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次へのステップ(39)

 家に帰るとお酒を飲んだ勢いで、秀にメールした。「今週末、土曜日の午後3時、たまプラーザに来られる?」すぐ返信が来て「連絡待ってた。土曜日OKです。お茶できるお店わかるから任せて、待ち合わせは駅の改札で、着いたら電話する」とあっという間に決まった。「じゃあ、また土曜日に!」ということで会うことが決まった。秀はどこまで思い出せたんだろう。きっとあの海での出来事を思い出してくれたのかなと期待が高まった。でも、カナコとはどうなったんだろう。土曜日とメールしたけど、土曜日までが長かった。ずっと、頭の中に去来するさまざまな出来事で、授業に集中できないし、奈津には会うことを報告したものの、そわそわしてその週を過ごした。
 土曜日はどんよりとした冬の曇り空で寒かった。たまプラーザの改札には5分前に着いた。きょうはセットアップの白のニットに赤いタータンチェックのスカートに膝までの黒のブーツ、紺のダッフルコートを着ていた。秀はあらかじめ来ていたようで、改札の外で時間通りに現れた。奇遇なことに、紺のダッフルコートを着て、中のセーターとシャツはブルー系だった。ベージュのチノパンをはいていた。まるで、きのう会ったかのように、現れて「久しぶり、元気だった?」と控えめな口調で尋ねてきた。マヤは「久しぶりだね」と言ったまま笑顔を作ったけど、内心ドキドキする気持ちが止まらなかった。お店は決まっているらしくエスコートしてくれた。路地を入ったところにある、小綺麗だけどあんまり混んでいない落ち着ける喫茶店を見つけてくれていた。白い壁、アンティーク風のカウンター、テーブル、椅子。マヤはどうしてこんなにわたしがほっとする場所をこの人は選べるんだろうと思った。

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