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いつもの場所へ(48)

秀は「へえ、双子だったのか。あまりにも似てたから、話しかけそうになったよ。危ないやつと思われるところだった。あっぶねー」と笑った。「大丈夫、双子だから、間違われるのはもう慣れてるから」とマヤも笑った。「でも、マヤのところお父さんとお母さん不仲じゃなかったっけ?」それはもう大丈夫なのとマヤは笑った。「親のこと真面目に悩んでも、心配する甲斐がないくらい、今は仲いいの」「良かったな」と秀も笑った。秀は2杯目でクリームソーダを頼んだ。
 楽しい時間は、あっという間に過ぎて、また、気づくと3時間ぐらいたっていた。秀からは核心にふれる話は出てこなかったが、今あるこの時間が楽しくて、大切で、話してくれるまで待とうと思った。どちらからともなく、また、来週もこの店で会いたいねという話になった。時々は、メールや電話もしたいなとマヤは思った。ほかに行きたい場所があるときは、事前連絡ってことになった。夕飯は家で食べることにして、マヤは秀の誘いを断った。別れがたかったが、次の約束はもうできたし。改札で秀がちょっとハグしてきて、そこで別々の家路に着いた。マヤはふたりだけのいつもの場所ができたことで、またまた舞い上がっていて、学校は真面目に行ったが、勉強にいまひとつ身が入らなかった。最終目標のために、語学を頑張るという目標は掲げていたが、やはり奈津のほうが、同じ授業を受けているはずなのに、進歩は早かった。

いつもの場所へ(48)

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