の嘆きを聞いて欲しいのです。
百貨店の海鮮売り場にあるホタテ。閉店1時間前くらいになると半額になります。
父親がおととい買ってきて、一つ私にくれました。プリプリしてて、肉厚で、そんなに磯臭くなくて……とにかく美味しいのです。元は1200円くらいで、結構するのですが、それが半額で食べられる。なんてお得なんでしょう。
わさび醤油をつけたらもう最高で、あぁ、私も百貨店のホタテを半額で買って家で食べたいなあ、と思っていたのです。
昨日は早く帰りたかったので、今日、わざわざホタテのためにバスを見送り、百貨店をうろうろし、その時を待ちました。
18時を過ぎた頃、海鮮売り場を覗いてみると。
でた!半額シールだ!!
が、そこで私が見たのは、二つのホタテのトレーを手にして、買うかうまいか迷っているマダムでした。
残っているホタテのトレーは残り二つ。まさにその二つを、買うか買うまいかジャッジしている所でした。
私は眼をカッと見開いて、
「そのホタテが欲しいんだよ!!一つでいいだろ!置いてけよ!ホタテ置いてけよ!そんなにいらんだろ!!なあ、置いてけよ!!」
と言わんばかりに、彼女の手元をじいぃっっっと睨みつけていました。
向かいを見ると、同じくホタテを狙っているであろうおじさんが立っています。
おっさん、あんたには絶対渡さないからな。
と、視線をおじさんにも向けます。
そして、気になるマダムはというと……
迷った挙句、トレーを二つとも持って行ってしまいました。
私は絶望しました。
売り切れじゃん。ないじゃん、ホタテ。
「虚」売り場じゃん。
頭の中が真っ白になりました。半額のホタテは売り切れ、マダムの手に渡ったホタテは、とうとう戻ってきませんでした。
私は、結局、値引シールが貼られてない、貝のお刺身盛り合わせを買うことにしました。半ばやけくそです。
そこにもホタテは入っているのですが、数は圧倒的に売り切れた方のが多いのです。ホタテ以外の貝も好きなのに、その時は満たされない心でカゴに入れました。
しばらくすると、私の中でふつふつと怒りが湧いてきました。私はいつも怒るのが遅い。今日も変わらずそんな感じでした。
ねえ、そんなたくさんホタテ買って何すんの?結構量あるよね?それ。
ひとつだけ買っていれば私も買えたかもしれないのに。そんなに買う必要ある?もう一回言うよ。そんなに買う必要ある?
なんだよ、なんだよ……くそっ、くそっ!!
私は「半額シールが貼ってあるホタテ」が欲しかったんだよ!定価でもない、20%引きでもない、半額のが!欲しかったんだよ!それをアンタ……二つも、二つも持っていきやがった!!むごい、むごすぎる。この世は非情だ。
二日酔い(自業自得)というステータス異常を付与されたまま、仕事してきた私にとって、これほど酷い仕打ちってないと思うのです。
バス待ちの間に吹く風は、身も心も凍ってしまいそう。何か温かいものが食べたい。春菊も買ったから、みそ汁にしちゃおう。でも、ホントならあの高いホタテが食べたかった。うう……。
来週行けば、あのホタテはあると思います。辛抱強く通っていれば、いつか買えると思うのです。半額シールのついた、あの、肉厚で、歯ごたえがあって、幸せいっぱいのホタテが。
もし手に入ったなら、胃腸が元気な時に日本酒と一緒にいただきたい。今の私のささやかな夢です。
今回の見出し画像は「みんなのフォトギャラリー」からお借りしました。
今日の出来事が悲しすぎて、絵が用意できなかった。そんな気持ちを和らげる優しい色遣いとタッチのホタテです。ご提供、ありがとうございます。
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