第10回 成功者の悩みとカウンセリング 成長の停滞から脱出するには。
仕事に就いて働く年齢は、一般的には20代から60代までの約40~50年です。その間に、多くのことを経験して、結果として成功する人もいるます。
成功した人を見ると、大きく二つのパターンに分けられます。若い頃に成功してそのあとに成長が停滞した人。または成功をしたけれども、そのあとも成長を続ける人。それは40代以降に差が生まれてきます。
この二つのパターンがあるのですが、その違いはどこにあるのでしょうか。成長を続ける人について、こころの側面から考えてみます。
一生かけて、こころは成長する
人間が年齢を重ねていくなかで、こころはどのように成長していくのか。それは発達心理学の領域で研究されてきたことです。
すでに半世紀以上前に出された理論ですが、今でも参考になる発達心理学にE.H.エリクソンの研究があります。彼はアメリカで活躍した心理学者ですが、こころの発達が生涯にわたって展開することを調査に基づいて明らかにしました。
彼は40代から仕事を引退するまでの年代を「壮年期」として説明しています。この時期にある人は「生殖性と停滞」この間で揺れ動きつつ、成長するとしました。
「生殖性」とは何でしょうか。それは「成果を生み出していく」ことと言えます。つまり成人期では家族を作り、子どもを育てるというだけでなく、会社に入ったり仕事をしたりして、社会と関わるなかで成果を上げていくという時期です。
仕事や家庭ということが、この時期には重要な生活上のテーマであることがわかります。しかし、この「生殖性」の裏には常に「停滞」する危機が控えているのです。
停滞とは。
停滞とは成長が止まっている状態ともいえます。先ほど壮年期は成長をする時期であり、家族や仕事などを通じて、社会と関わりながら成長していきます。そういった関わりを持てなかった人や、もしくは持っていたとしても「生産したり、社会に貢献していく活動ができない」と停滞するのです。
これは成功者にも当てはまります。一度、成功をした人が、そこで満足して成長が「停滞」することがあります。それは成功という目標を達成して「自分が満足の出来る結果を得た」ことによる停滞なのです。
本人しては満足をしているので、停滞とは気づいていないのですが、実際には成長が止まっているのです。いわゆる「生殖性が止まってしまう」ことによる停滞です。
このような停滞は、仕事に対する満足感が得られない、業績が伸び悩んでいる、家族と一緒にいてもつまらない、などいろいろな形で表れてきます。しかし、本人は停滞と気づいていないのです。
仕事としては大きな達成をしたことがあると、それ以上の成果は必要がないと思うかもしれません。しかし成長を続けるためには「自分の仕事が社会にどのように貢献できるのか」そして「次の世代へとどのように継承するのか」を考えなければならないのです。
自分の事業や仕事の成果だけを考えている人は、徐々に停滞していきます。一方で社会という大きな視野を持ちつつ、自分はどのような役割を果たさなければならないかと気づき始めた人は、停滞から離れます。
社会への貢献を考えていると次の課題が見えてきます。そして成功を収めた人ほど課題が出てくると、取り組まずにはいられない性格だからです。
生殖性が高まった人は、仕事にもやる気が出てきてたり、プライベートでも楽しみをもって過ごしたりできるようになります。
大きな成功を収めた人であっても、いつのまにか成長が停滞している人がいます。停滞を避けるためには「社会において自分は何ができるのか」という役割をもう一度、検討してみてはいかがでしょうか。