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【2期生紹介③】看護師の経験から広げたい、アロマテラピーの可能性

MiTOHOKU Program2期生紹介、3人目は東北大学医学系研究科の伊藤里美さんです。看護師の経験を経て大学院時代に「アロマテラピー」に出会い、アロマテラピーを緩和ケアに生かそうとアクセラレータープログラムに挑戦し受賞を重ねてきました。MiTOHOKU Programに応募を決めた伊藤さんの熱い想いと今後どのような世界を実現したいかについて伺いました。

〇プロフィール
伊藤里美さん
東北大学医学系研究科博士課程後期1年


緩和ケアの経験から感じたアロマテラピーの可能性


小学生の頃から「助けを求める人を助けたい」という思いで看護師になることを目標としていた伊藤さん。東北大学医学部保健学科を卒業後、看護師として3年間、緩和ケア病棟で勤務しました。完治が難しいがん患者さんの病棟で患者さんのケアをしていましたが、患者さんの痛みを取り除こうと思っても簡単には治らないことや、患者さんが穏やかに死を迎えられないことにもどかしさを感じたこともありました。
伊藤さんは、緩和ケア分野の研究をするため、2022年4月に大学院へ進学。そこで出会ったのがアロマテラピーでした。自分自身がハンドマッサージを受ける機会に恵まれ、ハンドマッサージの温かさ、アロマの香りのよさや心地よさに触れます。これを緩和ケアの患者さんにも体験してもらえれば、患者さんが痛みの中でも気を紛らすことができたり、あるいは症状を和らげることができたりするのではないかと強く思うようになりました。
実際に、アロマテラピーにはがん患者の不安感や抑うつ症状などの精神的症状だけでなく、がんに伴う痛みなどの身体的症状、抗がん剤等の副作用も緩和すると研究で証明されていることもわかりました。

伊藤さんは仲間と一緒にアロマテラピーを看護師に広めるためのプロジェクトを開始。東北大学基金主催のクラウドファンディング「ともプロ!2022」に参加し資金を集め、2023年8月に看護師に対してアロマテラピーについての講習を行いました。

https://www.kikin.tohoku.ac.jp/project/tomopro/2022/pj_008_2022

アロマテラピーと出会って、ここまで1年ほど。順調にプロジェクトは進んでいたように見えますが、伊藤さんはここで行き詰まりを感じました。それは、医療現場に医薬品ではないアロマを広げようとするときのハードルが非常に高いということでした。地道な啓蒙をするのもいいがそれでは広がらない。何か打開策はないか、と考えていた時にたどり着いたのが、「ビジネス」という方向性でした

起業家育成プログラムで自分がやりたいことと向き合う

伊藤さんはメンバーの誘いで一般社団法人EONorthJapanが主催する起業家育成プログラム「MIYAGI INNOVATION BASE(MIB)」に参加。それまで全く無縁だった「起業」や「ビジネス」について知り、さらには起業家のメンタリングを受けることで自分がやりたいことを真剣に考え、自分の人生理念やビジネスモデルが明確になったといいます。そして最終のプレゼンテーションでは、アロマテラピーを広げていきたいというプランを堂々と発表し宮城大会で優勝。さらには、東北6県の代表が集う決勝大会でも優勝を果たしました。

このプログラムに参加した経験は、伊藤さんに変化をもたらしたと言います。その変化とは、失敗しないように戦略を練ることも重要だけれども、まずやってみる、行動してみるということ、困ったら積極的に人に相談することの大切さに気づいたということです。特に相談するということは、他人の時間を使わせてしまうのではないかと躊躇してしまいがちですが、プロジェクトを前に進めているという実感を得るためにも大事だと気づいたそうです。

伊藤さんは事業化に向けてさらにプロジェクトを前に進めるためMiTOHOKU Programへの応募を決意。仮説検証のためのプロトタイプ作成やニーズ調査などを行いながら、患者さん1人ひとりにに合ったアロマを開発することを目標にしています。

伊藤さんのチームメンバーは4人。看護師の経験を持つ大学院生や心理を専門に学ぶ大学院生からなり、全員がアロマテラピーについての資格を持ちます。メンバーそれぞれの強みや専門を生かしてワクワクする事業を生み出していければと語ります。

実現したい世界観、大切にしている価値観

伊藤さんの価値観を形成しているのは看護師時代に培ったマインドである、「患者さんのことを一番に考える」ということ。そのマインドを研究とプロジェクトに取り組む今も持ち続けています。緩和ケア病棟で働いていた時に気づいたのは、患者さんは必ず目標ややりたいことを持っていること。ある患者さんが「娘さんの成人式の晴れ姿を見たい」と話していたことが印象に残っているそうです。
患者さんのことを考えた時に、アロマは薬ではないものの、薬では対応できないような症状や辛さ、例えば夜に眠れないような問題を解決する手助けができると考えています、という伊藤さん。アロマテラピーと従来の医療を組み合わせて患者さんの「やりたいこと」や「目標」をかなえてあげられる世界を目指します。

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